解雇無効訴訟:就労先に雇用責任 松下子会社へ賠償命令--大阪高裁
松下電器産業の子会社「松下プラズマディスプレイ」茨木工場(大阪府茨木市)で請負会社員として働いていた吉岡力(つとむ)さん(33)が偽装請負を内部告発後、不当な異動の末に解雇されたとして、プラズマ社に解雇無効と慰謝料600万円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決が25日、大阪高裁であった。若林諒裁判長は慰謝料45万円のみを認めた1審・大阪地裁判決を変更し、「就労先と契約があり、解雇は無効」として、解雇後の賃金計約600万円と慰謝料90万円の支払いを命じた。
原告側は「偽装請負は就労先に雇用責任があると認めた画期的な判決で、全面的な勝訴」と評価している。
偽装請負は、実態は「派遣」にもかかわらず、「請負」と偽って請負会社がメーカーに労働者を送り込み、メーカーの指揮下で仕事をさせるもの。職業安定法や労働者派遣法に違反する行為にあたる。
判決によると吉岡さんは04年1月から請負で勤務。実態は派遣に当たるとして05年4月、プラズマ社に直接雇用を申し入れ、同年5月、偽装請負を大阪労働局に告発。同年8月には期間工として直接雇用されたが、単独の職場での作業を命じられ、06年1月には契約期間満了を理由に雇用を打ち切られた。
若林裁判長は「契約は派遣の実態を隠す偽装請負」と判断。吉岡さんとプラズマ社との間には「暗黙の労働契約の成立が認められる」とした。【北川仁士】
◇松下電器産業の話
会社の主張が認められず、極めて遺憾。判決文をよく検証した上で上告する方針。
(出所:毎日新聞 2008年4月26日 東京夕刊)
松下電器子会社の偽装請負、直接雇用成立を認定
違法な偽装請負の状態で働かされていた男性について、大阪高裁が25日、当初から両者間に雇用契約が成立しているとして、解雇時点にさかのぼって賃金を支払うよう就労先の会社に命じる判決を言い渡した。就労先で直接、指揮命令を受け、実質的にそこから賃金支払いを受けていた実態を重視。「請負契約」が違法で無効なのに働き続けていた事実を法的に根拠づけるには、黙示の労働契約が成立したと考えるほかないと述べた。事実上、期間を区切ることなく雇い続けるよう命じる判断だ。
原告側の弁護団によると、偽装請負をめぐって就労先の雇用責任を認めた司法判断は高裁レベルで初めて。
キヤノンなど大手メーカーの偽装請負は社会問題となったが、違法行為を指摘された企業が短期間の直接雇用のみで「是正した」と主張する事態が続発。行政もこれを追認していた。今回の判決はこうした法解釈を覆す可能性がある。弁護団は「労働の実態を踏まえた判決を高く評価したい。同様のケースに与える影響は大きい」と話している。
松下電器産業の子会社「松下プラズマディスプレイ(PDP)」(大阪府茨木市)の工場で働いていた吉岡力(つとむ)さん(33)が同社を相手に提訴した。若林諒裁判長は直接雇用の地位を確認しなかった一審判決を変更。06年の解雇後の未払い賃金(月約24万円)の支払いを命じ、内部告発に対する報復があったと認定して、慰謝料の額も一審の45万円から90万円に増額した。
判決によると、吉岡さんは04年1月から、松下PDPの茨木工場で「請負会社の社員」という形で働いていたが、翌05年5月、「実際は松下側社員の指揮命令のもとで働いており、実態は直接雇用だ」と大阪労働局に偽装請負を内部告発した。同8月、松下PDPに期間工として直接雇用されたものの、06年1月末、期間満了を理由に職を失った。期間工だった間、吉岡さんは他の社員と接触できない単純作業に従事させられた。
判決はまず、請負会社の社員だった吉岡さんらの労働実態について「松下側の従業員の指揮命令を受けていた」などと認定。吉岡さんを雇っていた請負会社と松下側が結んだ業務委託契約は「脱法的な労働者供給契約」であり、職業安定法や労働基準法に違反して無効だと判断した。
そのうえで、労働契約は当事者間の「黙示の合意」でも成立すると指摘。吉岡さんの場合、04年1月以降、「期間2カ月」「更新あり」「時給1350円」などの条件で松下側に労働力を提供し、松下側と使用従属関係にあったとして、双方の間には「黙示の労働契約の成立が認められる」と認定した。この結果、吉岡さんはこの工場で働き始めた当初から直接雇用の関係にあったと結論づけた。
松下側が06年2月以降の契約更新を拒否したことについても「解雇権の乱用」で無効と判断した。
さらに、吉岡さんが期間工として直接雇用された05年8月以降、配置転換で単独の作業部屋に隔離されたことについて、「松下側が内部告発などへの報復という不当な動機や目的から命じた」と認定した。
昨年4月の大阪地裁判決は「偽装請負の疑いが極めて強い」として、就労先には労働者を直接雇用する義務が生じるとの判断を示す一方、雇用契約の成立は否定していた。
(出所:朝日新聞HP 2008年04月25日16時10分)
松下プラズマ
偽装請負告発の吉岡さん勝訴
派遣先に雇用義務
大阪高裁判決
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大阪の松下プラズマディスプレイ茨木工場で働いていた吉岡力さん(33)が偽装請負を告発し、直接雇用のあと五カ月間で解雇されたのは不当だと解雇撤回を求めていた裁判の判決が二十五日、大阪高等裁判所(若林諒裁判長)でありました。判決は、一審判決をくつがえし吉岡さんの訴えを全面的に認めました。
吉岡さんは二〇〇五年五月に偽装請負を告発、その不法性を社会に訴える契機となりました。松下は、いったん直接雇用したうえで隔離部屋に押しやり、〇六年一月末に解雇しました。
判決は、松下の違法行為(偽装請負)を認め、請負契約は無効だと指摘。継続して働かせていたことについて「黙示の労働契約(直接雇用)」にあったとして、吉岡さんの地位について「雇用契約上の権利を有する」と確認しました。
吉岡さんを直接雇用後、配置転換し一人作業を押し付けたことについて「報復行為」と批判。雇い止めについても、契約は多数回更新され仕事も継続しており「更新拒絶の濫用(らんよう)として許されない」と断定。事実上の常用雇用の契約関係にあったと認めました。
「よし」との歓声に包まれ支援者と抱き合った吉岡さんは「声をあげてよかった。多くの仲間の支えがあっての判決だ」と話しました。
村田浩治弁護士は「主張が全面的に認められた。派遣先の雇用責任を認める意義ある判決」と語りました。支援にかけつけた徳島のJMIU光洋シーリングテクノ分会の矢部浩史さん(43)は「告発したら雇いどめになる実態がある。国は判決を受けとめ、(企業に)きちんと指導してほしい」と話しました。
派遣法改正に力を尽くす
小池晃参院議員の話 雇い止めを許さず常用雇用を派遣先に求める画期的判決です。党議員団はこの問題を取り上げ、解決を求めてきました。日本共産党が提案している労働者派遣法改正要求の正しさが司法判断によっても裏付けられました。派遣労働者の権利を守るために抜本改正に向けて引き続き力を尽くします。
(出所:日本共産党HP 2008年4月26日(土)「しんぶん赤旗」)
松下電器産業の子会社「松下プラズマディスプレイ」茨木工場(大阪府茨木市)で請負会社員として働いていた吉岡力(つとむ)さん(33)が偽装請負を内部告発後、不当な異動の末に解雇されたとして、プラズマ社に解雇無効と慰謝料600万円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決が25日、大阪高裁であった。若林諒裁判長は慰謝料45万円のみを認めた1審・大阪地裁判決を変更し、「就労先と契約があり、解雇は無効」として、解雇後の賃金計約600万円と慰謝料90万円の支払いを命じた。
原告側は「偽装請負は就労先に雇用責任があると認めた画期的な判決で、全面的な勝訴」と評価している。
偽装請負は、実態は「派遣」にもかかわらず、「請負」と偽って請負会社がメーカーに労働者を送り込み、メーカーの指揮下で仕事をさせるもの。職業安定法や労働者派遣法に違反する行為にあたる。
判決によると吉岡さんは04年1月から請負で勤務。実態は派遣に当たるとして05年4月、プラズマ社に直接雇用を申し入れ、同年5月、偽装請負を大阪労働局に告発。同年8月には期間工として直接雇用されたが、単独の職場での作業を命じられ、06年1月には契約期間満了を理由に雇用を打ち切られた。
若林裁判長は「契約は派遣の実態を隠す偽装請負」と判断。吉岡さんとプラズマ社との間には「暗黙の労働契約の成立が認められる」とした。【北川仁士】
◇松下電器産業の話
会社の主張が認められず、極めて遺憾。判決文をよく検証した上で上告する方針。
(出所:毎日新聞 2008年4月26日 東京夕刊)
松下電器子会社の偽装請負、直接雇用成立を認定
違法な偽装請負の状態で働かされていた男性について、大阪高裁が25日、当初から両者間に雇用契約が成立しているとして、解雇時点にさかのぼって賃金を支払うよう就労先の会社に命じる判決を言い渡した。就労先で直接、指揮命令を受け、実質的にそこから賃金支払いを受けていた実態を重視。「請負契約」が違法で無効なのに働き続けていた事実を法的に根拠づけるには、黙示の労働契約が成立したと考えるほかないと述べた。事実上、期間を区切ることなく雇い続けるよう命じる判断だ。
原告側の弁護団によると、偽装請負をめぐって就労先の雇用責任を認めた司法判断は高裁レベルで初めて。
キヤノンなど大手メーカーの偽装請負は社会問題となったが、違法行為を指摘された企業が短期間の直接雇用のみで「是正した」と主張する事態が続発。行政もこれを追認していた。今回の判決はこうした法解釈を覆す可能性がある。弁護団は「労働の実態を踏まえた判決を高く評価したい。同様のケースに与える影響は大きい」と話している。
松下電器産業の子会社「松下プラズマディスプレイ(PDP)」(大阪府茨木市)の工場で働いていた吉岡力(つとむ)さん(33)が同社を相手に提訴した。若林諒裁判長は直接雇用の地位を確認しなかった一審判決を変更。06年の解雇後の未払い賃金(月約24万円)の支払いを命じ、内部告発に対する報復があったと認定して、慰謝料の額も一審の45万円から90万円に増額した。
判決によると、吉岡さんは04年1月から、松下PDPの茨木工場で「請負会社の社員」という形で働いていたが、翌05年5月、「実際は松下側社員の指揮命令のもとで働いており、実態は直接雇用だ」と大阪労働局に偽装請負を内部告発した。同8月、松下PDPに期間工として直接雇用されたものの、06年1月末、期間満了を理由に職を失った。期間工だった間、吉岡さんは他の社員と接触できない単純作業に従事させられた。
判決はまず、請負会社の社員だった吉岡さんらの労働実態について「松下側の従業員の指揮命令を受けていた」などと認定。吉岡さんを雇っていた請負会社と松下側が結んだ業務委託契約は「脱法的な労働者供給契約」であり、職業安定法や労働基準法に違反して無効だと判断した。
そのうえで、労働契約は当事者間の「黙示の合意」でも成立すると指摘。吉岡さんの場合、04年1月以降、「期間2カ月」「更新あり」「時給1350円」などの条件で松下側に労働力を提供し、松下側と使用従属関係にあったとして、双方の間には「黙示の労働契約の成立が認められる」と認定した。この結果、吉岡さんはこの工場で働き始めた当初から直接雇用の関係にあったと結論づけた。
松下側が06年2月以降の契約更新を拒否したことについても「解雇権の乱用」で無効と判断した。
さらに、吉岡さんが期間工として直接雇用された05年8月以降、配置転換で単独の作業部屋に隔離されたことについて、「松下側が内部告発などへの報復という不当な動機や目的から命じた」と認定した。
昨年4月の大阪地裁判決は「偽装請負の疑いが極めて強い」として、就労先には労働者を直接雇用する義務が生じるとの判断を示す一方、雇用契約の成立は否定していた。
(出所:朝日新聞HP 2008年04月25日16時10分)
松下プラズマ
偽装請負告発の吉岡さん勝訴
派遣先に雇用義務
大阪高裁判決
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大阪の松下プラズマディスプレイ茨木工場で働いていた吉岡力さん(33)が偽装請負を告発し、直接雇用のあと五カ月間で解雇されたのは不当だと解雇撤回を求めていた裁判の判決が二十五日、大阪高等裁判所(若林諒裁判長)でありました。判決は、一審判決をくつがえし吉岡さんの訴えを全面的に認めました。
吉岡さんは二〇〇五年五月に偽装請負を告発、その不法性を社会に訴える契機となりました。松下は、いったん直接雇用したうえで隔離部屋に押しやり、〇六年一月末に解雇しました。
判決は、松下の違法行為(偽装請負)を認め、請負契約は無効だと指摘。継続して働かせていたことについて「黙示の労働契約(直接雇用)」にあったとして、吉岡さんの地位について「雇用契約上の権利を有する」と確認しました。
吉岡さんを直接雇用後、配置転換し一人作業を押し付けたことについて「報復行為」と批判。雇い止めについても、契約は多数回更新され仕事も継続しており「更新拒絶の濫用(らんよう)として許されない」と断定。事実上の常用雇用の契約関係にあったと認めました。
「よし」との歓声に包まれ支援者と抱き合った吉岡さんは「声をあげてよかった。多くの仲間の支えがあっての判決だ」と話しました。
村田浩治弁護士は「主張が全面的に認められた。派遣先の雇用責任を認める意義ある判決」と語りました。支援にかけつけた徳島のJMIU光洋シーリングテクノ分会の矢部浩史さん(43)は「告発したら雇いどめになる実態がある。国は判決を受けとめ、(企業に)きちんと指導してほしい」と話しました。
派遣法改正に力を尽くす
小池晃参院議員の話 雇い止めを許さず常用雇用を派遣先に求める画期的判決です。党議員団はこの問題を取り上げ、解決を求めてきました。日本共産党が提案している労働者派遣法改正要求の正しさが司法判断によっても裏付けられました。派遣労働者の権利を守るために抜本改正に向けて引き続き力を尽くします。
(出所:日本共産党HP 2008年4月26日(土)「しんぶん赤旗」)