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映画「八重子のハミング」

2016 日本 監督・脚本 佐々部清 出演 高橋洋子 梅沢富美雄
 原作 陽信孝 松江テルサにて12月16日(土)上映

久し振りの映画の感想。固くならずに気楽に行こう。

これは小学教師・教育長を経て萩市で宮司をしている陽(みなみ)信孝さんが、自身がガンになったのをきっかけに若年性アルツハイマーを発病した妻を12年間介護した記録である。母親を5年介護した佐々部清氏が、自費を投入して取り組んだ。彼は「六月灯の三姉妹」「ツレがうつになりまして」「夕凪の街・桜の国」の監督だ。梅沢富美男は医者の役。

端的に言って夫の純愛の記録だと言える。いまだ公的な支援体制がない時代に、心優しい家族や、また彼自身の勇気によって周りを巻き込み、余命5年が相場のところを12年生きながらえた。

ゆったりと川がうねる海辺のまち萩の美しさと、妻(高橋洋子)のあどけない表情と繊細でリアルな演技は素晴らしい。音楽教師で歌が好きだった妻は歌詞は次第に忘れていくがハミングを続ける。特に谷村の歌が好きで最後に「いい日旅立ち」が流れるとき、高橋の初出演作「旅の重さ」が重なった。

難を言うと、繰り出される挿話が美談オンパレードで食傷気味になり、愛と言っても夫の一方的なもので自己満足的である。病気で無能力になった妻は可愛いかもしれないが、元気なうちにもう少し、この半分でも十分の一でもいいから、思いやり、援助してやればよかったのにと、実情は知らないが、思う。映画の描き方が、少し主観に流れている。特に、最後の場面の「八重子、八重子」の絶叫と「センチメンタルとか甘いとか言われてもいい」という声は主人公だけでなく監督のものでもあるのではないか。こう生の声を出しては、観客は却ってシラケてしまう。人を感動させる作品は氷のように冷たい手から生まれる(?)というトーマス・マンの「トニオ・クレーゲル」の一節が頭に浮かぶのである。

→「旅の重さ」13-11-3
→「花いちもんめ」8-5-24
→「終わりよければすべてよし」7-9-26
→「そうかも知れない」7-1-23
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