こんな本を読みました

気ままで偏りのある読書忘備録。冒頭の文章は、読んだ本からの引用です。

『ベスト本格ミステリ2013』(本格ミステリ作家クラブ選・編)

2014-10-10 | ミステリー、ファンタジー
幸い、僕は恵まれていた。夢こそが希望の象徴であり、至上の極楽であり、唯一の武器で
あることを知る術を持っていたからだ。(小島達矢『僕の夢』より)


 よりすぐられた10の短編と1の評論からなるアンソロジー。ほぼ読んだことのない作家さんばかりで、
ミステリ好きを公言するのは控えねばと反省した次第。「ベスト」と銘打たれるだけあって、どの作品も
キャッチーでひねりのきいた、読み応えのあるものばかりだった。
 なかでも心に残ったのは、夢をテーマにしたこの一作。なにせ私自身、よく夢を見て、それを他人に話
したくてたまらなくなる始末に負えない人間だから。つかみはOK。内容も、他人の夢をコントロールする
能力を身につけ、さらに壮大な「目的」へ向かおうとする“僕”…交錯し、複相する夢と現実のなかで、スト
ーリーは思わぬラストへ。ドキドキして切なくて少し悲しい話だった。のめりこんで読んでいたせいか、私
までしばらく不思議な夢を見るハメになった。
 本当にどの話も面白かったが…バカバカしさがたまらない「田舎の刑事の宝さがし」(滝田務雄)も個人
的にツボだった。
 猫の表紙に釣られて思わず借りたのだけど、よい息抜きになったのだ。

『おそろし』(宮部みゆき)

2014-10-04 | 現代小説
表通りの喧噪を離れた奥座敷に、一抹の愛嬌と一抹の悲しみを共に含んで、
喜一ひとりの朝餉の音がする。


 『ぼんくら』の続編と迷ったあげく、ついこの間BSでドラマ化されていたというこちらをセレクト。
(ドラマは見られなかったのだが)
 とある事件でトラウマを背負ったおちかちゃんが、ひょんなことから不思議潭の聞き手となり、幕があく
怪異の世界…で、またまわりの人とか、訪れる人とか、やさしくてできた人が多いんだこれが。じんわりあ
たたかい心の交流が特によく描かれていた印象。なかでも再会を果たした兄妹の朝餉のシーンがとってもよ
かった。思いやりの示し方が、嫌みなくまっとうで上品で、本当に宮部さんっていい人なんだろうなと思わ
ずにいられない。(コレで性格悪かったらそれはそれでたいしたもんだ)
 怪異解決までのくだりは、ちょっと霊験お初ちゃんを思い出させるとこともあったのだけど、ま、怪異だ
からね…
 ともあれ楽しく読めた。これも続編があるので楽しみである。