乱鳥の書きなぐり

遅寝短眠、起床遊喰、趣味没頭、興味津々、一進二退、千鳥前進、見聞散歩、読書妄想、美術芝居、満員御礼、感謝合掌、誤字御免、

息子 / 山田洋次 / 三國連太郎

2006-08-01 | 映画

      息子  

 

            満足度    ★★★★☆

            感動度    ★★★☆☆

 

 

             1991年   日本

              監督    山田洋次

             原作    椎名誠  『倉庫作業員』

 

             キャスト   三國連太郎

                    原田美枝子

                    田中邦江

                    永瀬正敏

                    和久井映見      他

 

 

 岩手県の農村に一人住む父。

 

 父が倒れ、親戚一同は新潟の父の家に集まる。

 久しぶりににぎやかな家。

 

 

 次男が『マークボラン』(T・REX)のTシャツを着て登場。

 

 次男の部屋は昔のまま残されている。

 

 

 壁には『ブルースリー』のポスター、その左横には良くは見えませんでしたが『ジャネット・リン』のポスター。

 

 かけたEPレコードはハードロックかグラムロックだと思いきや、キャンディーズ。

 

 このあたりが都会にあこがれた何もかもが長続きしないような軟弱な70年代の若者を見事に描いており、ここでも山田洋次 監督に拍手…

 

 

 次男になつく姪っ子で彼の気さくで誠実な人柄を表している。

 

 

 

 彼は胸を患い、ニトロを服用。

 倒れた父を心配する長男夫婦。

 大学も出てできのよい父自慢のエリートサラリーマンの長男は、父に本音60%体裁40%といった気持ちの揺れ動きの中で、同居を勧める。

 

 ある日戦友会の出席のために、長男夫婦の東京のマンションに向かう。

 久しぶりの東京。

 愛着のある家を後に、もしかすればこの地を離れることになるかもしれないといった一抹の不安が、新潟の片田舎の駅構内でよぎる。

 そんな寂しさをかき消すかのように、送ってくれた身重の娘に、

「体に気をつけて、安全に帰れよ…ありがとう……」

と振り返る。

 三國連太郎さんの切なさがにじみ出るシーン。

 

 

 迎えには都会人らしい仕草の長男の嫁。

 彼女は優しい。

 マンションの全体像がタクシー内から目にはいる。

 マンションを見上げる年老いた田舎物の父。

 ここで一般の映画のつくりならばモノクロームに色調を変え、父の心理描写を表すのでしょうが、山田洋次 監督の場合はあえて前に進める。

 山田洋次 監督は心理のゆれ動きを あえて第三者の人間行動を背景としてとらえて、内なる本人の描写として現してしまう。

 こういった表現も素晴らしいなと感じた作品の一つでした。

 

 

 マンションの室内に入る。

 ここで初めて無機質感を強調。

 父が丹精こめて作った赤の花束に例を述べながらもテーブルに無造作に置き、子供をつれて買い物に行く嫁。

 夜遅く息子が帰り、父の妻のなくなった葬式のビデオから息子家族のまばゆいまでもの海水浴のビデオは必然性もなくただ画面の中で動き続ける…

 居心地の悪い父は息子の同居の申し出を断り、眠ると告げる…

 寝室に通された布団の電気毛布は真新しい…

 視の他人行儀な毛布を父は二度ばかりつまみ上げ、見つめる…

 

 翌朝父はマンションのベンチで無機質で冷たい都会の砂漠で思いにふける。

 周りには父と同じように行き場の失った老人たちが、独りで肩を落としてとぼとぼと歩いている…

 ここの表現が巧みで好き、思わずうなってしまいました…

 

 

「お父さんこんなところにいらっしゃったの?朝食ができてますよ…」

父は我に帰り、嫁とともにマンションに向かう…

 

 

 戦友会についた父は嫌に明るい占有に声を掛けられた。

「この男を覚えているか?」

その男は自分に何度もビンタを喰らわせた男でした。

「まあ、まあ、まあ…時代が悪かった…」

 男は過去を正当化して水に流したかのような振る舞い…

 

 

 戦友会でも居場所のない父…

 ここの表現も好きでした。

 山田洋次 監督、お見事…

 

 

 戦友会の帰り、タクシーも乗らずにとぼとぼと歩く老人三人。

 先ほどまではあれほろ元気僧に振舞っていた戦友は、咳き込み、自分の置かれた状況を話し出す。

 戦友は老人ホームに住むという…

 この時代に行きた男たちの家制度屋男社会から一気に核家族の世の中に移った日本の社会的問題を見事に描く…

 ここでは深く重く各自が考えさせられたのではないでしょうか…

 

 

 今も心配な次男の家には突然訪問。

 嫁は父に、まばゆいばかりの臙脂(えんじ)のマフラーをプレゼントし、お土産の方は家に送るよいってくれる。

 もし次男のアパートが狭ければ何時でも洋から戻ってきてくださいと伝えてくれる優しい嫁。

 

 

 次男のアパートは狭かった…

 ベッドにはTシャツが脱ぎ散らかしてあり、雑多な雰囲気。

 父はここで始めて居心地のよい笑みを浮かべる…

 ここの場面と三國連太郎さんの表情がとても好き。

 父は東京に来て初めて次男の息子に、東京で我慢してきたあふれんばかりの好き放題の言葉を放つ。

 この息子に土は甘えているように映り、ほほえましさが感じられた。

 コンビにでは東北出身の二人の労働者とにこやかに会話を始める…

 彼はホーム炬燵のすみっこで くつろいだ姿勢で横になる。

 東京ではじめての自分の居場所を見つけた父。

 

 

 父にとっては突然表れる次男の彼女…

 彼女は耳と言葉が不自由だったが、とても明るい良いお嬢さんだった。

 反対されると思い込んでいた息子はいきまいて、

「倒産と兄さんにいくら反対されても、このお嬢さんと結婚する。」

 父は、女性に向かって

「お願いします。」

と、心から喜ぶ。

 

 

 今までお互いにボタンの掛け違っていた父と息子の心の交流の瞬間だった。

 

 

 喜ぶ父ははしゃいでスタンドをぱちぱちとつけては消す。

 深夜二時、電気をつけ

「ビールをもう一本…」

「これで最後だよ。明日仕事があるんだから…」

 息子は筒の心の高揚に答えビール2本とつまみを持つ。

 さりげなく年老いた父の方にダウンジャケットを羽織らせる。

 

 美しい親子描写…

 

 父は上機嫌で『お富さん』を語りように唄う。

 さすが三國連太郎さん、上手すぎる。

 そんな幸せそうな父を温かい目で見守る息子…

 

 

 美しい。

 この二人には物理的条件を超えた家族愛が感じられた…

 つい最近までのの本の家族制度が二人という制限の仲でもごとに現されていたと同時に、日本の変化を目の当たりにした戦争を生きてきた男の苦悩と寂しさ、切なさが表現されていた…

 山田洋次 監督の見事な表現…

 

 

 暗い家の中では長男の嫁にもらった演じのマフラーがまぶしい…

 視の臙脂色は父(自分)がマンションに持っていった手作りの花束の色と同じで、優しさと寂しさが同時に感じられる切ない演出でした…

 山田洋次 監督、あっぱれじゃぁ~~

 

 

 

 そして…

 岩手の家に帰った父は、独りで鍵を開け、独りで墨(薪ではありませんでした)をおこし、ふと見上げると息子たちがまだ小中学生くらいで、母親や妻も生きており、娘もかわいく…といった 懐かしい昔の日本のだ御家族の形態の思い出にふけるのでした…

 そして我に返った父は我に返り、今までの生活となんら変わることなく、しばらくは独りで生活していくことになるのでしょうか…

 

 ただ東京を訪れたことにより息子(次男)との互いの心の接点を見出し凧とによって、安堵感に浸り茶をすするのではないでしょうか…

 日本の問題点を見つめながらも心の温まる秀作でした…

 面白かった…

 

 

キネマの天地 / 山田洋次 監督関連映画記録↓

http://blog.goo.ne.jp/usuaomidori/e/27999cf0a8a70cdca5072b7f7a308891

 

 


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