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【映画】向いの窓

2003 伊英土葡 監督 フェルザン・オズベテク 出演ジョヴァンナ・メッツォジョルノ マッシモ・ジロッティ ラウル・ボヴァ フィリッポ・ニグロ レンタルDVD 原題 LA FINESTRA DI FRONTE

舞台はローマだが、初めに第二次大戦中のシーン。パン屋らしい所で白衣の若者が制止する大男を殴って街路に駆け出し、夜の道を不安そうに歩いている。その次に現代のローマになる。若い夫婦が口げんかしながら歩いている。夫(フィリッポ・ニグロ)はリストラにあって夜勤の仕事に移り、妻(ジョヴァンナ・メッツォジョルノ)は家計のために気に染まない勤めと子育てでイラついている。近所には黒人と結婚した女性や東欧からの移民もいる。雑多な人種が集まった街だが、国籍や人種での差別もある。そこに記憶喪失の老人(マッシモ・ジロッティ)が現われ、彼は上品で良い趣味を持ち、妻の副業のお菓子作りにアドヴァイスする。しかしどうやら、青年時代に悲痛な経験をしているようだ。彼のポケットにあった手紙と詩が、この映画の空気を香り高くしている、

この映画は素晴しいネタがふんだんにちりばめてあるのだけれど、ありすぎて、皿数が多く食べ切れない食事になった恨みがある。いわく困難な秘めた恋(それも過去と現在、深刻なのと軽いの、2つある)多人種の住むユーロ圏での差別、不況による生活難、戦争の傷跡、記憶喪失者の過去というミステリー、既婚女性の不満、ふと他の男に動く浮気心、夫婦の齟齬と仲直り、カリスマ菓子職人の老人が若者に伝授する秘伝、あわやという所で淡い憧れの対象(向いの男)と別れ、地に足の着いた自己実現に向う女性。分解すれば多くの映画が作れるのではないだろうか。

また、出演者が幼い娘や隣人など脇役にいたるまで芸達者で、一人ひとりが自分は主役であるかのように思い入れタップリに演技し、顔のアップが多いので、ムダに感情をゆすぶられる。一つ一つの字が力をこめて書かれている書のようで、全体としてのまとまった印象がなく、散らばる。ひょっとしたら過去の色々な映画のパロディなんじゃないかとも思う。(甘美なBGMや女性の身のこなし、ドキュメンタリー・タッチなど往年のイタリア映画をしのばせる)

俳優は、美形ぞろいで、ジョヴァンナも上の写真の通り、向いの窓の銀行員(ラウル・ボヴァ)も、イヴ・サンローランを思わせる美貌だ。老マッシモ・ジロッティは、この映画に出演したあと84歳で亡くなっており、かれへの献辞が冒頭に出ている。60年前、ヴィスコンティの「郵便配達は2度ベルを鳴らす」(1942)の主演俳優だそうだ。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
TBありがとうございました。 (margot2005)
2010-12-07 21:32:17
この映画はホントにいっぱい詰まっていましたね。
ジョヴァンナ・メッツォジョルノも魅力的でした。
DVDではなくシアターで観たかったです。

「郵便配達は二度ベルを鳴らす」のマッシモ・ジロッティはBSで観ましたが、とってもクールでした。機会があれば是非!
ジャック・ニコルソンの「郵便配達は二度ベルを鳴らす」も良かったですわ。
 
 
 
Unknown (Bianca)
2010-12-08 13:30:13
margot2005さま、TB返しとコメントありがとうございます。私と、margot2005さまがブログで出会ってからもう丸4年ですね。よく続いたものです。ヨーロッパ映画も永遠に尽きずですね。
これをシアターで見たら、顔の大写しの連続で、圧倒されそうですね。座席から立ち上がれなくなりそうです。「郵便配達~」は2つとも見ているのですが、あの、自動車が道から転落するシーンが忘れられませんね。
 
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