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だったけど、もはや自分の備忘録としての映画やドラマの感想しかないです。

主人公はベトナム生まれなのに、ベトナムに居場所がないというアイデンティティの揺らぎが物悲しい『MONSOON/モンスーン』

2022年01月20日 00時05分45秒 | 映画

【個人的な評価】
2022年日本公開映画で面白かった順位:8/8
   ストーリー:★★☆☆☆
  キャラクター:★★☆☆☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★☆☆☆
映画館で観るべき:★★☆☆☆

【ジャンル】
ロードムービー
ベトナム戦争
ボート難民

【原作・過去作、元になった出来事】
なし

【あらすじ】
舞台は現代のベトナム。
キット(ヘンリー・ゴールディング)は、
両親の遺灰を埋葬すべく、
30年ぶりに祖国であるサイゴン(現ホーチミン)に足を踏み入れる。

キットは6歳のとき、
家族と共にベトナム戦争後の混乱を逃れて
イギリスへ渡った“ボート難民”だ。
以来、これが初めての帰郷だった。

もはやベトナム語すらままならない彼は、
英語が話せる従兄弟のリー(デヴィッド・トラン)の助けを借りながら、
遺灰を埋葬するに適した場所を探すが、
思うようには進まない。
サイゴンは今やすっかり経済成長を遂げ、
かつての姿は見る影もなかったからだ。

そんな中、ネットで知り合った
アフリカ系アメリカ人のルイス(パーカー・ソーヤーズ)と
一夜を共にするキット。
ルイスの父親はベトナム戦争に従軍したという過去を持ち、
そのことを隠してこの国で暮らしていた。

その後、両親の故郷ハノイへ向かったキットは、
サイゴンで知り合ったアートツアーを主催する
学生リン(モリー・ハリス)を訪ね、
彼女の実家が営む伝統的な蓮茶の工房見学をする。
それは、キットの知る“古き良きベトナム”の姿に
ようやく触れられた時間でもあったが、
リンにとっては時代遅れなものらしい。

埋葬場所探しに関しては、
ハノイでも芳しい成果がなく、
サイゴンに戻ったキット。
そこで彼は、
リーから自分たちの家族の亡命にまつわる
“ある真実”を聞かされることになる——。

【感想】
セリフやBGMが最低限に抑えられた映画。
主人公の置かれた状況は、
日本人だとなかなか共感しづらいかも。

◆難民を余儀なくされたことでアイデンティティが揺らいでしまう物悲しさ

ベトナム戦争に起因するボート難民となった主人公。
ボート難民っていうのは、
紛争や圧政などがある地域から、
漁船やヨットなどの小船に乗り、
難民となって外国へ逃げ出す人のことを指す。
日本にずっと住んでいると体験しづらい状況なので、
正直感情移入はしづらい。

6歳までベトナムで生まれ育ち、
その後イギリスに渡ったキット。
30年ぶりに帰郷するも、
街並みは大きく変わり、
ここはどこ感。
愛する両親の遺灰を埋葬したいのに、
適切な場所さえ見つけられない。

話す言葉もイギリス英語に慣れてしまい、
母国語だったベトナム語はほとんどわからなくなっている。
イギリスでさえ、
異国の人という立ち位置なのに、
祖国でもまたよそ者感が出てしまう。
この"ホームなのにアウェー"っていうのは、
「自分は何者なんだろう」
っていうアイデンティティの揺らぎに直結すると思うんだよね。
それは想像もできない寂しさがあるんじゃなかろうか。

それでいて、彼は同性愛者。
行く先々で、
ネットで相手を見つけては
一夜限りの関係を結んでいる。
ここ、同性愛者である設定は必要なのかな?って思ったけど、、、
んー、主人公の孤独をより際立たせているんだろうか。。。
ここだけ腑に落ちなかった。

◆特殊な作りに好みは分かれそう

冒頭にも書いたけど、
この映画、セリフも少なければ、
BGMもほとんどない。
さらに、何か大きな障害や乗り越えるべき試練もなければ、
対立する人もいない。
主人公が両親の遺灰を埋葬する場所を探すために、
日々ぶらぶらしているのみ。
だから、映画として見ると、
個人的にはあまりハマらなかったかな。。。

◆作り手側の背景を知ると見方が変わるかも

監督のホン・カウは、
ベトナムからボート難民として渡英した経緯があるそうで。
主人公を演じたヘンリー・ゴールディングに関しては、
イギリス人の父親とマレーシア人の母親を持つから、
今回、複雑なアイデンティティを持ったキット役に、
何かしら思うところがあったかもしれない。

こういった事情を知ると、
この映画から受けるメッセージも説得力が増すと思う。
とはいえ、そんな事情はよほど映画好きで、
いちいち調べないとわからないことではあるけど(笑)

◆そんなわけで

歴史的背景を知っていたり、
自分あるいは身近な人に同じような境遇の人がいれば、
もう少し楽しめるかもしれないけど、
なかなか一般受けするのが難しそうな内容かなと思った。