uparupapapa 日記

今の日本の政治が嫌いです。
だからblogで訴えます。


こりゃ!退助!!~自由死すとも退助死せず~(32)

2021-03-02 02:57:35 | 日記
 

    








このイラストは私のblogの読者様であり、
イラストレーターでもあられる
snowdrop様に描いていただいた作品です。


#13イラストのリクエスト〜『板垣退助』 - snow drop~ 喜怒哀楽 そこから見えてくるもの…
 (snowdrop様のblogリンク先)

Snowdrop様
素晴らしいイラストをありがとうございました。
心から感謝いたします。









    (第32話)失業者たち


* 今日登場する面々は、皆政府高官だったので
 直ちに生活苦に陥るような人たちではありません。
ハッキリ言ってお金持ちです。
女将のお菊を含め、全員承知の上での会話である事
 を踏まえてお読みください。


 


 征韓論に敗れ下野した退助と象二郎。
失業者同士、傷を舐めあう残念会を
日本橋のお菊の料亭『むろと』で開いた。

 そこには呼んでもいないのに
江藤新平と元外務卿 副島種臣もついてきた。

 実は大久保の狙いは
西郷や板垣の追放ではなく、
江藤や反長州閥の追い落としにあった。

 目ざわりだったのは
いつも反発ばかりの江藤一派だったのだ。

 大久保にとって西郷、板垣は
新政府にとってなくてはならない存在。
 本気で追い出す気はなかった。

 とはいえ、結果は
その後の政局に大きな影響を及ぼす
明治六年の政変に発展してしまった。

 残留政府高官組は狼狽し、
その後の処理には大変苦労する羽目となる。
『後悔先に立たず』
臍を噛む思いで
その後の政治の切り盛りをせざるを得なかった。




 さて、退助の残念会は
およそ残念会とは思えぬ盛況であり、
笑いの絶えぬ宴席となった。

 出迎えた女将の菊に
「今宵は哀れな失業者の集まりである。
酒と象二郎のために黒烏龍茶をジャンジャン頼む。」

 退助の失脚を幾度も見てきたお菊は
少しも慌てず、
「あら、また失業されましたか?
懲りないお方。
 集まりと云う事は、
皆さま全員失業されたのですか?
それは豪気でいらっしやいます事。
おや、まぁ、象二郎様まで。
 退助坊ちゃまとはいつも一緒や、
とおっしゃっていましたが、
本当にお好きなのですね。」
「こりゃ!この象二郎様をからかうでない。
おまんがからかう相手は、
退ちゃんであろう?
天下の板垣退助の
隠れ専属辛口秘書であると
調べはついておるぞ。」
「こりゃ!象二郎!
おまんこそ、なんちゅう問題発言を吐いておるんじゃ!
新平も種臣どんも、誤解するじゃないか!」
 新平が口を挟む。
「そなたがあの悪名高い女将のお菊殿か?
後藤殿からかねがね噂は聞いております。」
「悪名高い?!象二郎様!
あなたは退助坊ちゃまだけでは飽き足らず、
私の悪口まで広めていらっしゃるのですか?」
「滅相もない!!
お菊殿は退ちゃんには
もったいないベッピンさんだと
申しておるよな!な?な?」
と新平と種臣に同意を求める。
しかしふたりはそっぽを向いて
知らぬふりを決め込む。
「この裏切者!!」
と象二郎が言うと、
退助が
「裏切者はどっちじゃ!
ワシの恥ずかしい話を方々に広めよって!」
「まあ、まあ、退助坊ちゃまも象二郎どんも
今宵は苦い酒でも飲んで、
憂さをはらしましょうぞ。
 女将、ジャンジャン酒を持ってきてくれ!」
と元外務卿として交渉のまとめ役だった
種臣が鉾を治めようとする。

 しかしお菊は
「象二郎様は下戸故、烏龍茶でございますね。
下町のナポレオン三世がたっぷり入った
美味しい烏龍茶をお持ちいたしますので
お待ちください。」
「許してくだされ、弁天様、お代官様、お菊様!」
と哀れな象二郎は手を合わせる。


 その日、たっぷり酒の入った4人は、
今後の明るい将来について語り合った。




 退助は夢を語る。

「この日の本は貧しすぎる。
先の戦で国中を転戦したが、何処に行っても
絵にかいたような貧乏生活ばかり。
 そんな環境だから、列強に舐められるんじゃ。
この国の民は賢い。
なのに、あんな奴らに馬鹿にされて良いものか?
新平どん、答えよ!」

「じゃあ、退助坊ちゃまはどうせよと申すか?」

「ワシを坊ちゃまと呼ぶでない!
この国は、もっともっと変えてゆかねばならぬ。
でも、一番変えなければならぬのは、
制度ではない。
 人の心じゃ。この国の民は皆、
今の貧しい生活を当たり前と思おちょる。
 貧困と不自由を当たり前と思うのは正常か?
ワシらは武士の生まれじゃが、
何故武士が偉いんか?
 武士の中にも愚か者は居る。
貧者の中にも賢い者は居る。

 人には生れながらに
人としての尊厳があって
然るべきと思おちょる。

 人には人間固有の権利があるはずじゃ。
基本的人権じゃ。

 そして基本的人権を形成する
重要な要素は自由と平等じゃ。

 だがワシは何も皆が同じ生活を
目指せと云うておるのではない。

 等しく機会を与えよと申しておる。
富める者が富を得るのは容易じゃが、
貧者でも能力と意欲を持つ者には
チャンスを与えよ!
身分を超えて生きる自由を与えよ!

 民を富ませ、国を富ませるのは
ひとりひとりの民の意識と奮闘努力ぞ。
 そうは思わぬか?」

「よく分からん。
しかし、退助どんの熱意は伝わった。
で、どうすれば良い?」

「ここでワシらがグダを巻いてばかりいても
埒が明かぬ。
結社を造るのじゃ。」
 一同が口をそろえて
「結社?」と聞く。
「おうよ、結社よ!
かつて我が藩には竜馬や慎太郎が掲げた
『陸援隊』や『海援隊』があったじゃろ?
それに倣って、政治結社を造るんじゃ。」

「結社か・・・。」
「結社を造ってどうする?」
「結社を造って、広くこの日の本に
基本的人権と自由と平等の
精神と概念を広めるんじゃ。
 そのためには今の藩閥政治じゃ駄目じゃ。
御誓文でも謳われているように、
『廣く会議を起こし』じゃ。
「そうか、こりゃ壮大な話じゃのぉ。」
「そこでじゃ、
残念じゃが、ここに居る面子じゃ
人として如何なものか疑問が残る故、
まず、準備段階として倶楽部を造る。」

「人として如何なものか?
そりゃ、退助どんの事か?」

「ワシの訳がなかろう!
ここにいるワシ以外じゃ!」
「そうか、退助どん以外か・・・
って、おはんが一番如何なものかと思うぞ!」
「まあ、細かい事は気にするな。
とにかく人材を集めて組織づくりじゃ。」
「資金はどうする?」
「募金と献金じゃ。」

「そうか、募金と献金か・・・。

って同じじゃないのか?

ところで、ここの飲み代はどうする?」

「おはんら!!皆、ここに手持ちの有り金を全部出せ。
そうすりゃ、飲み代くらい捻出できるじゃろ?」
「失業者から金を取るんかい?鬼じゃな!」
「おおよ、鬼じゃ!
ここにきてただ酒飲もうなんざ、
鬼にも劣るぞ!」

「おう、女将!
お愛想じゃ!」


「ところで女将、物は相談じゃが、
哀れな失業者の飲み代を少しは負けてくれんかの?」
「何セコイ事を!
さっきまで天下国家の志を語っていた殿方が、
飲み代を巻けろ~ォ?
びた一文負ける訳にはいきませぬ!
但し、出世払いにはできましょうぞ。
明日から死ぬ気で御働きを!
 それが嫌なら、今ここで全額お支払いいただきます。」

「お菊の鬼!!
うぬら、聞いたか?死ぬ気で働けとよ。
しゃあない、また死ぬ気で働いて出世するとするか。」

 象二郎が言った
「明日から死ぬ気で働くより、
ここは全額払った方が楽ではないか?」

「象二郎の『コロナウイルス』野郎!!」
「そのコロナナンチャラとは何じゃ?」
「未来のばい菌じゃき。」
「????」



 その後の11月
早速、銀座3丁目に一室を借り受け
幸福安全社を創設した。
 
 後の愛国公党を結成する母体である。
 
 退助が推進する民撰議院設立建白書を
提出するための第一歩となった。


   つづく



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7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (snowdrop)
2021-03-02 14:49:12
こんにちは😃

前置きの注釈、ありがとうございます🎵

失業=困窮
そうではない
ということですね😉🌸✨🎵

大久保の狙いが
西郷と板垣を追い出すことでは
なかった。というのが興味深いですね😲


負けて残念会での会話も面白かったです😆🎵🌸⤴️

黒烏龍茶や辛口秘書も、良く😆🎵
いいですね〜

退助が語った夢。
>一番変えなければならぬのは、
制度ではない。
>人の心じゃ。
>ワシらは武士の生まれじゃが、
何故武士が偉いんか?
>武士の中にも愚か者は居る。
>貧者の中にも賢い者は居る。
>人には生れながらに
人としての尊厳があって
然るべきと思おちょる。
>人には人間固有の権利があるはずじゃ。
基本的人権じゃ。
>等しく機会を与えよと申しておる。
>富める者が富を得るのは容易じゃが、
>貧者でも能力と意欲を持つ者には
チャンスを与えよ!
>身分を超えて生きる自由を与えよ!

素晴らしい‼️

結社を作って
そういう世の中を作っていこうとする
姿勢が、また凄いですね‼️

なかなか気持ちは
あっても行動に移すというのが難しいから
退助にとって
志しを共にする仲間が居るのは
心強いですね🎵

大変いい お話🎵



酒代の話も面白い😆⤴️🌸✨🎵

最後コロナウイルス🎵😆

毎回、思うことだけど
さすがです😆🌸✨🎵‼️
文体が上手いので気持ち入りやすく🎵

また次回も楽しみにしております😆🎵🌸✨🌷
返信する
Unknown (uparupapapa)
2021-03-02 15:15:15
@snowdrop snowdrop様
こんにちは😃

私は板垣退助を主人公にしようと決めた時から、
彼が自由民権運動にのめり込んだ姿勢に注目し、
生き生きしていると感じていました。

次回はとうとう退助の演説シーンが登場します。
この物語で一番描きたかった部分です。

今回の象二郎を罵倒する場面も、いつもウンコ野郎じゃ芸がないと思い、
今回からバリエーションを考えようと思いました。
次回以降のシリーズにもご期待ください。
(まだ何も考えていませんが)

次回作の演説の下書きはほぼ出来ていますが、
愉快な仲間たちとの絡みのシーンはこれから考えます。

毎回綱渡りのような状態で作品をUPしていますが、
snowdrop 様の励ましのコメントや
沢山の読者の皆様の『いいね』に力を得て
何とかコンスタントに連載を続けられています。

心から感謝申し上げます。
早速これから次回作の下書き完成に向け、
作業を続けようと思います。

ありがとうございました。
返信する
板垣伯夫妻 (蔵書目録)
2021-03-02 21:29:42
今回コッホ訪日のものを、アップしました。記事中の音楽学校の歓迎会には、記載していませんが、板垣夫妻も出席していたようです。
返信する
Unknown (uparupapapa)
2021-03-03 07:52:26
蔵書目録 様

コメントいただきありがとうございます。
蔵書目録様の blogページに直接何度かお返事のコメントを送らせていただきましたが、
不慣れなため、確認できませんでした。
もし複数同様の文面が送られてしまっていたら、申し訳ございません。
また、届いていないようでしたら、この場で感謝申し上げます。
貴重な情報ありがとうございました。
とても勉強になります。
物語の完結に向けて参考にさせていただきたいと思います。
返信する
Unknown (daisuki17202404)
2021-03-03 15:46:54
はじめましてm(_ _)m
以前より勝手ながらフォローさせて頂いています。みいと申します。
遡って読みたいと思っておりますがなかなか進みません。
待って待って…と気持ちは焦るも時間は限られていて追いつきません。
しかしながら必ず読了したく存じますので、遅ればせながらのリアクションお許しくださいませ。
これからも楽しみにしています。宜しくお願い致します。
返信する
Unknown (uparupapapa)
2021-03-03 16:31:29
@daisuki17202404 daisuki17202404 様

コメントありがとうございます😊
また、フォローしていただき、こちらもありがとうございます😊

『こりゃ!退助!!』は10月頃から連載を始め、もう32話になりました。
更新のペースが少し速すぎると感じていますが、
少しでも早く完結まで進行させたいとの思いもあります。
ただ、仕事の合間の blog upですので、どうしても不定期になってしまいます。
そういう状況ですが、読んでくださる皆様に楽しんでいただけるよう、
一話一話無い知恵を絞り乍ら展開していこうと思います。
daisuki様のように遡って読んでいただける方がいらっしゃるのは、
私にとって最高の喜び。
もちろんお時間に余裕がある時、ゆっくりで結構です。
最後までお付き合い頂けたら幸いです。
返信する
Unknown (kumaneko48b)
2021-05-17 10:12:05
一昨日から順番に読んでます。当時日本のために尽力を尽くした板垣退助初め、多くの偉人たちのみなぎるパワーが伝わってくるような文章に引き込まれるように読んでます。
ブラボー!
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