こんな本を読みました

気ままで偏りのある読書忘備録。冒頭の文章は、読んだ本からの引用です。

『FUTON』(中島京子)

2015-07-18 | 現代小説
あの、変態の先生が、弟子の寝てたフトンに顔を埋めて泣く話でしょう?


 田山花袋『蒲団』に着想を得た中島京子のデビュー作。直木賞受賞の『小さいおうち』、近刊の『長い
お別れ』もそうらしいが、どれも原典を読んでいないのだ。
 だから、主人公のアメリカ人の日本文学の教授が研究する『蒲団』を元嫁にこんなふうにこきおろされ
ても、その面白さは実は半分ほどしか理解できてないんだろうなと思う。彼による『蒲団の打ち直し』も
とても楽しめたのだけど、原典を知っていたらもっと面白いんだろうな。
 でも、そういうもどかしさを差し引いても、多面的な登場人物とそれぞれに少しずつかかわっていく物
語がおもしろかった。この人の人物造形はほどよくユニークで、でもどこかで滑稽なほど真面目でとても
好きだ。みんな少しずつ幸せに向かって歩き出すような、でもみなまでは書いてしまわないさじ加減もほ
どよい読後感。

『楽園』(宮部みゆき)

2015-07-18 | ミステリー、ファンタジー
人と人との関わりは、結局そういうものなのだ。届けるつもりで発したものが届かない。
届いても、相手のもとに着くころには別のものになっている。


 またまた読書録さぼっていて、ずいぶん読んだ本がたまっている。超簡単覚え書きで失礼。
 『模倣犯』の続編。←読んだのだけど、ほとんど覚えていない。映画の超変なラスト近くのシーンに
魂を持って行かれてしもたので。中居くんのピースもこれじゃない感いっぱいだったしなあ。
 で、模倣犯のその後の主人公。やっぱり先が気になって前のめりにあっという間に読んだ。ヒキが巧みで
疾走感はあったのだけど、なんだろう、ラストに向かうにつれ腑に落ちないというか、「楽園」の意味も私
には響かなかった。それでもディティールの表現はやっぱり心に迫るし、宮部節が効いている。何より滋子
さんのライターとしての能力、仕事の態度には非常に刺激された。
 …やっぱりすぐ書かないとダメだね、感想というか内容まで忘れかけてる~

『まほろ駅前番外地』(三浦しをん)

2015-07-04 | 現代小説
そうだ、この部屋は、人間の心が剥きだしになったみたいなんだ。多田は思った。興味のある
もののみを集め自分のためだけに整理整頓してある。
(「逃げる男」より)


 テレビ、映画でも人気を博した人気シリーズの続編。ドラマフリークのくせに一度も見たことがなく、
んじゃ本だけでも読んでおこうかなと。こんなこっぱずかしい表紙は買えないし、ちょうどよかった。
 で、感想は・・・微妙・・・いやあ、題材も、キャラクターもいいのになんだろう、この食い足りなさ
は。浅い。突っ込みが足りない。キャラの立ち方も漫画っぽく、結局マンだとか映像の広がりで補完して
成立する世界な気がする。エンターテイメントとしてはこれでいいんだけど。
 引用のテーマとなった遺品整理も、すごくいいところを突いてると思うのに、もう一歩、感動しきれな
いというか。奥歯にものが挟まってしまう。息抜きに読むには楽しいし、ちょうどいい軽さなんだけど。
たぶん、まず設定ありきが見え見えの世界観が、いかにも今風で嫌なんだろうな。個人的に。
 ただ、星くんというキャラクターはちょっと気に入った。て、単に映像で高良くんがやってるって知っ
たからかも…それだけ見たい。

『鬼談百景』(小野不由美)

2015-07-04 | ミステリー、ファンタジー
恐る恐る手を伸ばしてみると、目の前に見えない何かがある。それは温かくて、
しかも柔らかな毛並みに覆われている感触がした。
(『背中』より)


 久々に頭を使わずに読めるホラーを・・・と手にした小野不由美だが
読み始めたとたん、やっちまった!前に読んだやつやん!しかもわりに最近。
と、あわててこのブログを検索したが、かろうじて「感想」を書き始めてからではないらしい。…でも
絶対読んでたな。ま、ようやくこうして書き留めていることが役に立った。消極的なかたちでな。ま、
ほとんど忘れていたので読み続けるに支障なし。
 淡々と平板で、オチがあるものも少ない。でも怪談ってそういうもんだよ、というのは『耳袋』が主
張を始めたスタイルでなかったかな。ただ、受け入れ、こういうこともあったなと心に静かにしまいこ
まれている。それが妙にリアル。抑えた文体も読みやすい。なかにはちょっとくすっとする締めもあっ
たりして、まあまあ気分転換としてはおもしろかった。そんなに怖くはないんだけどね。

 で、引用した短編…それ、トトロや!と読者のほぼ100%が突っ込んだに違いない。