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自分の自分による自分のためのブログ。
だったけど、もはや自分の備忘録としての映画やドラマの感想しかないです。

自分好みのAIの必要性について考えさせられる人間とアンドロイドのラブストーリー『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』

2022年01月23日 23時12分46秒 | 映画

【個人的な評価】
2022年日本公開映画で面白かった順位:7/12
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★☆☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【ジャンル】
ラブストーリー
AI

【原作・過去作、元になった出来事】
なし

【あらすじ】
ベルリンのペルガモン博物館で、
楔形文字の研究に没頭する学者アルマ(マレン・エッゲルト)。
研究資金を稼ぐため、
とある企業が極秘で行う特別な実験に参加することに。

そこに現れたのは、
紺碧の瞳でアルマを熱く見つめるハンサムなトム(ダン・スティーヴンス)。
初対面にも関わらず、
積極的に口説いてくる彼は、
全ドイツ人女性の恋愛データを学習し、
アルマの性格とニーズに
完璧に応えられるようプログラムされた
高性能AIアンドロイドだったのだ!

トムに課されたミッションは、
“アルマを幸せにすること”ただひとつ。
実験期間は3週間。
献身的でロマンチックなトムのアルゴリズムは、
過去の傷から恋愛を遠ざけてきた
アルマの心を変えることができるのか――?

【感想】
人間とアンドロイドのラブストーリーってことで、
内容としては過去にも同じ映画はたくさんあった。
けれど、これはラストの主人公の考え方に共感できるかどうかで、
だいぶ評価が分かれそう。

◆アンドロイド感ゼロのトムが新鮮

トムは全ドイツ人女性の
恋愛データを内包した高性能AIアンドロイド。
会話は自然だし、
詰まることもない。
まるで人間そのものだ。
逆に言えば、
アンドロイド感が一切ない(笑)
だから、普通に人間同士のラブストーリーに見えちゃう。
冒頭、フリーズしてしまうシーンはあるものの、
それ以外で彼がアンドロイドであると感じられる部分はほぼない。
「もはやアンドロイドの意味、、、」
って思う部分はあった
ある意味新鮮ではあるけど(笑)

こういう映画だと、
アンドロイドが人間の気持ちを汲み取れずにミスしたり、
超人的な身体能力を見せたりっていうのがオーソドックスだけど、
そういう要素はないんだよね。
個人的には、
もう少しコメディ要素があった方が好きなんだけど、
これはこれでよかった。

なぜなら、この映画はトムのキャラクター自体は二の次で、
自分好みの対応をしてくれる彼と関わることで、
人間は本当にそういうものが欲しいのだろうか
っていう問題提起に繋がっていくから。

◆自分好みの対応をしてくれるAIは必要か

アルマも最初はトムに対して、
ただのアンドロイドだと思って、
深く関わることはしていなかった。
でも、彼女の身に起きる仕事上のトラブルや、
元カレに対する"あること"への嫉妬などもあって、
側にいてくれる存在として、
トムを受け入れるようになる。

最終的に恋愛感情にまで発展したかどうかは明言されていない。
でも、この自分好みのAIの果たす枠割と、
その必要性について、
彼女なりの持論がラストで語られるので、
そこはとても興味深かった。

これはもういろんな意見があるだろうね。
こういう自分好みの対応をしてくれるAIって、
僕はあってもいいと思う。
とにかく持ち主を気持ちよくさせてくれるんだから。
無償の愛を与えてくれる親に近いのかもしれない。
感情のないものに対して
愛だのなんだのってのはおかしな話だとは思う。

でも、この先技術が発達して、
全人類のデータを取り込んだAIなんかが出てきて、
普通の人間と同じような対応ができたとしたら、
そこに感情がないと言えるのかな。
感情がある人間となんら変わらない対応をして、
もしかしたら人間以上に適切な対応をして、
それで「でも心はないよね」って言えるのかな。
受け取り方次第かなと僕は思う。
例え心があろうがなかろうが、
受け手がそこに愛を感じたのなら、
それはAIからの愛あっての行動ってことにしてもいいと思う。

ただ、アルマの言っていた
「自分好みの対応しかしないと、
 人はそれに依存し、
 他の人と話さなくなる」
ってのは、そうかもしれない。
だって、自分をすべて肯定してくれる気持ちよさって、
絶対中毒になるでしょ。
そうなったら、そこに対話は生まれず、
人間同士の関わりもなくなるから、
社会の在り方も変わっちゃうよね。
感情的には寂しいなとは思うけど、
悪いことばかりでもない気はする。
まあ、今以上に子供は生まれなくなって、
世界の人口は減りそうな気はするけど、、、
長くなるからやめよう(笑)

◆そんなわけで

こんな感じで、
いろいろ考えさせられる映画ではある。
映画として楽しむよりも、
議論のきっかけとなるっていう意味では有意義な作品。


インド社会の闇!女性をキッチンに縛りつける厳格な家父長制に胸糞悪くなる『グレート・インディアン・キッチン』

2022年01月23日 19時18分04秒 | 映画

【個人的な評価】
2022年日本公開映画で面白かった順位:4/11
   ストーリー:★★★★★
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★★★

【ジャンル】
ヒューマンドラマ
家父長制

【原作・過去作、元になった出来事】
なし

【あらすじ】
妻が家事から解放されるのは、 
自身が「穢れ」となる日だけだった。

インド南西部ケーララ州で、
高位カーストの男女がお見合いで結婚する。
中東育ちでモダンな生活様式に馴染んだ妻は、
夫の住む由緒ある邸宅に入り、
姑に導かれて家事のあれこれを学んでいくが、
ほどなく姑は嫁いだ娘の出産準備のため家を離れる。

彼女は一人で家事全般を受け持つことに。
さらに、早朝からの家事労働で消耗していても、
夜には夫の求める身勝手なセックスを拒むことができない。
そうした重荷から逃れられるのは、
皮肉にも生理の期間だけ。

しかしそれは、
彼女が穢れた存在と見なされる数日間でもあった。

【感想】
これは特に女性にとって、
かなり思うところがありそうな内容。
もはや妻ではなく、
奴隷なのだから。

◆圧倒的な男性優位

高位カーストの方が、
よりその傾向が強いのかわからないけど、
とにかく伝統や宗教を潔癖なまでに重んじる家庭、
それが妻が嫁いだ先だ。

家で男性はなんっにもしない。
夫も義父も、
スマホいじって、
食べるだけ。
朝、歯を磨くときは歯ブラシを女性に出させ、
外に出るときは「おい、靴!」と。

もちろん、掃除も料理も女性の仕事。
食べるときは男性が先で、
食べカスは全部テーブルに散らかしっぱなし。
それでいて、彼らの注文は多い。
米は炊飯器ではなく、釜で炊け。
チャパティはミキサーではなく、手でこねろ。
服は洗濯機で洗うと傷むから、手洗いしろ。
妻も義母もただただそれに従うしかない。

なので、彼女たちは基本的にキッチンから離れられず、
映画も8割キッチンが舞台だ。
妻も実家の母に相談するものの、
「郷に入りては郷に従え」
とまったく取り合ってくれない。

同じ男性の目線から見ても胸糞悪いし、
モラハラを通り越して、
人権侵害じゃないかとさえ思うほど。

◆指摘すると逆ギレする男性陣

テーブルマナーや夜の生活について
少しでも何か言おうものなら、
「お前何様だ」と怒られるか、
「神よ、許したまえ」と呆れられる始末。
さらに、女性の地位向上について述べた人の動画を
SNSでシェアしたら、
「削除しろ」と詰め寄られる。
もはや女性は人ではなく、
男性の所有物として見られているんじゃなかろうか。
日本だったら炎上しかしなそうだけども。

ただ、日本だって昭和までは
男性の方が圧倒的に強かった家が多いだろうし、
今でもそういう風潮は残っているところもある。
インドの方が伝統的かつ宗教的な側面で、
その傾向が色濃く残っている印象。

◆唯一キッチンから離れられるのは生理のときだけ

生理中の女性は穢れているとみなされ、
一歩も外に出られず、
人に会えず、
何かに触れることさえも許されない。
キッチンから離れられはするものの、
自分の部屋に閉じ込められ、
自由は一切ない。
そして、生理が終わったら、
またキッチンに立ち続ける。
こうやって一生が終わる人もいるんだろうと考えると、
とてもやるせない気持ちになる。

◆そんなわけで

本作を監督したのは女性かと思いきや、男性。
彼自身が結婚したとき、
家事を妻と平等に分担する取り決めを行ない、
彼女の妊娠中は彼が台所仕事をすべて引き受けた経験から
本作が生まれたそう。

特に女性の方が衝撃と共感を受けやすいかもしれないけど、
インド社会における家族の在り方はとても興味深いのでオススメ。