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クルシャの天地

ウルタ君が帰ってくる



昨年の11月21日、部屋で突然死していたウルタ君を送ってから、翌日には
飼主は必ずまた彼が戻ってくる事を信じて、ウルタ君の帰還を迎える準備に
とりかかりました。


ウルタ君が横になっている様子は、何かほんのちょっと飼主の下を留守にして
忘れ物でも取りに行くような感じだったので、ウルタ君ほどの猫があっさり
帰り道も忘れて行ったっきり、なんてこともあるまいと飼主は決め込んだのです。


ウルタ君は帰ってくる。



逝き様が奇麗だったウルタ君は、突然全てを暴力的に奪われたような絶望を飼主に
残しましたが、その衝撃によって飼主は生き物として命を潰す寸前で生き残りました。
そうなると、あの王様には彼の意志次第で戻る場所がまだこの世に残っているという
ことになります。可能的に考えても、やっぱりウルタ君は帰ってくる。





居間に彼の祭壇を作りました。
香炉と写真と花と鈴です。

ウルタ君を思い出す度に香を供えます。
彼が居なくなってから2ヶ月間は毎日、真言も唱えます。


写真の入っているケースには、ウルタ君が死後に見せてくれた、と飼主が信じている
物品も入れて行きます。


ウルタ君には、自分の毛を毟ってまき散らすという、たいへん迷惑な癖がありました。
その悩みをいつもブログに書いていました。対処法はほとんどありませんでした。
そのウルタ君の困った癖が、彼の死後に彼自身の気配として飼主を慰めてくれたのです。

ウルタ君が毛をまき散らすので、ほぼ毎日部屋中に掃除機をかけていました。もちろん、
ウルタ君がいなくなってしまうと、毛も出ません。三日もすると、ウルタ君の毛を掃除機
で吸い取ることもなくなってしまいます。家具の隙間を探しても、猫の毛は出てこない。


でもやはり、どこかにウルタ君の毛は隠れていて、節目の日になってウルタ君に祭壇で
話しかけていたりすると、部屋の真ん中にウルタ君が自分で抜き散らした跡のある毛の
一房が部屋の空気の流れに押されて出てきたりします。

そんな毛をウルタ君の死後の気配として写真の入ったケースに入れて供養し続けていました。





その間もウルタ君の帰還を信じて、どこかに猫との縁がないものかとあちこち打診し、
飼主の持っているあらゆる技術を駆使して居所らしきもの、飼主と新しいウルタ君の接点
となるべき時間や場所を探したりします。

そのたびに、またあちこちからふわり、風が無くても机の上にふわり、いつもウルタ君が
横になっていた床にふわり、祭壇の上にふわり、ウルタ君の生前抜いた毛の房が出てきます。

こうして、だんだんとケースの中にウルタ君の毛が溜まっていき、ついにある日ウルタ君の顏
がわからなくなるほど、ケースの中をウルタ君の毛が埋める日がやってきました。
ウルタ君の毛を見つけるのは彼からのサインを貰っているようで、辛さが癒されました。


死期を悟った少女が両親を慰めるために拙い手紙を生きている間に家中に隠して、死後に
悲しむ親たちを思いやったとか言う話があるのですが、ウルタ君の場合、彼の迷惑な癖が結果的
に飼主に子を亡くした親の慰みと同じ効果を飼主に与えてくれていたのです。


ウルタ君は帰ってくる。

彼の毛が遺影のケースにいっぱいになった頃に。


しばらくウルタ君の毛が出てこない日々が続いて、風が強かった日、飼主は窓を開けて外出して
戻ったところ、飼主の服の上にウルタ君の抜きたてのような毛が一房ふわりと乗っていました。


そうしてついにウルタ君の遺影ケースはウルタ君の毛でいっぱいになり、その日から僅か二日後に
飼主は別のウルタ君を自分で見つける事になったのです。

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コメント一覧

飼主
ウルタ君とずっといっしょ
http://blog.goo.ne.jp/uxuyat-ulta/
飼主が血を吐いて死にかけた時に、先々代の猫のサオシュが
三途の川らしきところまで飼主を先導していったところを、
ウルタ君に止められ、「まだ生きて」と強く言われて目覚めると
リアルなウルタ君が倒れた飼主を見下ろしているところでした。

ある意味、飼主の命の恩があるウルタ君ですからきっと縁も深い
に違いないと思うのです。
阿礼
こんばんわ
ご近所の日帰り温泉に入りに来てるので,泣くわけにも行かないんですが。泣けますね。。
まりま~
お久しぶりです。
あれから・・ウルタ君の事を忘れた日はありませんでした。

ウルタ君・・・帰って来たんだな・・・って思っていました。
小さな子猫になって・・。
やっぱりウルタ君はずっとずっと一緒ですね・・・。
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