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〔映画〕真昼の暗黒

1956年 日本・現代ぷろだくしょん 122分(高槻松竹セントラルにて)
今井正監督 橋本忍脚本 正木ひろし原作
出演 草薙幸二郎 松山照夫 左幸子 内藤武敏 飯田蝶子


「それでもボクはやってない」が評判を呼んでいる。私も見て、いい映画だと思ったが、
冤罪事件は今に始まったことではないのが、この映画を見てもわかる。

八海(やかい)事件、それは1951年1月私が小学に入る直前に起きた強盗殺人事件で、
6年生の時に映画化された。夫は、中国地方のある街で、両親と並んで見たそうだ。

 参照 正木ひろし著「八海裁判」(中公新書)&
     「裁判官」ー人の命は権力で奪えるものか     

監督今井正(1912~1992)は「青い山脈」「また逢う日まで」「米」「キクとイサム」
などの優れた作品を撮っているが、これは44歳、脂の乗り切った時期の映画である。

この映画は「リアリズム」の手法で、人物と生活環境を、細かい所まで
丁寧に描いている。橋本忍の脚本のうまさで、まさにあの時代、あの地方の
生活がタイムカプセルから出てきたような感動を覚える。

戦後間もない1951年、犯人はなじみの娼家に流連(いつづけ)中に
逮捕される。手の爪や上着の袖に残った血痕が決め手となる。
(このへんは何となく「カラマーゾフの兄弟」を思い出す)後日、巻き添えで
被疑者となる日雇い土工たちが、通行中の少女たちに浴びせ掛ける
野卑な言葉も、当時のまま再現される、私は思い出したくもないが。

舗装されてない、石ころのだらけのぬかるみ道を移動する人々。
抱えるのは革のバッグ、紙バッグ、ビニール袋ではなく風呂敷(ふろしき)
包み。コンビニはもちろんスーパーも、まだ存在しない昭和26年だ。

しかし、一方では司法に立ち向かう硬骨漢もちゃんと存在する。
「首」(森谷司郎監督)にも登場する弁護士・正木ひろし(内藤武敏)だ。
勝利を信じて、励ましあって戦いを続ける老母(飯田蝶子)や妹や
妻(左幸子)等の女性たちは、無教育ながら芯が強く好印象を残す。

演じるのは新劇の俳優で、今から見ればやや演技過剰だが、
当時の観客にはちょうど良かったのではないか。
「まだ、最高裁がある!」という主人公の叫びは、50年の歳月を経て
「それでもボクはやってない」のラストにも通じるものがある。

→「今井正 四作」16-10-24

→「裁判」22-2-23

コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (margot2005)
2007-02-14 00:58:44
こんばんは!
下...京マチ子さん、しかと確認いたしましたわ。ありがとう!
さて左幸子といえば...まずコレが思い浮かびます「飢餓海峡」...
犬飼さん(なまりながら...)と呼ぶ左幸子は素晴らしいかったです。水上勉の原作もハマってしまって...
ちょっと話それましたが...
 
 
 
青函連絡船&左幸子 (Bianca)
2007-02-14 16:14:58
Margotさん、
左幸子、いい女優ですよね。私の思い出にあるのは「女中ッ子」「暖流」「ニッポン昆虫記」などです。
ところで、青函連絡船が廃止される6年前の1982年、私は乗ったことがあるんですよ。北海道に一人旅した帰りです。洞爺丸事件が頭にありましたので、少し心配でしたが、想像よりユッタリして乗り心地の良い船でした。
 
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