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【映画】エリザベス:ゴールデン・エイジ

2007年 英国 114分 監督 シェカール・カプール 出演 ケイト・ブランシェット ジェフリー・ラッシュ クライヴ・オーエン サマンサ・モートン 鑑賞@松江SATY東宝

弱小国イギリスを自立させ、空前の繁栄・・・「黄金時代」をもたらした女王エリザベスⅠ世(1558~1603)を「エリザベス」1998と同じ監督・主演で映画化している。主な見所は

1 エリザベス(ケイト・ブランシェット)の両性具有的魅力。とくに印象的なのが低い声で耳に快い。対スペインの海戦で形勢不利なとき、銀色の甲冑をつけ馬上で剣をかざし、国民を鼓舞するシーン。まるでジャンヌ・ダークだ!初めは長い髪だが次の画面で短くなって、完全にジャンヌその人になった。乗馬のシーンもある。初めはスカートに横座りで、愛する男(ウォルター・ローリー=クライヴ・オーエン)との競走にも負けてしまうが、その後の変貌はすばらしい。一瞬もじっとしていない血気にはやる逞しい馬にまたがり、さっきのシーンになる。そこで彼女の吐く、

2 「私は生も死も国民と共にする」という有名なセリフは、今次大戦中、ドイツの猛爆に曝されながら首都ロンドンに留まった現エリザベス2世とその両親を連想させる。

3 名訳に感嘆。
燃える暖炉の炎を背景に交わす愛といえば、あの「PHAEDRA」1961を思い出すが、エリザベスの言葉、「die」しか聞き取れなかったが、字幕では、「死んでもいい」となっていた。それこそ上記映画の邦題だ。(→MYBLOG 07.8.19/08.3.10)分かる人には分かる戸田奈津子の粋なはからいであった(と思うのだが)当然ながら隣の相棒は全く分かってなかった。

4 「ヴァージン・クイーン」と呼ばれた女王。
寵愛されていたベスは、寝室や浴室でも、彼女の近くに侍っている(「侍女」だから当然だが)。「クリスチナ女王」(1933)の、グレタ・ガルボと伯爵夫人エッバとのキスシーンがどうしてもちらちら浮ぶ。果たして彼女の本性はどこにあったのだろう?男性との挿話も多々あったそうだが、どこまでが政治上の手段だったか。立場上、異性への思いに蓋をしたのか、それとも元から関心なかったのか?下司の勘ぐりとはよく言うもので様々な憶測を呼ぶが、高貴な方々の心理は手の届かぬ所にあるのだろう。

5 監督は1600年設立された「東インド会社」で植民地化したインド(現パキスタン)出身とか。カプール一族はラージ・カプールを初めとして数多くの映画人を出し、一時期インド映画界に君臨した。それにしてもイギリスと言う国、本国より、周辺部から興味を持たれて色んな映画や小説の題材になる。このように良い感情を持たせるのは、英国の植民地経営のうまさと、英国文化の力ゆえだろうと思う。

6 世界史年表
「1588スペイン無敵艦隊の敗北」とか「1577~80ドレークの世界周航」とか「1584ウォルター・ローリーのヴァージニア植民計画」とか「1590宰相ウォルシンガム死去」とか「1587メリー処刑」とか言う短い一行が、血肉を備えた人間として鮮やかに立ち現れるのがこの映画の面白さだった。

土曜日と月初め(料金1000円)が重なるのに、客の入りは3~4割か。もっとも5人以下のこともよくある(先日はついに私一人の貸しきり状態だった)松江SATY東宝にしては、大賑わいの部類だ。(梅田のTOHO、窓口は長蛇の列だろうな~。当時はウンザリしたが思い出すと懐かしい。)連れは前回の劇場鑑賞(「007カジノロワイヤル」)から14ヵ月ぶりだがTV広告につられておみこしを上げた。

かれは終了後不満そうに「海戦シーンの規模が小さい」「押し寄せる圧倒的なスペイン艦隊を見たかった」と言っていた。ブログ上にも同様の感想がかなり見られる。考えてみたら我等日本人の脳裏には、「艦隊」といえばすぐ米・連合艦隊が浮ぶのだろう。沖縄とかミッドウェーで、さんざんな目にあったもの。圧倒的な敵の姿に、おそれを抱きつつも、美と感じ、賛嘆するという屈折した感情が、敗けた日本人には潜在的にあるに違いない。しかし、あれは1940年代、映画は1580年代

日本なら天下分け目の関が原より前である。帆船を近づけて、乗り移って、という海賊のような戦法なわけだ。(現にドレークは長年の海賊行為でスペインから奪った宝物を女王に献上、それがこの英西戦争の原因のひとつで、この海戦でも指揮をとっている)せいぜいが大砲とか、船の焼き討ち(風向き次第)くらいなのだ。別にわたしも初めからそうと知っていたわけではなく、やはり、「アラぁ?」とは思ったが、もともと女王が目当てなのですぐ気持ちを切り替え、全体に楽しく鑑賞できた。少し怖いシーンもでてくる。そんな時は見ない様にしてやり過ごした。

→「ジャンヌ・ダルク」 13-12-1
コメント ( 14 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (margot2005)
2008-03-04 21:18:38
こんばんは!
Biancaさん、ご無沙汰でございます!
ネタが合わなくてコメント出来ずお許しくださいましな。
さてこの映画は全国展開されているようですが、私的には「エリザベス」の方が見応えがあったと思います。
3に関してですが
愛する男が多々いたエリザベスが、燃える炎の前で”キスは久しぶり(字幕)”の台詞にはちょっとひきましたわ。
「die」って言っていた記憶はあり。
「死んでもいい」と結び付けるなんてさすがBiancaさんらしいですわ。

 
 
 
Unknown (JT)
2008-03-04 22:37:50
こんばんはー、ご覧になったんですね。
この映画を観てると、歴史的な人物を描く難しさを感じます。大方のイメージ通りに作るのか、思い切って意外な面を突出させるのかなどなど。しかし、時代が遡るほど神話的存在になり、描く側のイメージが大きく影響するのでしょうね。この映画は英領インド出身の監督らしいエリザベス像が押し出されていたような気もします。
そうそう、エリザベスが岸壁に立つシーンは「ライアンの娘」の嵐のシーンを借用したらしいですよ。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2008-03-05 16:15:55
margotさん、こちらこそご無沙汰を・・・
全国展開しているおかげで、ここで見ることが出来ました。前作もよかった、といってもうろ覚えですが。
「久し振りのキス」ですが、キスといえどもこうなると山海の珍味に勝る美味。女王様はやりたい放題の庶民の如くは参らぬのじゃないかしら。(昭和天皇だって、危険だというのでフグを一生味わえなかったそうですし)また、男が多々いても、唇だけは許さない、心から愛した人以外、という方針だったかも。それに当時のエリザベス、年齢的にも色恋沙汰から遠ざかっていたのでは?分かるような気がします。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2008-03-05 16:33:19
JTさん、こんにちわ~。TB&コメント有難うございます
はい、ようやく見ることができたんですよ。

>この映画は英領インド出身の監督らしいエリザベス像が押し出されていたような気もします。
 
 旧植民地出身者がこういう映画を作るって、やはりインドと英国だから出来ることじゃないですかね。朝鮮と日本とかアルジェリアとフランスだったらどうも無理なような気がします。

そして、中心から離れた所にいるほうが、良く見えるってことがあるように思います「日の名残り」のカズオ・イシグロとアイヴォリーとか、「ブロークバックMts」のアン・リーがいい例だと。

この映画は大衆向けという感じがしますが、にも拘らず、素晴しいことに変わりは無いですね。映画大国、インド万歳!!!
 
 
 
Unknown (claudiacardinale)
2008-03-05 18:07:36
ビアンカさん、こんばんは。どうもこの作品、話の流れと台詞の臭さに私は困窮していたんですけど、上記を読んでなるほど!こういう見方もあるんだと、納得しておりました。さすが、ビアンカさんです。

それにしても戸田奈津子サンの訳がとってもよかったのでは?この作品英語で見ないで日本語サブタイトルで見るべきでした(笑)

インドと英国って深いつながりがありますよね。ここんとこ英国は移民排斥の傾向が強いです。多国籍移民が多いこの国、インド人とはいいつつ殆どはイデアミンの政策で逃れて来たウガンダからのインド人なのですが(Last King of Scotlandですね)、しっかりと英国社会に溶け込んでます。そして優秀な人材を社会に送り出しているので、税金食いまくりの他の移民とは全く違う立場です。
 
 
 
こんにちは (マダムS)
2008-03-06 09:04:08
お久しぶりです! コメント有難うございました♪
夕べ寝る前に拝見するも、今朝お返事しようと思ったらどうした訳か?自分のブログが開けない状態ですので、こちらに失礼致します。
ふと見ればBiancaさん私と同じ射手座でいらっしゃるとは嬉しいです!「停滞したくない」そうそう!そんな感じで必死に働いておりますが、元が元ですのでちっとも何も成長もせず、映画も懲りずにミーハー的観点からしか観ておりませんでお恥ずかしい限り。 いずれBiancaさんに習って生涯の鑑賞記録など書いてみたいと思いますが半分以上忘れているかも? 「あの時観たあの映画のあの台詞が思い出されて・・」な~んて私も言ってみたいですわ~~(^^;) 私の不満はBiancaさんのご主人様の不満に近いかもと思います(^^)
 
 
 
親世代 (Bianca)
2008-03-06 18:30:54
クラウディアさん、こんばんわ。
クラウディアさん、ようこそおいでくださいました。フーン、いまは排斥傾向が強いのですか、ひところ大分トラブルがありましたからね・・・イスラム圏のとばっちりもあるのかな。ところで、話の運びとかセリフが「くさい」といえば、そうかも知れません。調べたのですが、この監督の年齢は私と殆んど同じ、貴女にとっては親の世代(でしょう?)私には全く違和感が無かったのも、同世代の共通感覚ということで納得でした。ふふ
そうそう、シリアで邦画を見たら音声は英語で字幕がアラビア語だったか…。全然感じが出ません。日本語の字幕付で洋画を見たいとあの時ほど焦がれたことはありませんでした。特にフランス映画。ジャンヌ・モローの「雨のしのび逢い」ですよ!!!
 
 
 
Unknown (Bianca)
2008-03-06 18:49:23
マダムSさん、久し振りにようこそおいでくださいました。マダムも射手座ですか。なんだか納得。でもちゃんと社会復帰?なさってお仕事の傍ら映画も見て、ブログも忘れず…過労にならないよう祈ってます。
ところで、「ミーハー的」に映画を見るって最高ですね。私も理想ではそうでありたいと思うのですが、ついつい何か理屈をこねてしまうのは、イヤナ宿癖だと思っています。
「ちっとも成長せず」は私も同じ。過去の経験に学ぶなんて、できる人はいないんじゃないかな。オノレはアホだと悟る以外に救われる道は無いですね。(親鸞か?)
 
 
 
こんばんは☆ (とらねこ)
2008-03-06 19:23:20
biancaさん、こんばんは!
久しぶりの訪問、ありがとうございました!
他の人もおっしゃってますが、確かに歴史を描く難しさ、というのもあるかなあ、とは思います。
だけど、こうした複雑な史劇を背景に抱えた映画の場合、どこかを切って、どこかを強調した方が、
よりドラマとして見ていて楽しいものになると思いますし、全部を兼ね備えるのは、本当に難しいですよね。
私は、前作も楽しめて、今回も楽しめるなんて、本当にすばらしいと思っちゃいました。
 
 
 
ご無沙汰しておりました (狗山椀太郎)
2008-03-07 01:03:50
こんばんは。
おお、ジャンヌ・ダルクですか。ちょっと老けているような気もしましたが(失礼)。ともあれイギリスの女王は、カトリック諸国と違って宗教上の権威をも兼ねた存在なので、文字通り「救国の聖女」になれるわけですね。
個人的には、ジャンヌ・ダルク風の甲冑姿よりも、薄衣をまとった短髪姿のほうが、何というか「素の女性」の部分を垣間見たような気がして、ほっとさせられました。生涯の伴侶とするにはしんどそうな相手ですが(というか、向こうから相手にされない?)なかなか魅力的な女性像でした。ひさしぶりにコメントをしたせいか、まとまらない文章になってすみません。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2008-03-07 12:04:45
狗山さん、2ヶ月ぶりの復帰第一弾がエリザベスでしたね。しかも私と同じ日にご覧とか。
>ちょっと老けているような気もしましたが
そう、ジャンヌダルクは20才になる前に火刑台の死を迎えてますが、エリザベスはこのとき50代・・・とても映画のようには行かなかったでしょう。しかし、エリートとして心身ともに国を率いる力はあったのでしょうね。(西岡すみ子とは違います。)狗山さんが魅力を感じるの、よく分かります。私も感じますもの。
久し振りにブログに向かうと、文章がスムースに出ませんが、それにしては軽妙な語り口、感服しました。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2008-03-07 12:31:10
とらねこさん、ディープな感受性をお持ちの貴女ですので、大いにこの映画の「醍醐味」を味われたことでしょう。などと勝手に思い込んでいるのですが、間違ったらお許し下さい。今、わたしは田舎住まいで、映画も見るに任せずなんですが、数が少ないのもいいものです。一つ一つの印象が強くなりますので。またいつか、忘れた頃にお邪魔すると思います。どうぞよろしく。
 
 
 
ご無沙汰してます (エミ)
2008-04-29 16:55:03
公開直後に観に行ったにもかかわらず、色々とありまして今頃アップしてるエミです。
お元気でしょうか?
なかなかコチラに伺うことができずで失礼しました。

梅田のTOHOシネマズではこの作品、旧OS劇場での公開だったんで、そんなに長蛇の列ではなかったですよ。
私も実は海戦に「えぇ~?!」っと思ったクチです(笑)
スペイン無敵艦隊があんなにアッサリ敗れていくとは思ってなかったし、ドレイク船長が一瞬写って終わるとは思ってなかったんで(汗)
メアリーとの関係もアッサリ、スルーしちゃうし。
とはいえ、ケイトの演技や衣装・美術は文句の付け所もなくすばらしかったです。
個人的にはもうちょっと話を絞って焦点をあわせてくれた方が好きです。

またお邪魔させてくださいね。
 
 
 
エミさんへ (Bianca)
2008-05-01 09:29:07
お久し振りです!おおOS劇場でしたか?合併で名前が変わっても、中身は変わらず、あそこにありますか。懐かしいなぁ~。お宅の記事を拝見したところ、恋より戦争が気になるとは(ゲームで仕入れた?予備知識のせいとはいえ)意外と女王エリザベスの本質をついているかも知れません。男勝りの…ところで、コメント、同時に発信していましたね。またいらしてくださいませ。
 
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