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通し狂言 義経千本桜 Bプロ(椎の木・小金吾討死・鮓屋)国立劇場

2022-10-09 12:00:00 | かぶき讃(劇評)
同じ日に、Aプロに続いてBプロも観ました。簡単に感想。

「椎の木」から「小金吾討死」まででは、吉弥の権太女房小せんがよいですね。この役はちょっと年増の風情があった方が断然よくて、個人的には、團十郎の時の秀太郎の小せんが忘れられないです。

続いて、鮓屋。

菊之助のいがみの権太は悪くないんだけど、菊五郎ならやんちゃ坊主的だし、仁左衛門なら関西のぼんみたいな感じだし、團十郎なら馬鹿だけどかわいい息子という感じで、みな愛嬌があるんですよ。その点、真面目でちょっとクールな分だけ、愛嬌がもうひとつか。愛嬌の部分と悪人の部分の矛盾が、いがみの権太というキャラの複雑性を担保しているところがあって、だから、「いつ心変わりしたのか」という謎を生むんですよね。

でも、刺されてからの述懐のくだりは、グッとエモーショナルでよかったです。死にそうな場面で目が覚めるような名演っていう矛盾が、歌舞伎ならではかな?

この場の出色は、弥助(実は平維盛)の梅枝とお里の米吉。梅枝はAプロに続いてBプロも品があって、若いのに素晴らしい。むかし観た秀太郎の小せんと弥助の一人二役も面白かったけど、梅枝の立ち役も雰囲気があって、面長な顔立ちも歌舞伎の立ち役らしく良いですね。

米吉のお里は、結婚に恋する乙女の色気があって、Aプロの少女っぽさとは違ういい面が出てました。「兄さん、ビビビビ~」がよかったと思えたのは、芝雀時代の今の雀右衛門のお里以来です。結婚願望からくる色気があるものだから、弥助の「実は・・・」という言い訳を聞いてしまうところの悲劇性が深くなるんですよね。

脇だと、パンフを観てなかったら気づかなかったかもしれない権十郎の弥左衛門、珍しい女形の橘太郎が、意外と渋くて情があり、権十郎なんかは今後はこういう老け役もやるのかなあ~と思いました。(口跡がよくて、いつまでも若々しい印象だったけに、ほんと意外性ありましたね。)また、又五郎の梶原景時が手堅くてよいですね。菊之助の代になって、菊五郎劇団、吉右衛門劇団の両系統の相互交流がうまくいっている気がします。

というようなわけで、小金吾の萬太郎、吉太朗の若葉の内侍含め、この芝居の手慣れた配役陣ではなかったですが、まずまず充実したみずみずしい鮓屋だった気がします。

以上、簡単ですが。

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