4、資源
今回の円高による輸入価格の高騰を見るまでもなく、自国で産出出来ないものに頼る生活は、そもそも国家の存立基盤が不安定である。その生活の基本となる物が代替物がなくて輸入に頼らざるを得ない場合、国家は「どうしても侵略的」になるという歴史上の法則があるくらいだ。前回の戦争は日本が石油の輸入を止められたために已む無く開始した、と言われている。つまり、資源の問題は単に生活の便利さを維持するだけではなく、「国家の有り様」を規定する根本的な課題なのだ。
しかし今回は石油が取れないからと言って悲観するには及ばない。日本は案外と資源が豊富な国である。気候も温暖で古来水産資源に恵まれており、山に囲まれているので耕作地は少ないがその分森林が多く、数多くの種類の「植物多様性」を有している国である。その点、砂漠に覆われているサウジアラビアなどとは大違いなのだ(サウジは石油が出るから、どっちが良いかは一概には言えないけど)。弥生時代に稲作が入ってきて人口が爆発的に増えたようだが、それでも江戸時代までは何とか平衡を保っていた。しかし明治に西洋文化が入ってきて急に人口が増え、それが侵略へと国を駆り立てていったのはご存知のとおりである。
前回はエライ目にあって覇権国の米国の家来になったが、経済的には輸入が安定供給されて経済が大いに伸びた。今でも人口を7、8千万人程度に抑えれば、持ち前の勤勉さと民族の能力の高さで「充分に」幸せな生活を謳歌できる条件は揃っている筈なのだ。そして必要最低限の物資は、外交努力を駆使して安定供給を図る。要するになるべく輸入をせず、元々の自然環境に見合った生活様式を選んで身の丈に合わせていけば、何とか上手くやっていけるのである。
つまり、むやみと「西洋かぶれ」の尖った生活をするのではなく、日本には本来の自給自足的な「日本の生活スタイル」がある、と私は思う。ただ、それを国民が受け入れるかどうかなのだ。もし日本の環境に合った暮らしを受入れて、現在の資源を活用するだけなら充分余裕で暮らしていける筈、と思っている。何も、しゃかりきになって円高に苦しみながら、無理していろんな物を海外から輸入しなくても大丈夫なのだ。それを順次説明しよう。
① エネルギー
ここでニュースが入ってきた。ロシアが「サハリン2」から日本を締め出して、天然ガスをストップする期限が近づいているという。
もしサハリン2が止まれば、広島などいくつかの地域で「深刻なガス不足」に陥るらしい(田中宇先生のニュースから)。自民党はなんとも言ってないが、これって「参院選の最重要争点になる」ほどの大問題なのではないだろうか。こういう時にこそ野党はこれを取り上げるべきなのだが、全然何の気配も感じられないのは甚だ心もとない。この問題を選挙が終わった後から知って「自民党は何をやっていたんだ!」とカッコつけて文句を言っても、時既に遅しだと思うけどねぇ。そう言えば広島は「岸田首相のお膝元」のようだが、果たして自民党は「国民の暮らし」を守れるのだろうか?。まあ、ワイドショーも知らんぷりしてるようだから事の推移を見守るしか無いが、それにしても日本は「昔から外交に疎い国」である。
じゃあどうするのか。急激な円高で石油が高騰しガソリンも値上がりが止まらない。異常気象で電力需要がますます高まる中、日本は危険を承知の上で原発に頼らざるを得ないのか?
日本は活断層だらけの「世界一の地震大国」だ。温泉大国と言えば聞こえはいいが、要するに日本中「いつ地震や津波などの甚大災害が起きても不思議はない」危険極まりない土地の上に乗っかっている不安定な国なのだ。原発なんてとんでもなく危ないものは「作っちゃいけない国」なんである(福島事故の後は川内原発が再稼働に漕ぎつけたが、現在稼働している原発は「59基中、西日本の4基だけ」だそうだ)。
東日本大震災以来、津波による被害から徐々に復興が進み、人々の生活にも活気が戻ってきた。しかし福島の原発周辺地域は今でも人の住めない土地のままであり、処理水を海に放出するとか何とかの話を一つ取っても地元の漁業団体と紛争になっていて、対立したまま問題解決には向かっていない。そもそも福島は事故から10年も経っているのに、全然復興の目処が立っていないのである。全て「原発のせい」なのだ。こういう状況を見たら、原発を再稼働しようという考えは「出てこない」と誰しも思うのだが・・・。当然、自然エネルギーへの政策転換は、あの時以来「日本国の大前提」になった筈なのだ。
だが実は、今までにも相当時間があったにも関わらず、自然エネルギーを増やす取り組みは遅々として進んでいない。原因は、政府側に「やる気がないから」である。要するに、原子力は儲かるのだ。
原発は「独占事業」である。核物質の輸入・管理・発電技術の独占はもとより、廃棄物処理の方法さえも国や自治体が間に入らなければ何も出来ない仕組みになっている。つまり、究極の「許認可事業」であり、究極の「金のなる木」なのである(あーあ、いつもの政治家の大好きなヤツだ)。原発のような大規模独占事業であればあるほど、庶民の声は届かないで政治家と企業の癒着が蔓延する。自然エネルギーも、もし一箇所で大規模プラントを作って発電し、それを網の目のような送電網で各家庭に送るシステムを作ったら、結局「同じこと」が起きてしまう。ではどうするかというと、個人で「自家発電」するのである。
これなら原発なんてそんな危険なことをしなくても、太陽光発電パネルを個人宅に付けさえすれば、少なくとも電力逼迫の問題は解消するのである(取り付けた家だけ)。今はバッテリー技術も進化しており、昔ほど発電能力のバラツキに影響されなくなっていると聞いている。後は、貯めておいた電力が足りない時期に「少しだけ火力発電」を買えばいい(企業で使う産業用電力はまた別)。これがスマートな生活スタイルでは無いだろうか。大体、発電所から何十キロも送電線を使ってロスしながら送るなんて、無駄の極みである。大規模な集合住宅などでは既に自然エネルギーで大体の電力を賄っているところがあると聞く。これを政府が補助しながら推進してゆけば、程なくして全部の家庭に「災害時に影響が出ない」電力を確保できるシステムが備わってくると考えられる。要はやる気である。
東京都の小池都知事は何年か先だが、「新規住宅への太陽光パネル設置を義務づける法律」を検討していると聞いた。これなども、もっと前からやってしかるべきだと思う。まあ、やるだけでも岸田首相なんかより随分マシだと思うが、それにしても「困ってから初めてやる」というのは、政治家としてどうなんだろう。これも選挙対策なのかな?、お寒い話である。
結論:政府は即刻太陽光パネルの設置を全世帯に義務付けよ。なお、サハリン2の問題は日本としてどう対処するのか、早急に(参院選の前に)決めるべきである。岸田さん、G7なんか行ってる場合ではなかったんじゃない?
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ここまで書いて疲れたので、残りは次回とします。食品ロスと生産調整・観光と歴史を守る・基礎研究と人的資源を育てる、そしてデジタル革命など、盛りだくさんになる予定です。
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