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「女ひとり漂泊のインド」

1999 彩流社
著者 渡辺みえこ
Sビル図書室で

大事な人を亡くし傷心を抱いて40代の女性がひとりインドをさまよう。
詩のようでもあり小説のようでもある一味違う旅行記。

最近では評論家として活躍する(↓)彼女、偶然見つけたこの本は毛色が違って読みやすそうだ。フランスの地方都市に何年も住み、フランス人の女友達とモロッコを旅し、巴里のサロンに絵画が入選しと、軽々と国境を越えて生きて来た彼女。この本の場合もバンコクでの会議の後にインドに行ったとある。40代とあるので、かなり前の経験ではないか。

もともと著者は詩人であり芸術家なので、これは実用的なインド旅行案内と言うより、心象世界の案内書であると思ったほうが良い。もっとも、ちゃんとマザー・テレサにも会って、そのもとで数日間、働いてもいる。一見過酷な経験のように見えるが、多分、混沌のカルカッタでは、むしろそこは一番安らげる場所だったのではないか。

その安らぎにいたるまでに主人公は何度も妖しげな誘惑に出会い、結局はするりと切抜けるのだが、このあたりがミステリー・サスペンスのような上手な運びである。ここで誘惑されているのは主人公である以上に読者自身ではないだろうか。


↑「女のいない死の楽園 供儀の身体・三島由紀夫」1997 現代書館
 「語り得ぬもの:村上春樹の女性(レズビアン)表象」2009 お茶の水書房

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