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植物生態学者の見た「自然と山の幸」

刻々と自然は移り変わり,人工の景観が,自然の植生を破壊する。さあ!大変。せめて食べられる野生植物のすべてを次世代へ残そう

ヤブレガサの不思議

2008-05-01 20:46:30 | ワイルド・フードなどの料理,その他利用法
ヤフレガサは,4-6月,傘をすぼめている若芽か,傘を開いた若葉を姿揚げにして味わう。塩ひとつまみ入れた熱湯でゆでると,毛がとれる。
冷水に放ち,辛子酢みそ,佃煮などで,初夏の香りを愉しむこともできる。

ヤブレガサは,双子葉植物なのに,子葉は合生して1個。くるくる内側に巻く。
芽生えてからの数年間は,根葉がただ1個の状態。そのような毎年を繰り返して,開花する頃の株になると,根茎を長くのばして,まわりに新しい株をつくり,群生し始める。

そのような特異な生態によって,ヤブレガサは,モミジガサ,ヤマタイミンガサ,
ヨブスマソウなどの「カカリアCacalia(ヨブスマソウ属)」とは,別のものとして,
Syneilesis属(ヤブレガサ属)に,分類されているが,子葉以外の他の形質は,
カカリア属(コウモリソウ属)と全く同じ。

また,カカリア属(コウモリソウ属)では,痩果の先が,「切形」になっているが,
オオモミジガサという種類では,痩果の先が,嘴(くちばし)状。この点で,別属に分類されているが,他の形質は,カカリア属と同じ。

分類上は,上記の3属に分けられているが,コウモリソウ属,オオモミジガサ属,ヤブレガサ属は,極めて近縁。
大ざつぱな外観では,よく似た種が多く,「種」の見分けが,やや難しいグループとなっている訳。

もう一つ,ヤブレガサモドキという稀少種と,その仲間の稀少種がある。
ヤブレガサでは,頭花が円錐状につくが,ヤブレガサモドキと,その一派の頭花は散房状につく。

分類と,検索は,ときとして,このように複雑になってくる。従って,植物の各種を深く知るためには,専門的な「植物学用語」の理解が欠かせないものとなる。
いくつかの自著に,植物学用語の解説も付記してあるので,ご興味があれば,それらの項をご参考に。

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