ハンセン病問題に関する情報、思ったことなど
ハンセン病問題ノート
大阪市の真相究明報告―ハンセン病問題研究会が意見書を提出
大阪市と大阪市ハンセン病問題検討委員会による「ハンセン病問題に関する真相究明報告書」について、ハンセン病問題研究会が意見書を提出。大阪市ホームページに対する改善要望も。
ハンセン病問題研究会ホームページ:
http://momo-hanseni.org/index.html
(以下、転載)
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「ハンセン病問題に関する真相究明報告書」(大阪市&大阪市ハンセン病問題検討委員会による)について及び大阪市ホームページに対する意見書
2008年2月20日
大阪市 市長 平松邦夫殿
大阪市ハンセン病問題検討委員会委員長 永岡正巳殿
大阪市保健所感染症対策課 殿
大阪市健康福祉局総務部総務課 殿
ハンセン病問題研究会
世話人代表 村岡 潔
連絡先 ********
私たちは、ハンセン病問題について国や地方自治体による啓発、歴史検証のあり方などに関心を持ち検討をしているグループです。
一昨年(2006年)2月、関淳一前市長時代に大阪市が発行した「ハンセン病問題に関する真相究明報告書」(事務局・大阪市保健所感染症対策課)について「検証・認識」などに問題があると考えてきましたが、下記のように問題点を述べ、意見書として送付します。また、大阪市のホームページにおいて「ハンセン病」について掲載されていますが、これについても意見を提出し、改善を要望いたします。(つきましては、当意見書への見解を頂きたく、3月28日までにご返答下さいますよう要請します。)
(Ⅰ)『ハンセン病問題に関する真相究明報告書』について
(1)「真相究明報告」というのであれば、何の「真相」を、どこまで、どのように究明されたのか
報告書の主目的は、大阪市がどのようにハンセン病患者の強制隔離政策の一端を担ったかについての「真相を究明する」ことであるはずである。
そうである以上、報告書の主軸をなすべきは「六 課題と今後の取り組み」の「(3) 大阪市としての検証・認識・課題整理・今後の取り組み」でなければならない。
しかし、報告書の大部分は、元患者への聞き取り内容の羅列に費やし、肝心の上述章はわずか2頁しかない。しかも、その中で、大阪市の強制隔離政策への関与については、143頁第5段落で「大阪市は直接強制収容等には関わっていなかったものの、地域からの患者発見の一端を担っていたことを示すもので、全国的に展開された『無らい県運動』への関わりがあったことを示すものです」と記述しているだけである。これでは「真相究明報告」としては著しく不十分であるといわざるを得ない。
また、その記述に関してすら、証拠として挙げている「大阪府所蔵の資料」について、報告書には「大阪府所蔵の資料の中にも、保健所が区民からの投書に対する調査を大阪府に依頼している依頼文もあります」と記述されているだけで、報告書の中には引用も写真提示もなされておらず、内容が不明である。報告書には他の新聞記事などの資料がコピーして掲載されているのに、この肝心の資料については内容が示されていない。なぜなのか、理解に苦しむ。
大阪市が「直接強制収容等には関わっていなかった」と言い切るためには、全面的な史料の精査を終えていなければならないはずである。しかしながら、報告書には、どんな資料を、どこまで調べたのか記述がなく、「関わっていなかった」と述べる根拠が不明である。ここで証拠として示されているのは、元患者の証言と報告書には示されていない大阪府所蔵資料だけである。
これでは「直接強制収容等に関わっていなかった」との主張自体、検証されているとはいいがたい。
(2) 検討委員会の人選および活動内容の問題について
報告書の冒頭「発刊にあたって」では、次のように記述されている。
磯村市長(当時)は、2003(平成15)年9月 26日、「本市が強制隔離政策の一端を担ったことの反省と謝罪を行いました。そして、こうした過ちを二度と繰り返さないために、真相究明のための委員会を設置し、普及・啓発に努めるとともに、今なお入所を余儀なくされている在園者の方々が社会復帰していただける環境作りを行うと表明いたしました」、「この市長の表明を受けて、『大阪市ハンセン病問題検討委員会』を設置し、委員には、学識経験者・弁護士・社会復帰者・療養所入所者・支援者・大阪府・市関係各課などにお願いして、さまざまな観点からのご意見をいただきながら進めてまいりました。」とあるが、そもそも、大阪市が行ったことを検証する検討委員会委員18名のうち、7名が大阪市の職員、1名は大阪市の外郭団体(社会福祉協議会)の職員である。
すなわち、真相を究明する委員会委員の約半数が、究明される当の対象である大阪市の職員である。このような委員構成では、公正な「真相究明」はとても期待できないし、検証の質に大きな疑問を抱かざるを得ない。
検討委員会の真相究明を受けて行政の対策を調整するための委員会であるならわかるが、検討委員会そのものの委員に大阪市の職員をかくも多数含めてよしとする感覚そのものが著しく常識を欠いているし、これでは真剣な究明がなされうるとは到底考えがたい。
また、167頁の「検討委員会開催状況」には、真相究明部会と社会復帰部会の二つの部会が設置されていたことが記されているが、どの委員がどの部会に所属していたのか記載がなく不明である。また、それぞれの部会の活動内容も、検討委員会本体のそれぞれの回における議題についても、一切書かれておらず、何をどのように検討したのか全くわからない。これでは、検討委員会できちんとした「真相究明」の議論がなされたのか、疑われてもしかたがないであろう。
(Ⅱ) 大阪市ホームページに対する改善要望
ハンセン病に関する文書のウェブ上の設置場所を変更すべきである。
現在、「ハンセン病について」という文書は、大阪市のウェブでは「健康・医療」項目中の「関連情報」の欄の「大阪市感染症情報」のページにある感染症対策課からのお知らせのところに置かれている。
http://www.city.osaka.jp/kenkoufukushi/kansensyou/osirase/taisaku_4.html
大阪市感染症情報:感染症対策課のお知らせのページにおくことにより、ハンセン病は日本において今なお感染症としての対策を要する怖い病気であるとのまちがった印象をあたえ、偏見をかえって助長させることになる。「健康・医療」の項目におくというのであれば、「医療」欄に新規に「人権」に関するページをつくり、その中に置くことを要望する。さらに、そのタイトルを「感染症予防の名の下に人権侵害をおこさないために」「ハンセン病療養所入所者・元患者の方々の尊厳回復のために‐行政(大阪市)の責任について」等、過去の反省と人権擁護の姿勢が明確に表現されたものとすることを要望する。
以上
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