映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
【映画】サルトルとボーヴォワール 哲学と愛

ピラカンサス(本当は下の画像を出したいのだが、PCのご機嫌が良くないので)

2006 仏 106分 監督 イラン・デュラン・コーエン出演 アナ・ムグラリス ロラン・ドイチェ 原題 Les Amants du Flore(キャフェ・フロールの恋人たち) レンタルDVDで鑑賞
結婚の形式をとらない愛情を生涯貫いたこの超有名なフランスの哲学・文学者の、21歳と24歳での出会いから「第二の性」の記者会見までの20年位を、映画化している。彼女の「自伝」と比べると色々な部分が違っているけれど、特徴だけをかなり大胆に描いており、戯画化と誇張という点ではマンガに近いので飽きさせず、多くの観客をつかめると思う。
一言でいえばサルトルは面白く、ボーヴォワールは親しみやすい。
サルトルは利己的で子供っぽく、少し気が変で、本人よりはハンサム。
ボーヴォワールはまじめな勉強家で色っぽい美人。現代日本の若い女性に共感を呼びそう。
ボーヴォワールは教え子の女生徒たちに随分モテたんだなあ、とか、サルトルは口がうまくて世渡りがうまく、遺産があって暮しに困らないから自由に生きられたんだなあとか、ボーヴォワールのお母さんが金髪美人で母娘関係は意外と良かったんだなあとか、ボーヴォワールの幼馴染のザザ(映画ではローラ)はお転婆で個性的だったはずだが、20歳で死ぬ前はあんなに無表情になったのかなあとか。モーリャックはボーヴォワールが小さい時から愛読していたのに初対面で名前も知らないのはおかしいなあとか、ジャン・ジュネと彼らが会ったのは1943年なのに、それ以前に病気見舞いにお菓子を差し入れるなんておかしいなあとか。サルトルはボクシングをやったのかなあとか、ソルボンヌ大学の図書館で女性を巡る乱闘がありえたのかなあとか。つつけばいくらでも不審な点は出てくるが……。
実存主義とは暴力やセックスの思想であり、なんでもやりたい放題というのはそのころの誤解であると思うが、何かあると腕力に訴えるサルトルとシカゴの恋人にはちょっと首をひねった。
しかし、ともあれ、これで興味を持ち、著作をひもとく人が出てくるかもしれない。私も久しぶりに図書館でボーヴォワールの自伝を借りた。(昔買ったのに無くなったので)
ボーヴォワールでは「娘時代」「人はすべて死す」「他人の死」「第二の性 第3巻」「レ・マンダラン」が、サルトルは映画にも出て来るがギリシア神話に託して親独政権を批判した戯曲「蠅」が好きだ。
2人に関する記事
→「40年前の東京」12-1-9
→「フロイト」 9-10-20
→「ビアンカ・ランブラン」9-4-18…このビアンカは映画には出てこない。
→「ちいさな哲学者たち」 12-7-7
→「サルトルとボーヴォワールに狂わされた娘時代」 21-1-31
→「愛という名の孤独」11-12-8
→「本の世界」 7-11-1
→「駅前の本屋」9-8-1
→「花田清輝」 9-8-3
アナ・ムグラリス
→「シャネルとストラヴィンスキー」10-10-13
「蠅」と同じギリシャ神話の人物が出る映画
→「旅芸人の記録」12-3-8
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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ボーヴォワールの著作を持っていらっしゃるのですね。「他人の血」はレジスタンスものですが、そう好きではなかったですか。私はなぜか1冊も持っていないんですよ。好きだったけれど別れた恋人の手紙みたいなものでしょうか。「招かれた女」の嫉妬する女性に親しみを感じたならば、この映画の彼女はきっと大好きになるでしょう。今彼女の処女作「青春の挫折」と、妹エレーヌの「わが姉ボーヴォワール」を読んでいますが、面白いです。
>こんな人にも子ども時代があったとは、想像できないわ
とのことですが、とてもかわいい子供時代の写真もあり、「真面目な勉強家」と言っても、日本でいう、我利我利な優等生ではないのです。tsutayaにあったら是非ご覧ください。