こんな本を読みました

気ままで偏りのある読書忘備録。冒頭の文章は、読んだ本からの引用です。

『ハルカ・エイティ』(姫野カオルコ)

2014-05-17 | 現代小説
「せや、なんでもぜんぶすみからすみまで説明できるもんやあらへんがな」
「ほんまや、ほんまにそう思うわ、うちも」
「なあ」
「うん……」
 ふたりは長い夫婦である。風鈴が鳴り、晩夏は暮れていった。


 図書館でなんとなく手に取って、そのまま借りた一冊。女の一代記やん、好きなやつやん!と読み進ん
で気がついた。楽しく読めた。面白かった。なのに、なんだろうこのちょっと「惜しい」感じ…
 文体は平易で親しみやすい…が、あまりに構えなさすぎて格調に欠ける。それが狙いなのかもしれない
が、身も蓋もないなあ~と興ざめしてしまうことが何度か。言いたいことはわかるし、共感できそうなの
に、なんだろう、今一歩かゆいところに手が届かない感じでぐっとくる言葉が出て来ない。ストーリーも、
冒頭の「今ハルカ」さんと時代をさかのぼっての「ハルカ」さんの性格に隔たりがありすぎて、違和感を
ぬぐいきれないまま最後まで来て、「ここで終わるんかい!」と残念な気分。いや、みなまで言わないと
いうのが作者の美学なのだとあとがきにも書いてあったのだけど…ピックアップした文章も、そういうエ
クスキューズもあるのかなあなんて穿った見方をしてしまうのだけど。最初に出てきたハルカさんが強烈
で魅力的だっただけに、もうちょっとだけでも、納得のいくつなぎが欲しかったなと思う。
 その意味では、お友達の元華族のお嬢様、日向子さんの存在が私的にはとても面白かった。しゃべり方
はこうめちゃんやし。(わかる奴だけわかればいい)そうそう、舞台は滋賀県の架空のまちというのも、
親近感があってよかったのだ。