八島ビジターセンター

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大きな獲物

2010年08月04日 | Weblog
   
午後5時すぎの八島には涼しい風が吹きます。昼間の喧騒がうそのように、静かな空気があたりを包みます。上空には流れの速い雲。湿原に影を描きながら動いていきます。まだ8月の第1週ですが、なんとなく秋の気配がします。ススキの穂が出始めました。


ノアザミという花が咲いています。紫色のきれいな花。ブラシのような花をひとつつけているように見えますが、これはひとつの花ではなく小さな花の集合体です。その小さな花の集まる根元・・・濃い紫色の丸い部分(総包)が、ノアザミはすこし特徴的なのです。

・・・触ってみてください・・・べたべたします。

このべたべたは「アリよけ」だといわれています。ハチなどはノアザミの花粉を運んでくれますが、アリはあまり花粉を運んでくれないようなのです。蜜を取るだけ。だからノアザミはアリにあまり来てほしくないので、総包をべたつかせてアリを花に到達させないようにしているのです。(ハチは飛んできますが、アリは下から登ってきますからね)


以上の理由から、ノアザミの総包にくっついたまま死んでいるアリをよく見かけます。
今日も見かけました。
しかし、くっついているのはアリではありませんでした。
     
フタスジハナカミキリ(たぶん)です。生きていました。小さい虫がくっついて死んでいるのはよく見かけましたが、こんなに大きい虫がくっついているのを見たのは初めてです。しかも生きている。
助けることにしました。カミキリをはがします。
総包からはがされ、安全なところに置かれたカミキリ・・・。このまま普通に歩いていくかと思いましたが、ノアザミの粘着力は相当つよいものだったようです。脚がいろんなところに貼りついて身動きがとれなくなってしまっていました。自分の脚と脚がくっついたりして・・・。
     
そのうちに自分の脚をなめて手入れするようになりました。こうやってすこしずつべたべたから復活していってくれたらいいなぁ・・・と思いながらその場を離れました。その後は知らない。彼はまたハナカミキリとして生きていけるようになったのしょうか。



ハナカミキリをノアザミからはがすとき、ためらいました。自然の中ではこんなこと当たり前かもしれないのに、なんで私は助けようとするんだろう・・・?



身動きがとれないままゆっくり死んでいくことを想像したら、助けないわけにはいかないのです。


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