邪宗門
赤き花の魔睡 北原白秋
日は真昼、ものあたたかに光素(エエテル)の
波動は甘く、また、緩るく、戸に照りかへす、
その濁る硝子のなかに音もなく、
「口+哥」「口+羅」「(人偏)+方」謨(コロロホルム)の香(か)ぞ滴る......毒の「言+(噓のつくり)」(うはごと)......
遠くきく、電車のきしり......
........棄てられし水薬(すゐやく)のゆめ......
やはらかき猫の柔毛(にこげ)と、蹠(あなうら)の
ふくらのしろみ悩ましく過ぎゆく時よ。
窓の下(もと)、生(せい)の痛苦(つうく)に只(たゞ)赤く戦(そよ)ぎえたてぬ草の花
亜鉛(とたん)の管(くだ)の
湿りたる筧(かけひ)のすそに......いまし魔睡(ますゐ)す......
一部 白秋全集をスキャンさせて頂いています。
白秋全集 詩集1
657ページ
岩波書店 (1984/12)
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