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映画「ああ声なき友」


1972 松竹&渥美プロ 105分 DVDで鑑賞

原作 有馬頼義「遺書配達人」監督 今井正 脚本 鈴木尚三 音楽 小室等 

出演 渥美清 加藤嘉 北村和夫 田中邦衛 香山美子 市原悦子 長山藍子 荒木道子 春川ますみ 
   北林谷栄 樹木希林 江原真二郎 倍賞千恵子 新克利 松村達雄 


原作を読んで感動した渥美清が企画主演した、戦争の記憶をめぐるシリアスな作品。同時期の人気シリーズ「男はつらいよ」と比べると、全く別の人物像を演じており、興味深い。

(おはなし)
1944年8月中国上海、病のため日本に帰る西山民次は、分隊の戦友から13通の手紙を託される。部隊は南方に向かい全滅する。彼は苦しく貧しい生活の中で、戦友への約束を果たそうと手紙を配達し続ける。

ロケ地は原作とかなりちがい、小樽・気仙沼、東京、山口県萩、鹿児島などで、松竹映画お得意の観光旅行の趣もある。また戦後の様々な世相が描かれている。満員の列車のなか、米の担ぎ屋(渥美・小川)が警察の手入れにあい、車外に放り投げ、後でとぼとぼ歩いて取りに行くところ、その米を朝鮮人らしき仲買人(田中邦衛)に買いたたかれるところ、家のない女がその夜の宿を体で支払うところなど、また米軍の残飯で作ったスープを闇市で売り出しひと儲けする(財津・渥美)シーンとか、朝鮮戦争の米軍兵士の死体を縫い合わせる仕事(倍賞千恵子)だとか、日本の戦後が時間を追って描かれる。

必死で届けた手紙だが受け取った人々は、必ずしも感謝するばかりではなく、家庭を壊したり、幻滅させたりのこともあるのである。

つまらないことだが、手紙をすぐその場で破って開くことに違和感があった。ただ加藤嘉だけが眼鏡の柄で開けていたが。ふつう、何年も前に死んだ肉親の手紙だったら、1人になってから、ハサミか何かで丁寧にあけるのでは。私は破って開けたことはない。また、この場合検閲はなかったのだが、あれほど自由に心の中を書けるものか?どう見てもこれは、遺書にすら本音を出せない人々に変わって作者が書いたのだろう。

小室等のギター音楽と電車の轟音がぴったり合い、その向う側に渥美がじっとこちらを見つめている。
過去ははやく忘れよ、拘るのはバカだという世間の「訳知り顔」な風潮への怒りの表情であろう。
渥美清が本当は繊細で物静かな人だったのではないか、と思わせる、良い映画だった。
フーテンの寅のどこが魅力的なのか、実は全く分らないのである。
評価はラストシーンを加味して3.5点
有馬頼義(1918~1980)
→「赤い天使」9-11-23
今井正
 →「また逢う日まで」10-8-8
 →「真昼の暗黒」7-2-12
 →「宿毛」7-3-31
渥美清
 →「家族」14-3-20
 →「つむじ風」14-2-17
 →「学校」13-11-14
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