三菱東京UFJ、三井住友、みずほの3大銀行は、「通貨デリバティブ」と呼ばれる金融商品を買って、急速な円高で大きな損失を出した中小企業に対し、資金繰り支援の融資に応じる方針を固めた。金融庁が対応を要請した。
ただ、この商品で損失を被った企業だけを個別に救済する異例の対応となり、金融当局内部からも「モラルハザード(倫理の欠如)を招く」との声が出ている。
通貨デリバティブは、輸出入業者が為替リスクを避けるために利用している金融商品で、企業と銀行が事前に決めた交換レートでドルなどを取引する。円安が進むと市場よりも割安にドルなどを購入できる反面、想定以上の円高が進むと巨額の損失を受ける。
1か月の損失が数千万円にのぼった中小企業もあった。帝国データバンクによると、2010年中に通貨デリバティブで倒産した企業は25件あり、金融庁も、昨年12月から損失状況や販売方法などについて主要行の実態調査を始めていた。
しかし、販売した金融機関が損失を肩代わりすることは、取引の健全性を損ねるため金融商品取引法で禁止されている。今回の融資は、実質的な損失肩代わりと受け取られかねないため、3行は「本業が健全な企業に限って融資に応じる」(メガバンク幹部)方針だ。
中小企業が円高に伴う損失の可能性を十分に認識できていなかった事例もあるとみられ、金融庁は、銀行側に説明責任を徹底するよう求めていく方針だ。
(2011年1月20日
読売新聞)
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