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映画「バンクーバーの朝日」


2014 日本 132分 松江SATY東宝にて鑑賞 監督 石井裕也 
出演 妻夫木聡 亀梨和也 高畑充希 佐藤浩市 池松壮亮

カナダ、バンクーバーに戦前(1914-1941)実在した日本人移民野球チームの話。

移民が主役、しかも野球で大活躍というのは面白いのではと予告編を見て思った。場内にはいつになく大勢の観客がおり、年配の人が目立った。私と同じくやはり野球と異文化の二つが魅力だったのかも知れない。

しかし、映画が始まると、いやに暗くて湿っぽいシーンが続き、夜と雨と貧乏、まるで演歌の世界のようで、セットらしい日本人街もカナダと言うよりどこか日本の片隅のように見えた。一方、野球試合のシーンは晴れて明るく、活気に満ちて笑顔がいっぱい。この二つの往復で、野球が悲惨な移民たちに希望を与えたという風に思わせるが、いくらなんでもこれほど極端な対照はなかったろう。

日本人の生活に全く現地の空気が感じられぬということも妙だし、南アや米国の人種差別をふと連想したほど、白人地域とくっきりと分かれていたのは不思議である。そういえばカナダは「人種のるつぼ」ではなく「人種のサラダボウル」だと言われる。溶け込まずに隣合せに棲息したという事だろうか。

良かったのは女子高校生エミー(高畑充希)が、成績が良く奨学金の話も出るとか、雇主に彼女の人間性が認められていたことだ。その父の佐藤浩市は英語もしゃべれず、ひたすら稼いで日本に送金するだけなのだが。

また白人観客の態度が公明正大。カナダびいきの審判や選手の不正に抗議し「フェアネス」を重んじるのが救いだ。

そして日本人の体格が当時より背はのびたが細くひ弱になったこと、若者の間で野球がすたれていることを感じた。私のころは好きな子は幼い時から明けても暮れても野球に打ち込んだものだが、主役の妻夫木くんは野球未経験で、急いで特訓したらしい。
また万年最下位で一度も勝てないチームASAHIがようやく1点入れたり、試合に勝ったり、ついには優勝とかいうシーンで全然盛り上がらず選手がみなクールなのは、俳優も脚本家も監督も野球の中継すら見たことないのだろうか、拍子抜けした。この映画のかなめのシーン、ここで感動せずどこで感動せよというのだ。

というわけで、戦前の日本人移民の苦闘と活躍の埋もれた?歴史を掘り起こしたのは多とするが、このテーマ「舟を編む」の監督には畑違いだったのではということ、それに(後で分かったが)、大半のシーンは外地でなく国内(栃木県足利市)にセットを組んで撮影したとのことで、空気感がまるで日本だったのも無理のないところ。このごろ外国に憧れるどころか興味をもたない若者が増えたというが、外国を日本国内で作りだせると思うほど内向きになったのかとあきれた。(経費の問題もあるだろうが)しかもかなり考証がいい加減な感じ。しかし大勢の外国人エキストラを集めたなあ。

妻夫木聡→「小さいおうち」「舞妓はレディ」「清須会議」「STAND BY ME ドラえもん」
「ぼくたちの家族」→15-1-25
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