こんな本を読みました

気ままで偏りのある読書忘備録。冒頭の文章は、読んだ本からの引用です。

『こちらあみ子』(今村夏子)

2017-03-01 | そのた
「すっぱいすっぱいすっぱい」と言いながらぴょんぴょん跳ねた。
それがいつの間にかスキップにかたちを変えて「あみ子のは地団太
じゃ」と、後ろをあるく兄が笑った。


 ひえ〜なんて心がひりひりする物語を書く人なんだろう。のびやかに楽しく生きるあみ子ちゃんの、
幸福と不幸。周囲の痛みと悲嘆。生きる楽しみは、やがて生きにくさへ。その間合い、エピソードの
連ね方が絶妙で、こちらは読んでいるだけで胃がキリキリ痛みそう。みんな少しずつ不器用なだけで
誰も悪くないのにな。客観的に見れば目もあてられない日々のなかにも、少しホッとする関係性があっ
たことと、現在のおだやかさが救い。抜粋は、そんなあみ子が一番幸せだったころの記憶。追憶のタ
イミングがまた絶妙で、やりきれなさが増す。ああ、あみ子ちゃんもともえ学園(@トットちゃん)
に行ければよかったのに。
 もうひとつの収録作品、『ピクニック』もやさしさと残酷さが入り混じった、これまた心がざわつ
く物語だった。芸人との恋仲話を繰り広げる七瀬さんに乗っかり「応援」を続ける同僚のナナちゃん
たち。七瀬さんの健気さをみんなで愛するほのぼのとした楽しさと、噓の崖っぷちを並走することで
きっと見下げる気持ちもある底意地の悪さの表裏一体感は、いかにも女子あるあるって気がするので
ある。そういう揺さぶり方が、とっても巧みだと思った。

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (まさぽん)
2017-03-06 13:27:03
講評を読んでるだけで、
なんか世界に入り込める感じです。
こういう本もたまには読みたいですね〜♪
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Unknown (うさいぬ)
2017-03-13 19:58:42
やっぱり私は物語の世界が好きなので
こういう本を読まないと気分転換にならないかも〜
今、ビジネス書を読んでいるのですが
あんまり楽しくありません^^;
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Unknown (まさぽん)
2017-03-14 09:20:59
ですよね(^_^;
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