(イラン サルヴェスターン近くの塩湖)
第二邪宗門
乱れ織
――天草雅歌―― 北原白秋
わが織るは、
火の無花果いちじゆくを綴りたる
はなとろめんの猩猩緋しやうじやうひ。
とん、とん、はたり。
さればこそ
絶えず梭をさ燃え、乱れうつ
火の無花果いちじゆくの百済琴くだらごと。
とん、とん、はたり。
聞き恍ほれて、
何時いつか、我が入る、猩猩緋しやうじやうひ
はなとろめんのまぼろしに。
とん、とん、はたり。
乱れ織、
落つる木の実のすががきに
ふとこそうかべ、銀の楯。
とん、とん、はたり。
飜へす
貝多羅葉ばいたらえふの馬じるし
はなとろめんのまぼろしに。
とん、とん、はたり。
また光る
白き兜かぶとの八幡座はちまんざ、
火の無花果いちじゆくの百済琴くだらごと。
とん、とん、はたり。
乱れ織、
つと空ゆくは槍の列つら。
はなとろめんのまぼろしに。
とん、とん、はたり。
さては見つ、
火の無花果いちじゆくのすががきに
君が鎧の猩猩緋しやうじやうひ。
とん、とん、はたり。
われは、また
はなとろめんのまぼろしに
白き領巾ひれふる。百済琴くだらごと。
とん、とん、はたり。
そのときに、
馬は嘶く、しらしらと、
火のとろめんの無花果いちじゆくに。
とん、とん、はたり。
あはれ、いま
はなとろめんのすががきに
再び擁いだく、君と我。
とん、とん、はたり。
天そらも見ず、
被かつぐは滴したる蜜の音、
君が鎧の猩猩緋しやうじやうひ。
とん、とん、はたり。
こは夢か、
刹那か、尽きぬ幻まぼろしか、
はなとろめんの梭をさの音。
とん、とん、はたり。
『白秋全集 詩集1』 岩波書店 1984年より写す (p.315-319)
第二邪宗門
乱れ織
――天草雅歌―― 北原白秋
わが織るは、
火の無花果いちじゆくを綴りたる
はなとろめんの猩猩緋しやうじやうひ。
とん、とん、はたり。
さればこそ
絶えず梭をさ燃え、乱れうつ
火の無花果いちじゆくの百済琴くだらごと。
とん、とん、はたり。
聞き恍ほれて、
何時いつか、我が入る、猩猩緋しやうじやうひ
はなとろめんのまぼろしに。
とん、とん、はたり。
乱れ織、
落つる木の実のすががきに
ふとこそうかべ、銀の楯。
とん、とん、はたり。
飜へす
貝多羅葉ばいたらえふの馬じるし
はなとろめんのまぼろしに。
とん、とん、はたり。
また光る
白き兜かぶとの八幡座はちまんざ、
火の無花果いちじゆくの百済琴くだらごと。
とん、とん、はたり。
乱れ織、
つと空ゆくは槍の列つら。
はなとろめんのまぼろしに。
とん、とん、はたり。
さては見つ、
火の無花果いちじゆくのすががきに
君が鎧の猩猩緋しやうじやうひ。
とん、とん、はたり。
われは、また
はなとろめんのまぼろしに
白き領巾ひれふる。百済琴くだらごと。
とん、とん、はたり。
そのときに、
馬は嘶く、しらしらと、
火のとろめんの無花果いちじゆくに。
とん、とん、はたり。
あはれ、いま
はなとろめんのすががきに
再び擁いだく、君と我。
とん、とん、はたり。
天そらも見ず、
被かつぐは滴したる蜜の音、
君が鎧の猩猩緋しやうじやうひ。
とん、とん、はたり。
こは夢か、
刹那か、尽きぬ幻まぼろしか、
はなとろめんの梭をさの音。
とん、とん、はたり。
『白秋全集 詩集1』 岩波書店 1984年より写す (p.315-319)
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