切られお富!

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文藝別冊 『古今亭志ん生』と初代中村吉右衛門

2006-03-28 02:06:21 | 新釈落語噺
最近ちょっと落語が人気らしいんだけど、そんな余勢を駆ってか、文藝別冊シリーズで『古今亭志ん生』が発売された。この本、まだ全部は読んでないんだけど、気になる情報がいろいろ出てきてなかなか楽しめる。なかでもわたしの興味を引いたのは、志ん生が歌舞伎の初代中村吉右衛門とウマが合っていたという話。ある人によると、資質的には桂文楽は六代目菊五郎、志ん生は吉右衛門なんだそうだけど、これはなかなか興味深い指摘ですよね。

天衣無縫な六代目菊五郎ときっちりした芸の初代吉右衛門、数少ない演目を磨きぬいた文楽と自由奔放な志ん生。普通なら「文楽=菊五郎」、「志ん生=吉右衛門」という組み合わせは逆に思えるんだけど、わたしは案外この組み合わせに納得してしまった。

それは、この本で矢野誠一が「志ん生の芝居噺は科白が正確」といっているように、志ん生はじつは大変勉強熱心なタイプなんじゃあないかと、わたしは思っているからなんだけど、従来遊んでばかりだった落語家と思われていた志ん生がじつは大変稽古熱心で勉強家だったということを知ったのは美濃部美津子さんの著書『三人噺』と『おしまいの噺』だった。吉右衛門も高浜虚子門下で俳句をやっていたのは有名だし、考証趣味みたいなところで案外繋がっていたのではないだろうか?

また、菊五郎と文楽を結び付けているものは、一種のミニリズムなんじゃないかとわたしは睨んでいて、お猪口に徳利から酒を注ぐ芝居で、徳利がだんだん軽くなってくるところを芝居で表現してみせる菊五郎のセンスは、噺のディテールを磨き上げる文楽のスタイルに近いものを感じる。

ところで、播磨屋一門の前で志ん生が落語をやった際、吉右衛門が弟の十七代目勘三郎(当時もしほ)に「お前たちがやる魚屋なんかよりも志ん生の魚屋の方がずっと魚屋らしいんだぞ」なんていったという話もよかったなあ~。

因みに、わたしは落語の芝居噺から歌舞伎にいったクチなので、落語ファンから歌舞伎に行く人が増えたらいいなあってこともよく思う。

志ん生なら「淀五郎」が好きだったし、彦六の正蔵の「中村仲蔵」とかね~。

そんなわけで、なかなか楽しめますよ、この本!

古今亭志ん生

河出書房新社

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三人噺 志ん生・馬生・志ん朝

文藝春秋

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3 コメント

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馬生師匠 (brusque)
2006-03-28 18:15:45
(コメントするとはおこがましい、私、寄席に行ったこともないど素人なのですが…)馬生師匠、父や弟の天賦の才に対する努力の人としての悲哀を感じるなどと勝手に思い入れしておりました。実は三人三様、芸熱心だったんですね。



馬生、志ん朝さんとも早逝が惜しまれます。



初代吉衛門丈の話、へぇ~です。



話は違いますが、先代勘三郎のあのえもいわれぬ古風な愛嬌…。確かに近代的な写実ではないような…。でもいいなァと思っておりました。当代中村屋にあの味が無いのは…無いものねだりですね、きっと。余計なことを言ってすみませんでした。

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初代吉右衛門 (パパゲーノ)
2006-03-29 21:26:46
こんばんは、パパゲーノです。

古い本ですが小島政二郎著「食いしん坊」1巻の

33章「小満津の鰻」の章の初代吉右衛門の思い出話は

良い話です。機会があつたら読んで見てください。

吉右衛門と小島政二郎と小島氏の母親が落語研究会で

たまたま同席した話で、名随筆だと思います。
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コメントありがとうございます。 (切られお富 )
2006-04-03 00:39:50
ここのところ、バタバタしているので、頂いたコメントには不義理のしっぱなしですが…。



brusqueさん



わたしも三人とも大好きなんですが、偏愛という意味では馬生師が好きです。「王子の狐」なんて、底なしのおっかなさがあって、志ん生、志ん朝にはないものですよね。



パパゲーノさん



いつもいろいろ教えて頂いてありがとうございます。



教えていただいた本のくだり、図書館で借りて読んでみたんですが、いい話ですね!初代吉右衛門の人となりをを知るという意味でも、さりげない話ながらとっても面白かった。



それと、読んでたら鰻が食べたくなりましたね。

貴重なご情報ありがとうございました。
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