将来構想をめぐって ふたつのシンポジウム(奄美和光園、東京)の新聞報道から

10月28日に奄美和光園で「らい予防法廃止10年、熊本判決5年記念シンポジウム」、11月11日は東京・千代田区の星陵会館で「ハンセン病療養所の未来をつくるー社会とのきずなをもとめて」。ハンセン病療養所の「将来構想」が大きなテーマとなった。

いずれのシンポジウムにおいても療養所入所者の参加はごく少数であり、その生の声はほとんど聞くことはできない。

発言者の中では唯一、「従来の療養環境が崩されないかと不安を抱く入所者もいる」ことに言及した宮里全療協会長が入所者の意識を代弁しているように感じられた。

こうしたシンポジウムは、それ自体が差別解消や啓発という意味をもつものかもしれないし、療養所内の「消極的な」入所者への逆「啓蒙」をはかろうとするものかもしれない。しかし気になるのは、現状や今後考えられる問題点を洗い出す、入所者の意向をすくい上げるなどの基本的な作業から始めて議論し尽くすことより、「最後のひとりになる」ことへの不安や危機感を煽るような形で展開されていることだ。
市民が「隔離」に加担してきた時と同じ原理で、おためごかし的に「解放」を求めてはいまいか。

「摩擦を起こさずに双方が喩合ができる形」の結果として、ひとつの療養所の同じ敷地内、あるいは建物内で事実上の線引き・棲み分けが行われるのならば、医療や介護の水準を維持するためということ以上の意味は本当にあるのだろうか。(vino)

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10月28日奄美和光園での「らい予防法廃止10年、熊本判決5年記念シンポジウム」:

・「現在の高水準な介護を活用し、地域に開かれた介護福祉施設としての存続を目指すべき」との提案があり、実現に官民一体となった要望が不可欠」

・徳田弁護士は「職員確保や施設維持、地域住民との共存などの観点から、介護福祉施設の併設を提案」。奄美市が要望している国立長寿検証センター(仮称)の誘致は「難しい」、「要望する期間を切って、実現性を見極めるべき」

・全国ハンセン病療養所入所者協議会(全療協)の宮里光雄会長は「従来の療養環境が崩されないかと不安を抱く入所者もいる。摩擦を起こさずに双方が喩合ができる形」と要望。「入所者の意思が将来構想の要」と、休会中の和光園自治会の再建を嘆願した。

・前川嘉洋園長は「現在の外来診療を含め、一般市民との共存はハンセン病の大きな啓もうになる。入所者と話し合いをしていきたい」

(2006年10月29日 大島新聞*)

*【internet source】
http://takaamami.fc2web.com/index.html

 


11月11日「ハンセン病療養所の未来をつくるー社会とのきずなをもとめて」東京・千代田区の星陵会館

・「施設の開放や偏見解消の総合施策を国に義務付ける「ハンセン病問題対策基本法」(仮称)の制定に市民運動の形で取り組むことを決めた」

・全療協の神美知宏事務局長は、「療養所を地域と共存する国立医療機関として存続させるために、入所者の意見をまとめ、ここ二年のうちに将来構想をまとめていきたい」。
将来構想を実現するうえで、
(1)「らい予防法の廃止に関する法律」によって、療養所では入所者以外の医療を扱えないこと
(2)市民の中に残る差別意識
(3)国立医療機関を独立行政法人化して国民の医療には責任を持たないという国の政策―という三つの壁

・徳田靖之弁護士が、「三つの壁を打ち破る壮大な国民運動を展開しよう」。

など
(2006年11月12日 毎日新聞)

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