goo

映画「レオニー」

2010 日米 132分 @島根県民会館 製作&脚本&監督 松井久子 
出演 エミリー・モーティマー 中村獅堂 
 
芸術家イサム・ノグチ(1904-1988)の母レオニー・ギルモア(1873-1933)の生涯を歴史の闇から発掘したドウス昌代著「イサム・ノグチ」に触発されて作られた映画。主演は「マッチポイント」で社交界の令嬢を演じたエミリー・モーティマー。

レオニーは19世紀末の米国名門女子大に進学、奨学金で仏に留学する優秀な頭脳を持っていたが、仕事で知り合った異邦の詩人ヨネ・ノグチとの間に婚外子を作り、国境を越えて言葉も通じぬ日本に渡り、2人の子を抱えて独力で生活を立てるという波乱万丈の果に、イサムという芸術家を世に送り出した。そのエピソードは一々、あまりにも特異に見えるが、彼女の、大胆率直な行動、美と浪漫への憧憬は、アメリカ先住民とアイリッシュの先祖から受継いだのだろう。

2人の出会いは、彼女が新聞広告に応募し、編集者として、ヨネ・ノグチ(野口米次郎1875-1947)の詩を手直しした所から始まる。彼が米国で詩人として売り出せたのは、そういう援助者がいたからだ。かれが帰国したあとも、手紙で添削し、創作のアイディアもしばしば彼女から出ていたらしい。だからこそ、米次郎は一方では日本人妻と家庭を築き9人の子をもうけ、一方では彼女を仕事上の協力者としてあてにし続けながらも、イサムを自分の子として認めなかったわけ。この行動は、明治の日本男性には珍しくないかもしれない(森鴎外を見よ)が、現代から見るとあまりにも身勝手で、人間としての品格が疑われるものだ。

息子、イサムは複雑な陰のある男性だが、なかなか魅力的。
エミリー・モーティマーは勇敢で才気煥発な女子大生が恋をして弱くなる様子、子供を得て強くなる様子などを好演。中村獅堂の顔は詩人には見えないし、身長160cmそこそこのヨネ・ノグチを演じるには逞しすぎるかと思うが、「日本男性の魅力」の一つの解釈かと思う。そして松井久子監督(1946~)、14回もの脚本書き直しとか、国境を越えた資金集めとか、その意志と行動力に感嘆する。彼女の講演は表現力が豊かだと思った。

そのほかの共演者
原田美枝子 竹下景子 中村正俊 大地康雄 吉行和子

「イサム・ノグチ 宿命の越境者」上下二巻 2000年 講談社
ドウス昌代(1938~)  
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
« 映画「ライム... 映画「酔いが... »
 
コメント
 
 
 
Unknown (桃すけ)
2011-05-12 16:21:56
イサム・ノグチにそのような背景があることを、まったく知りませんでした。和の照明器具は有名ですが、私はあまり好きではありません。でも、イサム・ノグチの複雑な影のある魅力、というのは同感です。中村中村獅堂が父親の詩人役だったんですね。ちょっとピンときません。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2011-05-12 20:02:11
桃すけ様、
そうですよね、私も、彼の作品よりも人間に惹かれます。ただし、北海道のモエレ沼公園は一度行って見たいです。獅堂は、松井監督が好みで選んだようですが、全然イメージに合いませんよね。
 
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。