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世田谷国公法弾圧事件が東京地裁で結審

2008-06-26 01:03:50 | 憲法裁判
世田谷国公法弾圧事件結審
9月19日に判決
東京地裁

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 「しんぶん赤旗」号外を集合住宅に配った元厚生労働省職員の宇治橋眞一さん(60)が不当に国家公務員法違反罪に問われている「世田谷国公法弾圧事件」の第二十二回公判が二十四日、東京地裁(小池勝雅裁判長)でありました。弁護側が最終弁論を行い、結審しました。判決は九月十九日に言い渡されます。

 弁護側は休憩をはさみ、約六時間にわたり公訴の不当性や捜査の問題点について詳述。葛飾ビラ配布弾圧事件などの類似事件に触れて「言論表現の自由の未来は、ビラ配布を対象とする一連の裁判の帰すうにかかっている」と指摘しました。

 郵便職員の選挙活動を有罪とした猿払事件最高裁判例(一九七四年)については「変更されなければならない」と主張しました。

 公判で、世田谷署に連行された宇治橋さんの身分が判明した後は、捜査が警視庁公安部主導で行われたことがわかっています。弁護団は「公安警察の日本共産党に対する異常な執着を示している」と述べました。

 国公法と人事院規則が勤務時間の内外を問わず、国家公務員の政治活動を一律に広範に禁止していることには「憲法に違反する。法令違憲の判決を」と求めました。

 同法の規定を違憲でないと仮定した場合でも「私生活でビラを配ったからといって、厚労省社会統計課での職務が政治的にゆがめられたことはない。法益の侵害がない以上、処罰対象にならない」として無罪を主張しました。宇治橋さんは意見陳述で「ビラの投かんは犯罪として悪質なものなのか。社会にどれほどの害悪があったのか。真実と憲法の精神にのっとった判決を願う」と述べました。

(出所:日本共産党HP 2008年6月25日(水)「しんぶん赤旗」)
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NHK特番問題:取材対象者逆転敗訴 「政治圧力」判断せず--最高裁判決

2008-06-20 01:19:44 | 憲法裁判
 NHK特番問題:賠償訴訟 最高裁「期待権」認めず 取材対象者が逆転敗訴

 戦時下の性暴力に関するNHK番組の取材に協力した市民団体が「事前説明と異なる番組内容に改変された」として、NHKと制作会社2社に1000万円の賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(横尾和子裁判長)は12日、「取材対象者の番組内容への期待や信頼は原則として法的保護の対象にならない」との初判断を示した。その上でNHK側に200万円の支払いを命じた2審・東京高裁判決(07年1月)を破棄し、請求を棄却した。団体側の逆転敗訴が確定した。

 原告の「戦争と女性への暴力」日本ネットワークは00年12月、いわゆる従軍慰安婦問題をテーマに「女性国際戦犯法廷」を共催。NHKは01年1月、教育テレビの「ETV2001」で同法廷を放送した。団体側は「ありのまま伝えると言われたのに、一部がカットされるなど、番組への期待・信頼を裏切られた」と主張していた。

 小法廷は「憲法が定める表現の自由の保障の下、番組の編集は放送事業者の自律的判断に委ねられる」と指摘。取材対象者の「期待・信頼」が法的に保護され得るのは取材に応じることで著しい負担が生じ取材側が「必ず取り上げる」と説明したような極めて例外的な場合に限られるとし、団体側の主張する「期待権」を認めなかった。

 1、2審は「番組内容に期待を抱く『特段の事情』がある場合、編集の自由は一定の制約を受ける」と指摘し、NHK側に賠償を命じた。2審は「安倍晋三前首相(当時は官房副長官)らの発言をNHK幹部が必要以上に重く受け止め、意図をそんたくして当たり障りのない番組にすることを考え、改変を指示した」と指摘したが、最高裁はこの点について判断しなかった。【北村和巳】

 ◇NHK広報局の話
 正当な判断と受け止めている。今後も自律した編集に基づく番組制作を進め、報道機関としての責務を果たしていく。

 NHK特番問題:取材対象者逆転敗訴 「政治圧力」判断せず--最高裁判決

 ◇原告「不当」と批判
 「政治家の圧力・介入を正面から取り上げない不当判決だ」。NHK番組改変訴訟の最高裁判決で逆転敗訴したことを受け、市民団体「戦争と女性への暴力」日本ネットワークのメンバーらが12日、東京都内で記者会見を開き判決を批判した。

 市民団体側は「安倍晋三前首相(当時は官房副長官)ら自民党政治家が番組放送前にNHK幹部と面会し、意見を述べたことが番組改変につながった」と主張してきたが、最高裁は「政治圧力」について判断しなかった。西野瑠美子共同代表は「司法の公平、公正性に大変失望した。一部政治家の意向に沿うようにゆがめて放送していいのか」と話した。

 飯田正剛弁護団長も「判決は具体的な事実を離れて一般論に終始している。NHKを勝たせようという結論が先にあったのではないか」と不満を述べた。

 一方、安倍晋三前首相は「最高裁判決は政治的圧力を加えたことを明確に否定した東京高裁判決を踏襲しており、(政治家介入があったとする)朝日新聞の報道が捏造(ねつぞう)であったことを再度確認できた」とコメントを出した。

 朝日新聞社広報部は「訴訟の当事者ではなく、判決も番組改変と政治家とのかかわりについて具体的に判断していないので、コメントする立場にない」と話している。【臺宏士】

 ◇倫理的義務果たせ--ジャーナリストの原寿雄さんの話
 取材協力者の期待権が法的に保護されない場合でも、番組内容に大きな変更などがある場合、取材側としてはできる限り相手に事情を伝える努力は倫理的義務として心がけたい。

 放送前にNHK上層部が有力政治家と会ってから、慰安婦問題に対するその政治家の意向に沿うような大幅な番組改変があった事実は否定できないと思う。公共放送としてのNHKの自由な編集として、放送法の趣旨に沿っていると私には思えない。判決はNHKの対応がジャーナリズムとして正しかったと認めたわけではない。

 ◇個別判断なく残念--砂川浩慶・立教大准教授(メディア論)の話
 取材協力者が抱く期待や信頼が法的保護に該当するケースを限定的にとらえたのは、番組編集や報道の自由を保障する観点からみて妥当だと思う。しかし、内部告発者や取材協力者がメディアへの情報提供について萎縮(いしゅく)効果を招かないかの心配は残った。

 また、高裁判決のように、政治家の意向をくんだNHK幹部による編集作業への異例の関与が番組改変につながったかどうかは大きな論点だった。判決は全体に一般論に終始し、事実上の門前払いの印象で、個別判断を避けたのは残念だ。

 ◇NHKと朝日、改変巡り応酬
 番組を巡っては、朝日新聞が05年1月、「当時官房副長官だった安倍晋三氏らがNHK幹部を呼んで『偏った内容だ』と指摘し、番組内容が変わった」と報道した。制作にかかわったNHK職員も「政治介入が恒常化している」と述べた。

 NHKや安倍氏らは全面否定し、朝日とNHKは互いに抗議や訂正要求、質問状送付などを繰り返した。朝日は同9月、報道について「不確実な情報が含まれていたが、訂正する必要はない」との最終見解を公表した。

 また、2審判決を報じたNHKのニュース番組について、BRCは今月10日、原告側主張に触れずにNHKの解釈だけを報じたことは公平性に欠け、放送倫理に違反するとの決定を出している。

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 ■解説

 ◇編集の自由、最大限に尊重
 最高裁判決は、憲法の「表現の自由」から導かれる放送事業者の「編集の自由」を最大限に尊重した。放送番組に対する判断だが、マスメディア全体に波及するだろう。

 1、2審は「編集の自由」を重視しつつ、「特段の事情」があれば、取材対象者の「期待・信頼」への侵害が不法行為になるとの判断を示した。拡大解釈の余地を残す指摘で、メディア全体の萎縮(いしゅく)を招きかねない危険性をはらんでいた。多角的な取材の結果、当初の狙いと異なる番組や記事になるケースはままあるからだ。

 これに対し最高裁は、「期待・信頼」は原則として法的に保護されないと判断しただけでなく、番組内容の変更についても、事前の合意や約束がない限り、取材対象者に説明する義務はないと述べた。

 今回の訴訟は、政治家の言動がNHKの番組改変にどう影響したのか、あいまいなまま終わったが、取材対象者や視聴者の不信を招いたという事実は残った。司法のお墨付きを得たとは言っても、節度ある取材が報道機関に求められるのは当然だ。それが安易な報道規制を防ぐことにもつながる。【北村和巳】

(出所:毎日新聞 2008年6月13日 東京朝刊)

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NHK番組改変訴訟ー最高裁が不当判決/協力者の「期待権」退ける-

2008-06-13 12:48:35 | 憲法裁判
NHK番組改変
最高裁が不当判決
協力者の「期待権」退ける

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 日本軍「慰安婦」問題を扱ったNHK番組が改ざんされたとして、市民団体「バウネット・ジャパン」がNHKと制作会社二社を訴えていたNHK裁判の上告審判決が十二日、最高裁第一小法廷でありました。横尾和子裁判長は、NHKに損害賠償を認めた東京高裁判決を破棄しました。

 判決は、放送法で規定されている報道・編集の自由をあげ、「取材を受けた側の期待や信頼は原則的に法的保護の対象にならない」と述べ、保護の対象となるのは「取材対象者に格段の負担が生ずる場合」と限定し、バウネットはこれに当たらないとしました。高裁判決では、取材に協力したバウネットの番組への期待を違法に侵害し説明義務を怠ったとしていました。

 番組が改変されたことへのバウネットへの「説明責任」についても、「特段の事情」がない限り「法的な説明責任が認められる余地はない」と退けました。

 焦点の「政治の介入」について、高裁判決ではNHK幹部が自民党の安倍晋三官房副長官(当時)らの発言を忖度(そんたく)して番組改変を行った事実を認めました。しかし、判決ではNHK幹部との接触を認めただけで、改変に至った過程で与党政治家がどのような影響を与えたかなどの判断を避けました。

 原告弁護団は「政治家の圧力を正面から取り上げないまま、取材協力者の期待や信頼が保護されるのはきわめて例外的とした不当判決。憲法二一条を『政治家のための表現の自由』に変ぼうさせ、国際的に批判を受けるのは間違いない」とのコメントを発表しました。

 バウネットの西野瑠美子共同代表は記者会見で「政治家の介入を容認した判決に怒りを感じる。裁判には負けたが、政治家の意思を忖度(そんたく)して番組を改ざんした事実を人々の記憶に残すなど、七年のたたかいで大きな道を開くことができた」と語りました。


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解説
問題の本質を外す
 問題の本質をことごとく外した判決でした。

 裁判の最大の焦点は、安倍晋三官房副長官(当時)の政治的圧力に屈して、制作現場をねじふせて番組の趣旨を曲げてしまったNHK上層部の行為が許されるのかどうか、ということでした。

 しかし、最高裁判決は高裁判決が認めた詳細な事実、安倍氏との接触後に大きな改ざんが行われたという編集過程の異常さを一顧だにせず、抽象的で形式的な「編集の自由」に終始しました。

 ここで問われるべきことは一般論としての編集権ではありません。高裁判決が判断したように、NHK上層部による番組改変は「憲法で保障された編集権を自ら放棄したに等しい」もので、政府・自民党との近すぎる距離が問われたはずです。

 憲法二一条の表現の自由は、誰のために何のためにあるのか。政治家の圧力に屈した編集についてまでも、表現の自由を認めているのか。報道機関の報道の自由は、国民の知る権利に奉仕するものであるがゆえに、もっとも権力から自立していなければならないのです。

 これまで闇に埋もれてきた政治介入の事実が、市民の訴え、現場スタッフの告発で明らかになった意義は、改めて記憶にとどめたいことです。(板倉三枝)

(出所:日本共産党HP 2008年6月13日(金)「しんぶん赤旗」)
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イラク戦争にドイツ軍が参加したのは、連邦議会(下院)の承認がなく違憲-ドイツ連邦憲法裁判所-

2008-05-11 00:43:41 | 憲法裁判
「戦闘行為」参加は違憲
連邦憲法裁判決 イラク戦の偵察活動
ドイツ

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 ベルリンからの報道によると、ドイツ連邦憲法裁判所は七日、二〇〇三年のイラク戦争開始直前から直後にかけて北大西洋条約機構(NATO)軍のトルコ上空偵察活動にドイツ軍が参加したのは、連邦議会(下院)の承認がなく違憲だとする判決を出しました。

 当時の社会民主党と90年連合・緑の党のシュレーダー連立政府は米主導のイラク侵略戦争に反対していましたが、同年二月から四月にかけてトルコ上空でのNATO軍の空中警戒管制機(AWACS)による作戦にドイツ空軍兵士を参加させました。同政府はこれは通常のNATO作戦への参加だとして下院の承認を求めませんでした。

 これに対して保守野党の自由民主党(FDP)は、戦闘行為への参加であり、議会の承認が必要だとして、違憲訴訟を起こしていました。

 連邦憲法裁は、「交戦の可能性が具体的である場合、政府は下院の承認を求めなければならない」と判断。そのうえで、「イラクでの戦闘の開始は一般的に予測されており、NATOは遅くとも〇三年三月十八日までにはこうした交戦の態勢に入っていた」と認定し、「交戦の可能性は単なる抽象的なものではなかった」と断定しました。

 判決はまた、戦争か平和かの選択は下院の権限であることを確認しました。

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解説
海外軍事活動に歯止め
 ドイツ連邦憲法裁判所は七日、イラク戦争開始前後の時期におけるドイツ軍の北大西洋条約機構(NATO)軍の偵察活動への参加を違憲だとする判決を出しました。

 ドイツの憲法に当たる基本法は、第二次大戦時のナチスによる外国侵略への反省から第二六条で「侵略戦争の遂行を準備する行為は違憲である。これらの行為は処罰される」と規定。八七条a項でドイツ軍の任務を「防衛」のみに限定しています。

 しかし、一九五五年のドイツのNATOへの加盟で「防衛」の定義がNATO域内に拡大。東西ドイツ再統一後の一九九四年に連邦憲法裁判決でこの定義がさらに拡大されました。これにより、ドイツの「防衛」は、国境を守るだけでなく、危機への対応や紛争防止などの行動も指すものとされ、下院の議決による事前承認でNATO域外への派兵が認められることになりました。

 この判決後、国連の平和維持活動(PKO)への参加や旧ユーゴスラビアのボスニア・ヘルツェゴビナの欧州連合軍(EUFOR)、コソボの国際治安維持部隊(KFOR)、アフガニスタンの国際治安支援部隊(ISAF)などドイツ軍の外国での軍事活動が活発化しています。

 今回の連邦憲法裁判決はこうした動きに歯止めをかけるものです。とくにNATO域内であるトルコ上空での軍事活動をも規制するものとして注目されています。(夏目雅至)

(出所:日本共産党HP 2008年5月9日(金)「しんぶん赤旗」)
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59年の砂川裁判 -「米軍違憲」破棄へ米圧力 ・駐日大使が最高裁長官と密談/解禁文書で判明-

2008-05-01 05:51:53 | 憲法裁判
「米軍違憲」破棄へ米圧力
59年の砂川裁判 一審判決直後 解禁文書で判明
駐日大使 最高裁長官と密談

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 安保条約にもとづく在日米軍の駐留を憲法違反とした一九五九年の砂川事件・伊達判決に対し、米駐日大使が当時の最高裁長官と「内密の話し合い」をもつなど、判決破棄へ圧力をかけていたことが米政府解禁文書で明らかになりました。国際問題研究者の新原昭治氏が今月、米国立公文書館で入手したもの。米軍駐留違憲判決に対する米側の衝撃ぶりと、干渉を無批判に受け入れる日本側の異常な対米従属ぶりが分かります。

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 一九五九年三月三十日の砂川事件の一審判決(東京地裁)で伊達秋雄裁判長は、安保条約のもとで米軍が「極東」に出動することは、日本を直接関係のない戦争に巻き込むおそれがあり、また保持を禁じた「戦力」にあたるとして、米軍駐留は憲法前文、九条二項違反とする判決を出しました。解禁文書は判決当日から最高裁での弁論終了後の九月十九日まで、当時のマッカーサー米駐日大使から国務省あてを中心にした十四通の電報です。

 伊達判決の翌日には、米大使が藤山愛一郎外相に閣議前の早朝に秘密会談を申し入れ。当時進行中だった安保条約の改定交渉への影響や、東京・大阪など重要知事選前に「大衆の気持ちに混乱を引き起こしかねない」ことに強い懸念を表明しました。大使は「日本政府が迅速な行動をとり東京地裁判決を正すこと」を求め、過去に一例しかなかった最高裁への「跳躍上告」を提案しました。日本政府は部内で検討していた経過もあり四月三日に跳躍上告しました。

 四月二十四日付では、米大使と当時の田中耕太郎最高裁長官との「内密の話し合い」を明記。田中長官は「本件には優先権が与えられているが…決定に到達するまでに少なくとも数カ月かかる」との見通しを伝えています。

 最高裁は、当時三千件もの案件を抱えていましたが、砂川事件を最優先処理。電報の五日後には最高裁が弁護人を二十一人に制限するとの決定を下すなど、「迅速な決定」へ異常な訴訟指揮をとりました。最高裁は同年十二月十六日、一審判決を破棄、東京地裁に差し戻しました。

司法の独立 侵した
 砂川事件上告審で弁護団事務局長を務めた内藤功弁護士の話 一九五九年五月一日、団長の海野晋吉弁護士と一緒に、最高裁の斎藤悠輔裁判官と面会した。斎藤裁判官は「ジラード事件で米側が日本の裁判権を認めてくれた手前もあるので、この(砂川)事件は早くやらないといけない」と語った。きわめて異例である弁護人の人数制限も田中耕太郎最高裁長官と斎藤裁判官らがやったことだが、その裏で長官がじかに米駐日大使と「内密の話し合い」をしていたとは司法の独立からも由々しき事態だ。

 伊達判決から五十年近くたつが、日米安保条約はいよいよ「日本の防衛」と関係のない戦争に米軍が出動するためのものになっている。安保条約のもとでの米軍駐留が憲法前文と九条違反だとした伊達判決は過去のものという感じがしない。今回の文書発見が伊達判決再評価のきっかけになればと思う。

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 砂川事件 一九五七年七月、東京都砂川町(現立川市)で米軍立川基地拡張に反対する労働組合員や学生などが基地内民有地の測量に抗議して敷地内に数メートル立ち入ったとして、二カ月後に逮捕。安保条約に基づく刑事特別法違反で起訴されたもの。一審では無罪、最高裁で破棄差し戻しされ、罰金刑に。しかし反対闘争の前に米側は基地拡張を断念、七七年立川基地は返還されました。

 跳躍上告 地方裁判所などの一審判決に対し、法律・命令・規則もしくは処分が憲法違反とした判断、あるいは地方公共団体の条例・規則が違法とした判断が不当であることを理由に、直接最高裁に上告すること(刑事訴訟規則第二五四条)。

59年の砂川事件・伊達判決
米軍違憲判決後の米の圧力
最高裁にまで手をのばす

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「東京地裁の伊達判決は、政府内部でもまったく予想されておらず、日本国内に当初どきっとさせるような衝撃を広げた」―。在日米軍の駐留を憲法違反とした伊達判決(一九五九年)に関する米政府解禁文書は、日米支配層が違憲判決にいかに驚愕(きょうがく)したかが生々しく描かれています。今月十七日、名古屋高裁によるイラク派兵違憲判決が出たばかりでもあり、支配層の反応を考えるうえで非常に示唆的です。

 伊達判決で日米支配層が恐れたのは、(1)同年四月の重要知事選や夏の参院選などへの政治的影響(2)日米安保条約改定交渉を複雑にしかねない(3)左翼勢力に法的対抗手段を与えかねない―などです。そのために、最高裁で早期に判決を下し、伊達判決を否定することに躍起となりました。

 なかでも重大なのは、米側が行政府ばかりか最高裁にまで内政干渉の手をのばしたことです。

 当時のマッカーサー米駐日大使と「内密の話し合い」をもった田中耕太郎裁判官は当時の最高裁長官。米軍駐留をめぐる裁判で米側責任者と事前に話し合うなど、司法の独立を放棄する最悪の行為です。しかも、田中長官は、弁護団からの協議要請はことごとく拒否し、裁判官忌避を申し立てられました。弁護人とは会わず、米大使と密談していたのですから、対米従属も極まれりです。

 「内密の話し合い」電報の五日後には、最高裁が「本件の審判を迅速に終結せしめる必要上」として、弁護人の人数制限という前代未聞の決定を強行。弁護団のたたかいで人数制限は撤回したものの、判決では、米側が期待したとおり、一審の違憲判決を正面から覆し、安保条約・米軍駐留に合憲のお墨付きを与えました。

 しかし、検事総長までくりだした検察側の弁論に対し、弁護団の中から二十六人が堂々と安保条約の違憲性を論証。当時の『法律時報』(一九六〇年二月臨時増刊号)の記者座談会では、「弁護側は非常に多数繰り出してぼくたちが聞いていても、非常に論理整然とした弁論があったんだけれど、その結果ふたをあけてみると、破棄差し戻し」として判決を批判しています。

 さらに解禁文書は、安保条約のもとで日本が出撃基地とされていた危険な実態も示しました。

 最高裁の弁論で内藤功弁護士が在日米軍の存在が九条に違反することの実証として、一九五四年のインドシナ危機と一九五八年の台湾海峡危機の際、日本の基地から出撃したと指摘しました。

 米解禁文書では、この弁論への対応について米大使と国務長官とのやりとりが収められています。そこでは米国務長官が「台湾海峡危機のさいの米『軍』に、日本に出入りしている部隊が含まれていなかったという言い方は、日本から沖縄や台湾に移った海兵航空団や第五空軍部隊の移動からみて不正確なものとなろう」「(日本の)基地は実際に使われた」とのべています。

 日米安保条約をもとにした日米軍事同盟はその後、安保共同宣言、新ガイドライン(軍事協力の指針)、在日米軍再編合意と、世界的規模に拡大。日本の米軍基地は先制攻撃戦略を支える拠点としてより危険を増しています。その意味からも日本の基地を出撃拠点として使ったとの証言は重大です。(藤田健)

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砂川事件・伊達判決に関する
米政府の解禁文書(抜粋)

 国際問題研究者の新原昭治氏が入手した砂川事件・伊達判決(一九五九年)に関する米政府解禁文書の主要部分を紹介します。電報は一通をのぞきマッカーサー米駐日大使から米国務省あてです。


 ■「部外秘」
 1959年3月30日午前6時52分受信
 夜間作業必要緊急電

 伊達秋雄を主任裁判官とする東京地方裁判所法廷は本日、…「…米軍の駐留は……憲法に違反している」と宣言した。

 (中略)

 当地の夕刊各紙はこれを大きく取り上げており、当大使館はマスメディアからさまざまの性格の異なる報道に関した数多くの問い合わせを受けている。外務省当局者と協議の後、これら問い合わせには、「日本の法廷の判決や決定に関して当大使館がコメントするのはきわめて不適切であろう…」むね答えている。在日米軍司令部もマスメディアの問い合わせに同様の回答をしている。

 (後略)

 ■「極秘」
 1959年3月31日午前1時17分受信
 至急電

 今朝八時に藤山(外相)と会い、米軍の駐留と基地を日本国憲法違反とした東京地裁判決について話し合った。私は、日本政府が迅速な行動をとり東京地裁判決を正すことの重要性を強調した。私はこの判決が、藤山が重視している安保条約についての協議に複雑さを生みだすだけでなく、四月二十三日の東京、大阪、北海道その他でのきわめて重要な知事選挙を前にしたこの重大な時期に大衆の気持ちに混乱を引きおこしかねないとの見解を表明した。

 (中略)

 私は、もし自分の理解が正しいなら、日本政府が直接、最高裁に上告することが非常に重要だと個人的には感じている、…上告法廷への訴えは最高裁が最終判断を示すまで論議の時間を長引かせるだけだからであると述べた。これは、左翼勢力や中立主義者らを益するだけであろう。

 藤山は全面的に同意すると述べた。…藤山は、今朝九時に開催される閣議でこの行為を承認するように勧めたいと語った。

 ■「部外秘」
 1959年4月1日午前7時06分受信
 至急電

 日本における米軍の駐留は憲法違反と断定した東京地裁の伊達判決は、政府内部でもまったく予想されておらず、日本国内に当初どきっとさせるような衝撃をひろげた。

 (中略)

 岸(首相)は、政府として自衛隊、安保条約、行政協定、刑事特別法は憲法違反ではないことに確信を持って米国との安保条約改定交渉を続けると声明した。

 ■「秘」
 1959年4月1日午前7時26分受信
 至急電

 藤山(外相)が本日、内密に会いたいと言ってきた。藤山は、日本政府が憲法解釈に完全な確信をもっていること、それはこれまでの数多くの判決によって支持されていること、また砂川事件が上訴されるさいも維持されるであろうことを、アメリカ政府に知ってもらいたいと述べた。法務省は目下、高裁を飛び越して最高裁に跳躍上告する方法と措置について検討中である。最高裁には三千件を超える係争中の案件がかかっているが、最高裁は本事件に優先権を与えるであろうことを政府は信じている。とはいえ、藤山が述べたところによると、現在の推測では、最高裁が優先的考慮を払ったとしても、最終判決をくだすまでにはまだ三カ月ないし四カ月を要するであろうという。

 (中略)

 一方、藤山は、もし日本における米軍の法的地位をめぐって、米国または日本のいずれかの側からの疑問により(日米安保)条約(改定)交渉が立ち往生させられているような印象がつくられたら、きわめてまずいと語った。

 そこで藤山は、私が明日、藤山との条約交渉関連の会談を、事前に公表のうえ開催することを提案した。(後略)

 ■「秘」
 1959年4月24日午前2時35分受信

 最高裁は四月二十二日、最高検察庁による砂川事件の東京地裁判決上告趣意書の提出期限を六月十五日に設定した。これにたいし、弁護側はその立場を示す答弁書を提出することになる。

 外務省当局者がわれわれに知らせてきたところによると、上訴についての全法廷での審議は、恐らく七月半ばに開始されるだろう。とはいえ、現段階では決定のタイミングを推測するのは無理である。内密の話し合いで担当裁判長の田中(耕太郎。当時の最高裁長官)は大使に、本件には優先権が与えられているが、日本の手続きでは審議が始まったあと、決定に到達するまでに少なくとも数カ月かかると語った。

 ■「秘」
 1959年5月22日受領

 砂川事件は引き続きかなりの大衆的関心を惹きつけており、新聞は関連するすべてのニュースを目立つ形でとりあげている。(中略)

 …弁護側は事件の七人の被告を弁護するために一千人の弁護士を集めると豪語している〔日本の裁判では、理論的には、どちらの側の弁護士にも人数の制約はない〕。全体法廷での審議の予備的打ち合わせをする(本件の)第一小法廷齋藤悠輔主任裁判官は、これを阻止する決定をくだし、弁護士を一人の被告につき三人以下とした。この弁護士制限決定は、多くの評論家や朝日新聞を含む新聞から非難されている。

 弁護士の人数を制限するこの決定を擁護して、斎藤(判事)はこの決定により最高裁の上告審議が促進されると発表、きわめて重要な意味を持っているので最高度の優先度を与えたためにそうしたと説明した。新聞報道によれば、斎藤はこのほか、最高裁は米最高裁がジラード事件について迅速に決定したことを、砂川事件上告の処理を取り急ぎおこなう先例として重視していると述べるとともに、最高裁はこの事件の判決を八月におこなうだろうと予測したとのことである。

 ■「部外秘」
 1959年9月13日午前1時10分受信
 至急電

 外務省当局者がわれわれに知らせてきたところによると、(最高裁での)砂川裁判の弁護側は、予想通り日本を基地とする米艦隊が一九五四年五月にインドシナ半島沖海域で、また一九五八年の台湾海峡危機のさい金門・馬祖両島周辺で作戦行動をおこなったと申し立てた。

 われわれは九月七日、わが方のコメント(関連電報)を外務省当局者に伝え、かつそれを注意深く吟味した。外務省当局者は、それらのコメントをまだ検察事務所には届けておらず、届けるのを躊躇していると知らせてきた。その理由は、(関連電報の)1/2項は日米安保条約下で日本に出入りしている艦隊部隊が一九五四年五月に南シナ海に行ったことを明確に否定しているものの、第II部の台湾海峡関連ではそうした否定がなされていないからである。外務省当局者は、南シナ海部分だけの否定では、台湾海峡に関する別の定式化に注意を惹きつけることにならざるを得ず、弁護側から日米安保条約関係への新たな攻撃を受けることになるだろうと見ている。

 (中略)

 恐らく国務省は、このテーマ(11/3A)の質問が「兵力」と言っていてインドシナ半島問題にあるような「艦隊」FLEET に言及していないため、それを承認しなかったのだろう。…もし11/3項について1/2項と本質的に同様の否定を伝えることができれば、この点の回答は九月十五日までに必要である。どうか可能な限り迅速な返事を願いたい。

 ■(国務長官から米大使館へ)「秘」
 1959年9月14日午後9時28分発信
 至急電

 関連電報の最後のパラグラフ、第一センテンスは、部分的には正しい。台湾海峡危機のさいの米「軍」に、日本に出入りしている部隊が含まれていなかったという言い方は、日本から沖縄や台湾に移った海兵航空団や第五空軍部隊の移動から見て不正確なものとなろう。海兵航空団も第五空軍部隊も第七艦隊所属部隊とはみなされないから、この声明は第七艦隊についてはなしえても、これに続く日本の基地の使用の否定は、事実に照らして台湾海峡作戦の場合には正しくないだろう。というのは、基地は実際に使われたからだ。

 (後略)

 ハーター(国務長官)

 ■「部外秘」
 1959年9月19日発信/9月21日受領

 左翼弁護士たちは、最高裁における砂川事件の弁論の最後の四期日を、安保条約と日本の西側陣営との同盟への手当たり次第の攻撃に費やした。弁論開始日に検察側と弁護側がともに発言をおこなったのとは対照的に、弁護側だけが連続四期日ぶっとおしで発言した〔九月九日、十一日、十四日、十六日〕。

 弁護団の攻撃のほこ先は最初、安保条約が国連憲章と日本国憲法に違反することの論証の試みに集中した。弁護側はこれをするにあたって、安保条約を法的観点から正しくないと追及するだけでなく、アメリカと日本の意図を非難して同条約は日本の滅亡への道であると示そうとした。

 (中略)

 総評弁護団の弁護士(=内藤功弁護士)は、検察側がおこなったように、米軍は日本政府の管理下にないから米軍の駐留は合憲だと主張するのは筋違いだと述べた。同弁護士は海上自衛隊艦船はソ連の潜水艦を追跡する目的のため第七艦隊の作戦行動に参加してきていると主張し、在日米軍は日本の軍事力を「まさしく代表しており」、この状況は日本民族の滅亡への道であると論評した。

 (後略)

(出所:日本共産党HP 2008年4月30日(水)「しんぶん赤旗」)
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日弁連が名古屋高裁判決を受け、イラクからの自衛隊全面撤退を求める会長声明を発表

2008-04-25 05:59:43 | 憲法裁判
日弁連が憲法シンポ
空自のイラク撤退求める

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 憲法記念日を前に、在日米軍や自衛隊の実態から憲法九条を考えようと、日本弁護士連合会が二十二日、東京都内で集会を開き、テレビ中継で結んだ各地の弁護士会の会場も含め、多くの市民、法律家が参加しました。

 日弁連の宮崎誠会長は主催者あいさつで、航空自衛隊のイラク空輸活動を憲法九条違反とした十七日の名古屋高裁判決を「憲法判断にふみこんだ画期的判決」と高く評価。判決を受け、政府にイラクからの自衛隊全面撤退を求める会長声明を発表したことを紹介しました。

 パネルディスカッションに参加した沖縄県宜野湾市の伊波洋一市長は、二月の中学生暴行事件をはじめ米軍人の犯罪や米軍普天間基地の被害をあげ、「沖縄の米軍は憲法が入り込めない存在として置かれている」と告発。「基地撤去こそが沖縄県民の人権回復につながる」とのべました。

 九条改憲の背景にある日米同盟強化の実態、米国内の人権蹂躙(じゅうりん)の状況などが議論され、小沢隆一東京慈恵会医科大学教授は、米の戦争に加担する九条改憲ではなく「世界でいちばん危険な軍事同盟=日米安保の廃棄にいま向かうべきだ」とのべました。

(出所:日本共産党HP  2008年4月23日(水)「しんぶん赤旗」)

名古屋高裁自衛隊イラク派遣差止訴訟判決に関する会長声明

昨日、名古屋高等裁判所は、いわゆる自衛隊イラク派遣差止訴訟判決において、航空自衛隊がアメリカからの要請によりクウェートからイラクのバグダッドへ武装した多国籍軍の兵員輸送を行っていることについて、バグダッドはイラク特措法にいう「戦闘地域」に該当し、この兵員輸送は他国による武力行使と一体化した行動であって、自らも武力の行使を行ったとの評価を受けざるを得ない行動であると判断した。そして、憲法9条についての政府解釈を前提とし、イラク特措法を合憲とした場合であっても、この兵員輸送は、武力行使を禁じたイラク特措法2条2項、活動地域を非戦闘地域に限定した同法同条3項に違反し、かつ憲法9条1項に違反するとの判断を示した。

そのうえで判決は、原告個人が訴えの根拠とした憲法前文の平和的生存権は、全ての基本的人権の基礎にあってその享有を可能ならしめる基底的権利であり、単に憲法の基本的精神や理念を表明したにとどまるものではなく、憲法上の法的な権利として、その侵害に対しては裁判所に対して救済を求めることができる場合がある具体的な権利であると判断した。

当連合会は、自衛隊をイラクへ派遣することを目的とするイラク特措法について、これが国際紛争を解決するための武力行使および他国領土における武力行使を禁じた憲法に違反するおそれが極めて大きいものであることにより反対であることを明らかにしてきた。そのうえで、自衛隊の派遣先がイラク特措法が禁じる「戦闘地域」であることも指摘し、繰り返しイラクからの撤退を求めてきた。

当連合会は、このたびの名古屋高等裁判所の判決について、当連合会のかねてからの主張の正しさを裏付けるものであるとともに、憲法前文の平和的生存権について具体的権利性を認めた画期的な判決として高く評価するものである。ここにあらためて政府に対し、判決の趣旨を十分に考慮して自衛隊のイラクへの派遣を直ちに中止し、全面撤退を行うことを強く求めるものである。

2008(平成20)年4月18日

日本弁護士連合会
会長 宮 誠

(出所:日本弁護士連合会HP)
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イラク派兵違憲判決-自民党と公明党は自衛隊を即時撤退させよー

2008-04-25 05:55:50 | 憲法裁判
主張
イラク派兵違憲判決
国は自衛隊を即時撤退させよ

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 イラクで航空自衛隊がおこなっている米軍への空輸支援を違憲とする名古屋高裁の判決に、政府は不服従の姿勢をむきだしにしています。

 福田康夫首相は「裁判のためどうこうする考えはない」とのべ、町村信孝官房長官や石破茂防衛相もあくまでイラク派兵を継続するといっています。判決が憲法九条違反だといっているのに耳を貸さないのは、行政の横暴であり、法治国家としての基本を政府みずからふみにじる行為です。憲法九条に背を向ける政府の態度を許すわけにはいきません。

空輸支援は九条違反
 名古屋高裁の青山邦夫裁判長(高田健一裁判長代読)は、航空自衛隊がイラクでおこなっている米軍への空輸支援が「憲法九条一項に違反する活動を含んでいる」と断じました。イラク特措法にさえ「違反」していると認めました。憲法が保障する平和的生存権についても「具体的権利性がある」とのべました。判決は道理の通った画期的なものです。

 判決は、イラク派兵を強行するさいに政府がもちだした根拠を、政府の憲法解釈にもとづいて否定したことが特徴です。

 判決は、イラク情勢を二〇〇三年三月のイラク攻撃の延長であり、「外国勢力である多国籍軍対イラク国内の武装勢力の国際的な戦闘」だといっています。政府は、治安は悪いがイラク全土が戦闘地域とはいえないといって陸自を南部に派兵し、空自の活動地域をバグダッドに拡大してきました。判決は、この政府の言い分が詭弁(きべん)にすぎないことをあきらかにしたものです。

 判決がバグダッドを「人を殺傷し又は物を破壊する行為が現におこなわれている地域」とのべたのは、とくに重要です。バグダッドを非戦闘地域として、空自の輸送機をバグダッド飛行場に離着陸させている政府の説明が通用しないことを認めているのです。バグダッドが戦闘地域であるのは、輸送機が常におとりの熱源体「フレア」を発射しながら着陸せざるをえない実態をみても明白です。非戦闘地域だからという派兵合法化論はもはや通用しません。

 判決は多国籍軍への空輸支援を、米軍の「武力行使と一体化した行動」「自らも武力行使を行ったとの評価を受けざるを得ない」といっています。空自が米兵や軍事物資をバグダッドに空輸する結果、米軍は補充米兵など新たな戦力を手に入れることになります。それによって米軍は戦闘活動を続けることができるのです。自衛隊の空輸支援活動が米軍の武力行使と一体化しているのは否定のしようがありません。他国の武力行使と一体化する活動は憲法違反というのが政府見解です。判決は当然のことをいっているにすぎません。

 判決が憲法前文にある平和的生存権についても大きく前進させたことは重要です。平和的生存権がたんなる理念でなく法的な権利として認められるべきで、違憲行為を裁判に訴えることができる具体的な権利だとしたことは、こんごの国民のたたかいにとって大きな意味を持ちます。

判決を武器に
 判決は、イラク派兵反対、自衛隊の即時撤退要求が憲法にそった正当な要求であることを認めました。政府は判決で示された違憲判断を尊重すべきです。

 裁判所の違憲判断が示されてもなお、派兵に固執する政府をおいつめ、航空自衛隊のイラクからの撤退と派兵拡大をねらう恒久法などの策動を阻止することこそ、国民の平和の願いにこたえる道です。

(出所:日本共産党HP 2008年4月19日(土)「しんぶん赤旗」)

司法判断に従い撤退を
イラク派兵 赤嶺議員が求める

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 日本共産党の赤嶺政賢議員は十八日の衆院外務委員会で、名古屋高裁の判決(十七日)が航空自衛隊のイラクでの空輸活動について、憲法違反と判断を下したことを示し、「政府は、この司法判断に従い、自衛隊をイラクから撤退させるべきだ」と求めました。

 高村正彦外相は、違憲との司法判断について「納得できるものではない」と主張。違憲判断部分は「(判決のなかの)傍論だ」と述べ、あくまで派兵を継続する考えを示しました。

 しかし判決は、イラクの現状について「国際的な武力紛争が行われている」とし、バグダッドについても「イラク特措法にいう『戦闘地域』に該当する」と認定。空自による多国籍軍兵員のバグダッドへの空輸について「他国による武力行使と一体化した行動」だとしています。

 赤嶺氏は、これらを示し、「『傍論だ』といって片付けるわけにはいかない。明確な違憲判断であり、政府は尊重すべきだ」と、重ねて自衛隊の撤退を求めました。

イラク派兵違憲判決 運動に生かそう
原告と市田氏ら懇談

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 「自衛隊イラク派兵差止訴訟」の原告団・弁護団の代表が十八日、国会内の日本共産党控室を訪れ、市田忠義書記局長らに、前日、名古屋高裁が出した違憲判決の内容と意義について報告し、懇談しました。歴史的な成果を土台に、たたかいを強めていく決意を固めあいました。

 弁護団事務局長の川口創弁護士は、今回の判決について、裁判所がイラク戦争と占領、航空自衛隊の輸送活動の実態、派兵をめぐる政府解釈について詳しく検討した上で、憲法九条一項にもイラク特措法にも反すると明確に判断したと強調しました。平和的生存権についても、具体的権利となる場合を正面から認めたものだと指摘しました。

 また「裁判所の勇気ある決断を国会で生かし、憲法九条が実現される社会をつくる方向で、お互いにがんばりたい」と表明しました。

 原告の一人で「自衛隊イラク派兵差止訴訟の会」の池住義憲代表は、支持政党や宗教などの違いを超えて全国で運動が広がったことが大きな力となったと力説しました。

 市田書記局長は、「文字通り、画期的な判決でした」「原告・弁護団の奮闘と、それを支えた、憲法を守りたいという広範な世論の勝利です」とのべました。

 そのうえで「われわれはイラク特措法そのものが違憲だと考えているが、イラクでの自衛隊の行動が政府の憲法解釈からいっても間違っているという判断を真正面から下した判決だった」と強調。また、「平和的生存権を具体的権利として認めたことも重要だ」と指摘しました。自衛隊を撤退させ、恒久法づくりを阻止する上で「大きな武器になる」として「これを力にしながら、大いにがんばりたい」とのべました。

 懇談には、弁護団事務局次長の田巻紘子弁護士と、日本共産党からは穀田恵二国対委員長、井上哲士参院国対委員長、山下芳生、仁比聡平の両参院議員が同席しました。

(出所:日本共産党HP 2008年4月19日(土)「しんぶん赤旗」) 
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イラク輸送違憲:空幕長「関係ねえ」会見で隊員の心境代弁/名古屋高裁判決に「来年が潮時」の声も-

2008-04-19 01:59:43 | 憲法裁判
 イラク輸送違憲:空幕長「関係ねえ」会見で隊員の心境代弁

 航空自衛隊トップの田母神俊雄・航空幕僚長は18日の会見で、前日の名古屋高裁の違憲判決がイラクに派遣中の隊員に与える影響について尋ねられ、有名お笑いタレントの流行語を引用して「私が心境を代弁すれば『そんなの関係ねえ』という状況だ」と述べ、隊員の士気に影響はないと強調した。

 田母神幕僚長は「非常に純真な隊員については、一部、心を傷つけられているかもしれない」としつつ、「大多数はほとんど影響ない」と語った。

 高裁がイラク特措法の定める「戦闘地域」に該当するとした空自の空輸先の一つ、バグダッド空港については、「予断を許さない状況だと思う。ただ自衛隊が戦いに巻き込まれる危険はない」と強調した。

 また、元文部科学相の中山成彬衆院議員(宮崎1区)は18日夜、宮崎市内で講演。名古屋高裁判決について「問題のある裁判長で、変な判決だった。3月末で辞め『最後っぺ』(おなら)を出したようなものだ」などと語った。【本多健、中尾祐児】

(出所:毎日新聞 2008年4月19日 0時12分(最終更新 4月19日 1時30分)

イラク輸送違憲:空自幹部「士気に影響出ねばいいが」
 
 防衛省や自衛隊では17日、名古屋高裁判決に驚きと失望の声が上がった。増田好平・防衛事務次官は「大変遺憾だが、今の時点で派遣を見直す考えはない」と強調した。

 イラク派遣は03年から始まった。航空自衛隊は隣国クウェートからイラクの▽バグダッド▽アリ▽エルビルの3空港に多国籍軍の人員・物資を週4、5回輸送している。大型のC130輸送機を持つ小牧基地(愛知県)を中心に延べ約3200人が派遣された。

 空自幹部は「インド洋の給油活動に派遣された海上自衛隊の司令官が『憲法違反と言われた一国民として我々にも意地と誇りがある』と話していたのを思い出した」と残念そう。別の幹部は「現地の士気に影響が出なければいいが」と心配した。防衛省幹部は「(イージス艦衝突事故などの)一連の不祥事が沈静化しただけに、新たな国政の火種にならなければいいが」と話した。

 2日前の15日には約100人の交代要員が現地に向かった。イラクでは空色に塗装した自衛隊の輸送機が「幸福の青い鳥」と呼ばれており、それをPRするフィルムを日本の電車内のテレビなどで放映したばかりだった。【本多健】

(出所:毎日新聞 2008年4月17日 23時56分)

イラク輸送違憲:名古屋高裁判決に「来年が潮時」の声も

 イラク派遣の航空自衛隊による多国籍軍兵士の輸送を違憲と認定した名古屋高裁判決に対し、政府内では18日も「傍論だ」と事実上黙殺する発言が相次いだ。輸送対象の多くが兵士である可能性もある中で判決は、「国際協力」の名のもとにあいまいな輸送の実態を「武力行使との一体化」と認定した。政府はこれまで国会答弁で「合憲」としてきたが、説明のあいまいさを判決に指摘された形となった。

 空自は週4~5回、イラク-クウェート間で輸送活動に従事しているが、防衛省が公表するのは活動期間と輸送回数、輸送物資の重量だけ。兵士などの人員数や物資の詳細な内訳は非公表だ。石破茂防衛相は18日、「多くの国との協力で行っており、独自に我が国が情報公開することはなじまない」とかたくなに拒んだ。

 空輸に用いられるC130輸送機の能力と輸送回数を掛け合わせた数字から、これまでの物資の輸送実績を差し引くと、大きな「空白」が生じる。「武装兵員を定期的、確実に輸送している」と指摘した判決は、こうしたあいまいな部分を突いたものだ。輸送される兵士の装備実態も不明だ。政府は、兵士が携行する小銃などは武器弾薬の輸送に当たらないとしているが、事実を示せないため説得力に欠けている。

 目前に迫る米大統領選で、イラク戦争の継続に反対する民主党に政権が交代した場合、日本の立場は微妙となる。政府関係者からは「来年7月のイラク特措法の期限切れが潮時」との声も漏れ出している。【松尾良】

(出所:毎日新聞 2008年4月18日 21時10分(最終更新 4月19日 0時10分)

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自衛隊イラク派遣は憲法違反の判決ー名古屋高裁ー

2008-04-19 01:36:41 | 憲法裁判
自衛隊イラク派遣:イラク活動、一部違憲判断 「実質、完全勝訴だ」

 ◇原告団、喜び全開「速やかに撤退を」

 市民3000人以上が原告となった自衛隊イラク派遣差し止め訴訟の控訴審判決。航空自衛隊による多国籍軍の空輸活動を違憲とした名古屋高裁の判決に、原告団は「歴史に残る画期的な判決」と喜びを分かち合った。自衛隊のイラク派遣開始から4年半。混迷するイラク情勢を踏まえ、原告団は「司法判断を重んじ、速やかに政府は撤退を決断すべきだ」と語気を強めた。【式守克史】

 「司法はまだ生きていることを感じた。勇気のある判決だ」。04年2月の提訴から4年。判決後に開かれた原告団の報告集会で、内河恵一弁護団長は涙ぐんだ。

 憲法判断に踏み込まなかった1審・名古屋地裁判決に、憤りを抱いて控訴審に臨んだ原告団。06年から始まった審理では、軍事史や憲法問題の専門家の証人尋問を行ったり、空自の空輸活動のDVDを法廷で放映するなどして、イラク派遣の違憲性を主張してきた。

 原告団長で大学講師の池住義憲さん(63)は「憲法9条を持つ国に生きている人間として誇りを持って語れる判決」と喜び、「私たちの行動は今日から始まる。この判決を使って、どのように違憲行為を止めるかだ」と話した。

 集会には原告の一人で元レバノン大使の天木直人さん(60)も参加。「法廷でこの判決を一字一句聞いた。一原告として元官僚として今日の判決は実質的な完全勝訴だ」とかみしめるように語った。

 集会の会場には「画期的判決」「平和的生存権を認める」などと書かれた幕が張られ、弁護団が説明をするたびに、参加者から大きな拍手がわき上がった。山梨から原告団として参加した男性は「非常に感無量です」と涙声で語り、大阪から来た女性も「涙が出てとまらない。本当に参加してよかった」と話した。

 ◇最後の判決文 先月、依願退官--青山裁判長

 自衛隊のイラク活動の一部を違憲と判断した青山邦夫裁判長は66年司法試験に合格。福井地裁判事補を振り出しに、94年名古屋地裁民事7部の部総括判事、01年金沢地裁所長を歴任し、03年1月から名古屋高裁民事3部の部総括判事を務めていた。今年6月の定年を前に、今回の判決文を書いたのを最後に3月31日に依願退官した。

 名古屋地裁の部総括判事として中華航空機墜落事故(94年)をめぐる訴訟の審理を途中まで指揮し、96年の口頭弁論で航空機事故の賠償について規定した改正ワルソー条約に基づく裁判の管轄権が日本にあるとの判断を事実上示した。

 一方、名古屋高裁の部総括判事としては04年1月、核燃料サイクル開発機構が放射性廃棄物の処分地選定調査に関する文書を不開示とした処分の取り消しを命じた1審判決を破棄し、差し戻す判決を言い渡した。07年6月には、太平洋戦争末期に名古屋市の軍需工場に「女子勤労挺身(ていしん)隊員」として動員された韓国人女性らが国と三菱重工業に損害賠償などを求めた訴訟で、動員を強制連行と認定する一方、原告側の控訴を棄却した。【石原聖】

 ◇「画期的」「勇み足」--専門家

 今回の名古屋高裁判決について専門家の反応は「画期的」「勇み足」と分かれた。

 浦部法穂(のりほ)・名古屋大法科大学院教授(憲法学)は「小泉元首相は『自衛隊が行く所が非戦闘地域』などと言っていたが、そうしたイラク特措法制定過程のごまかしを法的な観点から突いた論理的な判断」と評価した。

 小沢隆一・東京慈恵会医科大教授(憲法学)も「イラク特措法が合憲だという政府よりの解釈をしても、自衛隊の空輸活動は違憲だとするのは画期的。政府は判決を厳粛に受け止め、反省してほしい」と評価した上で「差し止め請求自体が却下されているのは残念だ」と述べた。

 これに対し、百地章・日本大法学部教授(憲法学)は「原告の訴えを退けながら原告の政治的主張を認めたねじれ判決だ」と批判。「自衛隊派遣は自衛隊の合憲性とともに国の存立にかかわる高度な政治的問題で、判決で国家の統治行為に踏み込むのは司法の勇み足であり支持できない。また国は上告できないため、最高裁の判断が示される機会が奪われており、違憲審査制度のあり方から見ても問題がある」と疑問を示した。【飯田和樹、中村かさね、木村文彦】

==============

 ■解説

 ◇海外活動拡大に一石

 航空自衛隊による多国籍軍の空輸活動を明確に違憲と指摘した名古屋高裁判決は、憲法論議をあいまいにしたまま拡大を続ける自衛隊の海外活動に疑問を投げかけた。一方で、判決は原告の控訴を棄却し、政府も早々と派遣を見直す考えはないことを表明したことから当面の“実効性”はない。それでも、自衛隊に関する憲法判断を避けてきた司法が、踏み込んだ指摘をした意味は重い。

 同様の訴訟は全国11地裁に起こされたが、原告敗訴が続いた。いずれも自衛隊イラク派遣は原告の具体的な権利、義務に直接影響を及ぼすものでないとして門前払いした。

 今回の判決も結論への道筋では同様の判断をしている。しかし、憲法9条の政府解釈やイラク特別措置法の規定に基づき、自衛隊のイラクでの活動実態を詳細に検討したのが画期的だ。「自衛隊が行く所が非戦闘地域」と繰り返してきた政府に対し「首都バグダッドでは一般市民にも多数の犠牲者が出ており『戦闘地域』だ」と認定した。

 自衛隊を巡る訴訟で過去に憲法判断に踏み込んだ判決は、自衛隊の存在を違憲とした73年の「長沼ナイキ基地訴訟」の札幌地裁判決があるくらいだ。さらに、今回の判決は原告が主張した「平和的生存権」についても、国の武力行使などで個人の生命や自由が侵害される場合は、裁判所に保護や救済を求められる具体的な権利と認める異例の判断をした。

 憲法改正の議論に加え、自衛隊海外派遣の要件を定める恒久法に向けた論議も活発化している。名古屋高裁は自衛隊の活動に関する国民的議論に向け、問題提起したと言える。【式守克史、北村和巳】

(出所:毎日新聞 2008年4月18日 東京朝刊)

イラク輸送違憲:原告「政府は撤退決断を」「実質勝訴だ」

名古屋高裁で空自イラク活動が違憲と判断され涙を流す原告ら=名古屋市中区で2008年4月17日午後2時48分、小林努撮影 市民3000人以上が原告となった自衛隊イラク派遣差し止め訴訟の控訴審判決。航空自衛隊による多国籍軍の空輸活動を違憲とした名古屋高裁の判決に、原告団は「歴史に残る画期的な判決」と喜びを分かち合った。自衛隊のイラク派遣開始から4年半。混迷するイラク情勢を踏まえ、原告団は「司法判断を重んじ、速やかに政府は撤退を決断すべきだ」と語気を強めた。

 「司法はまだ生きていることを感じた。勇気のある判決だ」。04年2月の提訴から4年。判決後に開かれた原告団の報告集会で、内河恵一弁護団長は涙ぐんだ。

 憲法判断に踏み込まなかった1審・名古屋地裁判決に、憤りを抱いて控訴審に臨んだ原告団。06年から始まった審理では、軍事史や憲法問題の専門家の証人尋問を行ったり、空自の空輸活動のDVDを法廷で放映するなどして、イラク派遣の違憲性を主張してきた。

 原告団長で大学講師の池住義憲さん(63)は「憲法9条を持つ国に生きている人間として誇りを持って語れる判決」と喜び、「私たちの行動は今日から始まる。この判決を使って、どのように違憲行為を止めるかだ」と話した。

 集会には原告の一人で元レバノン大使の天木直人さん(60)も参加。「法廷でこの判決を一字一句聞いた。一原告として元官僚として今日の判決は実質的な完全勝訴だ」とかみしめるように語った。

 集会の会場には「画期的判決」「平和的生存権を認める」などと書かれた幕が張られ、弁護団が説明をするたびに、参加者から大きな拍手がわき上がった。山梨から原告団として参加した男性は「非常に感無量です」と涙声で語り、大阪から来た女性も「涙が出てとまらない。本当に参加してよかった」と話した。【式守克史】

(出所:毎日新聞 2008年4月17日 23時52分(最終更新 4月18日 0時29分)

 自衛隊イラク派遣:輸送違憲 市民ら評価の声「勇気ある判決」 /石川

 ◇名古屋高裁「空自イラク活動は違憲」--隊員「粛々と任務に当たるのみ」
 航空自衛隊のイラクでの活動を憲法9条違反と判断した17日の名古屋高裁判決。現地へ隊員を派遣する小松基地(小松市)では「粛々と任務に当たるのみ」と強調する一方、9条堅持を訴える市民、同基地爆音訴訟の元原告らからは「勇気ある判決」と評価する声が一斉に上がった。【野上哲、栗原伸夫】

 ◆小松基地

 イラクへ隊員を派遣している航空自衛隊小松基地(小松市、隊員約1600人)。03年末に先遣隊、04年1月の1次隊をはじめ、今年3~4月に出発した15次隊まで、延べ隊員81人を送り出した。それぞれ任務期間は3~4カ月。小牧基地(愛知県)などからの隊員とともに、現在も7人が現地で活動している。

 同基地の木村広吉・渉外室長(2等空佐)は「ニュースで確認した。ただ、判決について直接コメントはできない」と戸惑った様子。そのうえで「私たちはシビリアンコントロールの下で、命令に従い、粛々と任務に就くのみだ」と話し、基地内では冷静に受け止めていることを強調した。

 ◆爆音訴訟の原告

 四大基地訴訟の一つ、小松基地爆音訴訟で原告だった湯浅治男さん(75)=小松市=は、米軍駐留が憲法9条に違反すると判断した「伊達判決」(1959年)を引き合いに、「大変勇気のある見解だと思う」と興奮した様子で話した。

 この日、昼過ぎのテレビの速報で知ったという湯浅さんは「予期しなかったので、一瞬目を疑った」と語る。判決が派遣の差し止めを却下した点については「もう一歩だった。残念だ」としながらも、「司法がこのような判断を下し、とても勇気づけられた」と話した。

 ◆九条の会

 憲法9条堅持を訴える「九条の会・石川ネット」事務局の板坂洋介さん(64)=金沢市=は「これまで憲法を避けていた裁判所が、正面から判断した。画期的な判決だ。9条の存在の大きさが改めて示された」と喜んだ。また「今やイラク戦争は過ちという世論の中で、米国は孤立している。自衛隊の活動場所は『戦闘地域』ではないと強引に派遣を進めた日本政府・与党の問題点が浮き彫りになった」と指摘した。

(出所:毎日新聞 2008年4月18日 地方版)

自衛隊イラク派遣:違憲判断 仙台訴訟原告ら「憲法の番人の責任果たした」 /宮城

 自衛隊イラク派遣差し止め訴訟で、名古屋高裁が「違憲判断」を示したことを受け、仙台で同様訴訟を起こした原告らが17日夕、緊急に会見し「裁判所が憲法の番人としての責任を果たした。画期的な判決」と評価した。

 仙台訴訟の原告弁護団の小野寺義象弁護士は「強引に戦争を進める国に司法が歯止めをかけてくれた。うれしい」と語った。

 仙台では04年、市民3人が「平和的生存権が脅かされた」として派遣差し止めと損害賠償を求め提訴。仙台地裁は「権利や法的利益のない原告らの訴えは不適法」として06年12月に訴えを退けた。仙台高裁も今年1月、控訴棄却の判決を言い渡している。【比嘉洋】

(出所:毎日新聞 2008年4月18日 地方版)

自衛隊イラク派遣:違憲判断 百里訴訟関係者、驚きと感嘆の声 /茨城

 航空自衛隊のイラク派遣を巡り違憲判断を示した16日の名古屋高裁判決に対し、かつて空自百里基地(小美玉市)を巡り、自衛隊の違憲訴訟が起こされた県内でも、関係者から驚きと感嘆の声が上がった。

 百里基地訴訟を支援した百里平和委員会(水戸市)の伊達郷右衛門事務局長(66)は「最高裁が憲法判断を避けた百里訴訟と異なり、今の社会状況が今回の判決を出させたのだと思う。判決が憲法9条を守ろうという運動の力になるのは間違いない」と語った。

 基地近くに住み、訴訟も支援した百里基地反対同盟の梅沢優さん(58)は「我々は、自衛隊の海外派兵は以前から違憲だと認識していた。画期的な判決であり、日本に民主主義は残されていると感じた」と話した。

 百里基地訴訟は、基地の用地買収に関連して、反対派住民が自衛隊が違憲だと訴えた。最高裁まで争われたが、憲法判断を回避した判決が確定した。【八田浩輔】

(出所:毎日新聞 2008年4月18日 地方版)

自衛隊イラク派遣:「米兵の輸送活動は違憲」判決 岡山訴訟の原告「画期的」 /岡山
 
 イラクへの自衛隊派遣について「米兵の輸送活動は違憲」とした17日の名古屋高裁判決を受けて、全国の地裁で唯一係争中の岡山訴訟の原告からも「画期的な判決。岡山でも期待できる」と判決を歓迎する声が上がった。

 岡山原告団は05年、1~3次にわたって計256人が提訴。1・2次を合わせた訴訟と3次訴訟に分かれて争っている。1・2次訴訟は5月に今後の日程が決まり、3次訴訟は8月に最終弁論が予定されている。河原昭文弁護団長は「(判決は)憲法9条の価値を認めており、素晴らしい判決だ。岡山では差し止めが認められるように頑張りたい」と話している。

 一方、05年にイラク・サマワでの人道支援活動に隊員3人を派遣した陸上自衛隊日本原駐屯地(奈義町)。同町議の森藤政憲さん(56)は「住民の立場に立った判決。イラク戦争の泥沼化で、日本からさらに自衛隊を派遣することになるのではと心配していた。今回の判決がストップにつながればいいと思います」と話した。【石戸諭、椋田佳代】

(出所:毎日新聞 2008年4月18日 地方版)

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自衛隊イラク派遣は憲法違反ー名古屋高裁判決要旨ー

2008-04-19 01:30:44 | 憲法裁判
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 ◆イラク派遣訴訟判決骨子◆

 ・「戦闘地域」に該当するバグダッドへ多国籍軍の兵員を輸送する航空自衛隊の活動は、他国による武力行使と一体化した行動で、イラク特措法、憲法9条に違反する。

 ・原告らが主張する平和的生存権は憲法上の法的権利として認められるべきであり、憲法9条に違反する国の行為により個人の生命、自由が侵害されるような場合などには、裁判所に対して違憲行為の差し止めを請求するなど具体的権利性がある。

 ・イラク派遣が原告の具体的権利としての平和的生存権を侵害したとまでは認められない。

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 ■ことば

 ◇自衛隊イラク派遣

 イラク戦争初期の03年12月から同国の再建支援を目的に自衛隊を派遣している活動の総称。具体的な活動内容はイラク特措法に基づく基本計画で規定。活動の柱は人道復興支援活動と安全確保支援活動で、活動は非戦闘地域に限定されている。陸上自衛隊は06年7月に撤収したが、航空自衛隊は現在も約200人を派遣している。防衛省によると、04年3月3日~今年4月16日の間の輸送は694回、計595・8トン。兵士の輸送人数は公表していない。

(出所:毎日新聞 2008年4月18日 東京朝刊)

自衛隊イラク派遣:空自イラク活動、一部違憲判断(判決要旨)
 
 【自衛隊のイラク派遣の違憲性について】

 現在のイラクにおいては、多国籍軍と、国に準ずる組織と認められる武装勢力との間で、国際的な武力紛争が行われているということができる。特に、首都バグダッドは、アメリカ軍と武装勢力の双方、一般市民に多数の犠牲者を続出させている地域で、まさに国際的な武力紛争の一環として人を殺傷し、または物を破壊する行為が現に行われている地域というべきであって、イラク特措法にいう「戦闘地域」に該当するものと認められる。

 空自は、アメリカからの要請を受け、06年7月ごろ以降、アメリカ軍などとの調整のうえで、バグダッド空港への空輸活動を行い、現在に至るまで、C130H輸送機3機により、週4~5回、定期的にクウェートのアリ・アルサレム空港からバグダッド空港へ武装した多国籍軍の兵員を輸送していることが認められる。このような空自の空輸活動は、主としてイラク特措法上の安全確保支援活動の名目で行われ、それ自体は武力の行使に該当しないものであるとしても、現代戦において輸送などの補給活動もまた戦闘行為の重要な要素であると言えることを考慮すれば、多国籍軍の戦闘行為にとって必要不可欠な軍事上の後方支援を行っているものということができる。従って、このような空輸活動のうち、少なくとも多国籍軍の武装兵員を、戦闘地域であるバグダッドへ空輸するものについては、他国による武力行使と一体化した行動であって、自らも武力の行使を行ったとの評価を受けざるを得ない行動であるということができる。

 よって、現在イラクにおいて行われている空自の空輸活動は、政府と同じ憲法解釈に立ち、イラク特措法を合憲とした場合であっても、武力行使を禁止したイラク特措法2条2項、活動地域を非戦闘地域に限定した同条3項に違反し、かつ、憲法9条1項に違反する活動を含んでいることが認められる。

 【平和的生存権について】

 平和的生存権は、すべての基本的人権の基礎にあってその享有を可能ならしめる基底的権利である。憲法前文が「平和のうちに生存する権利」を明言しているうえに、憲法9条が国の行為の側から客観的制度として戦争放棄や戦力不保持を規定し、さらに、人格権を規定する憲法13条をはじめ、憲法第3章が個別的な基本的人権を規定していることからすれば、平和的生存権は、憲法上の法的な権利として認められるべきである。平和的生存権は、局面に応じて自由権的、社会権的または参政権的な態様をもって表れる複合的な権利ということができ、裁判所に対してその保護・救済を求め、法的強制措置の発動を請求し得る意味における具体的権利性が肯定される場合がある。例えば、憲法9条に違反する国の行為、すなわち戦争の遂行、武力の行使などや、戦争の準備行為などによって、個人の生命、自由が侵害されまたは侵害の危機にさらされ、あるいは、現実的な戦争などによる被害や恐怖にさらされるような場合、また、憲法9条に違反する戦争の遂行などへの加担・協力を強制されるような場合には、裁判所に対し当該違憲行為の差し止め請求や損害賠償請求などの方法により救済を求めることができる場合があると解することができ、その限りでは平和的生存権に具体的権利性がある。

 【控訴人らの請求について】

 (1)違憲確認請求について

 ある事実行為が抽象的に違法であることの確認を求めるものであって、現在の権利または法律関係に関するものということはできないから、確認の利益を欠き、いずれも不適法というべきである。

 (2)差し止め請求について

 自衛隊のイラク派遣は、イラク特措法の規定に基づき防衛大臣に付与された行政上の権限による公権力の行使を本質的内容とするものと解され、行政権の行使に対し、私人が民事上の給付請求権を有すると解することはできないことは確立された判例であるから、本件の差し止め請求にかかる訴えは不適法である。

 本件派遣は控訴人らに直接向けられたものではなく、控訴人らの生命、自由が侵害されまたは侵害の危機にさらされ、あるいは、現実的な戦争などによる被害や恐怖にさらされ、また、憲法9条に違反する戦争の遂行などへの加担・協力を強制されるまでの事態が生じているとは言えず、現時点において、控訴人らの平和的生存権が侵害されたとまでは認められない。従って、控訴人らは、防衛大臣の処分の取り消しを求めるにつき法律上の利益を有するとはいえず、行政事件訴訟(抗告訴訟)における原告適格性が認められない。

 (3)損害賠償請求について

 憲法9条違反を含む本件派遣によって強い精神的苦痛を被ったとして、被控訴人に対し損害賠償請求を提起しているものと認められそこに込められた切実な思いには、平和憲法下の日本国民として共感すべき部分が多く含まれている。しかし、具体的権利としての平和的生存権が侵害されたとまでは認められず、民事訴訟上の損害賠償請求において認められるに足りる程度の被侵害利益が生じているということはできない。

(出所:毎日新聞 2008年4月18日 東京朝刊)

自衛隊イラク派遣:空自の多国籍軍輸送は違憲 「首都は戦闘地域」--名古屋高裁判決

 ◇派遣差し止めは退ける
 イラクへの自衛隊派遣は違憲だとして、市民団体などが国に派遣差し止めなどを求めた訴訟の控訴審判決が17日、名古屋高裁であった。青山邦夫裁判長(高田健一裁判長代読)は原告の請求を退けた1審・名古屋地裁判決を支持し、控訴を棄却したが、「航空自衛隊による多国籍軍の空輸活動は憲法9条に違反している」との判断を示した。

 全国で行われている同種の訴訟で空自の活動の一部を違憲と認定したのは初めて。原告団は「控訴は棄却されたが、違憲の司法判断が示された」として上告しない方針で、勝訴した国は上告できないため判決が確定する。

 青山裁判長は判決で「イラクでは、多国籍軍と国内武装勢力の間で武力紛争が行われ、特に首都バグダッドは多数の犠牲者が出ている地域でイラク復興特別措置法でいう『戦闘地域』に該当する」と認定。多国籍軍の兵士をクウェートからバグダッドへ空輸する空自の活動について「戦闘行為に必要不可欠な後方支援を行っており、他国による武力行使と一体化した行動」と述べ、武力行使を禁止した憲法9条1項とイラク特措法2条2項、活動地域を非戦闘地域に限定した同条3項に違反すると判断した。

 また原告は派遣により平和的生存権が侵害されると訴えていたが、判決は平和的生存権を「憲法上の法的な権利」と認定。「憲法9条に違反する国の行為により個人の生命が侵害されるような場合には、裁判所に違憲行為の差し止めを請求するなどの具体的権利性がある」と判断した。

 そのうえで、今回の原告の請求については「戦争への協力を強制されるまでの事態が生じているとは言えない」などとして控訴を全面的に棄却した。

 同訴訟原告団は04~06年、自衛隊の派遣差し止めと違憲確認、原告1人当たり1万円の損害賠償を求め、7次に分かれて計3268人が集団提訴し、うち1122人が控訴していた。原告団によると、イラク派遣を巡り、全国の11地裁で提訴されているが、判決はいずれも原告側の訴えを退けている。【秋山信一】

 ◇首相「傍論だ」
 福田康夫首相は17日夜、名古屋高裁判決について「傍論だ。わきの論。判決は国が勝った」と述べた。今後の影響については「問題ない。特別どうこうすることはない」と語った。【木下訓明】

(出所:毎日新聞 2008年4月18日 東京朝刊)

自衛隊イラク派遣:輸送違憲 政府「活動に影響ない」 「要件満たす」改めて表明
 
 航空自衛隊のイラク派遣をめぐる17日の名古屋高裁判決は、空自の兵士輸送を「多国籍軍の戦闘行為に必要不可欠な後方支援を行っている」と違憲認定した。「非戦闘地域での支援は武力行使の一体化に当たらない」としてきた政府見解と真っ向から異なり、自衛隊の海外派遣の根拠を否定しかねない判断だ。判決自体は国側の勝訴で、政府は「活動に影響を与えない」(町村信孝官房長官)と静観の構えだが、今後の派遣に与える影響を懸念する声も出ている。【松尾良】

 イラク復興特別措置法は戦闘行為が行われておらず、かつ自衛隊の活動期間を通じて戦闘行為ができないと認められる地域を非戦闘地域と定義している。「非戦闘地域ならば派遣しても自衛隊は武力行使に参加しない」との論理から生み出された概念だった。

 政府は空自が活動するクウェートの空港とバグダッド飛行場、2地点間の空路を非戦闘地域と認定している。判決は昨年6月に久間章生防衛相(当時)が「バグダッド空港の中でもロケット砲が撃たれるということもある」と国会答弁したことなどを引き、バグダッド全体を事実上「戦闘地域」と判断した。

 これに対し、町村氏は17日の記者会見で「非戦闘地域の要件を満たしている」と改めて表明し、防衛省首脳は「戦闘地域とは違うに決まってるだろう」と不快感を示した。

 高裁判断と政府見解の大きな溝は、兵士輸送をめぐる見解にもある。判決は、輸送について(1)多国籍軍と密接に連携(2)戦闘行為が行われている地域と地理的に近い(3)戦闘要員を輸送している--などと指摘。多国籍軍の戦闘行為の重要な要素になっているとして、「武力行使との一体化」と認定した。

 これは、周辺事態法やテロ特措法などで、自衛隊の海外派遣をめぐって政府がこれまで積み上げた「非戦闘地域での後方支援は合憲」との見解を突き崩しかねない。このため、政府内からは「安全保障を分かっていない法律家の見解」との声も上がっている。

 ◇野党「判断当然」
 民主党の菅直人代表代行は、04年に小泉純一郎首相(当時)が「自衛隊が活動している地域は非戦闘地域」と述べたことに触れつつ、「インチキ答弁が裁判所によって否定された。法の趣旨から見て(違憲判断は)当然」と指摘した。

 共産党の穀田恵二国対委員長は「『人道的支援』ではなく、イラク占領の実質的支援だったと明らかになった」と評価。社民党の福島瑞穂党首も「国民の思いを裁判所が言ってくれた」と語った。

(出所:毎日新聞 2008年4月18日 東京朝刊)


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