うな風呂

やる気のない非モテの備忘録

竜とそばかすの姫 感想

2022年08月13日 | 映画感想
細田守監督のアレ。

ぐちというか備忘録なのでネタバレしてるしわかりやすい説明はしません。

リアリティがない。終盤の展開に無理がある。
とかはネットのみんなが言っていると思うのでいいとして。
細田守作品は基本的にリアリティがなくて無理があるのが基本ではある。が、それを押し通す勢いというか、視聴者の期待に応える感じがあれば、そういった粗は意外となんとかなるものだったりする。いわゆる「面白さでごまかす」というやつだ。エンタメはそれでいいと思う。

で、今作がどんな話なのかというと、わからない。
現実世界で冴えない少女がネットでは自分を出せるという話なのか。
母に置いていかれた子供の話なのか。
「田舎の女子高生の私だがVtuberデビューして歌ってみたらあっという間に世界一の歌姫になってしまった件」なのか。
ネットを荒らす謎の怪人との恋愛物語なのか。
ネットで出会った虐待児童を救う話なのか。
なにがしたいのかとっちらかっていて本当にわからない。
ストーリーラインがそれだけぶれぶれな上に、仮想世界「U」がどういうものなのかまったく理解できないので、本当によくわからない。わからないといっても、なんというか、とんでもない物を見せられているわからなさではなく、説明のすごく下手な人の話を真面目に聞いているときの、聞けば聞くほど混乱していく感じに似ている。
やりたいことややりたいシーンはあるのだが、そこのうまいつなぎ方がわからないのだろう。要するにアイデアはあるのに脚本技術がまったく足りないド素人なのだ。

が、まあ、脚本技術の拙さは、実は問題ではないような気はする。いや、問題なんだけど、本質ではない気がする。

なんというか、細田守という人はきっと人生観が特殊というか、あまり一般的な人生を送ってきていない人なのだろう。その経済観念も家族観も人間関係観も、はっきり言って常人の共感を得られるところのものではない。そして困ったことに、当人がそれをまったく自覚していないと見える。
そんな細田守の価値観が、一般的な感性と唯一重なる部分が、恋愛観なのだろう。

この間、『サマーウォーズ』を見直したところ「うわー、本当に強引だなあ、というかOZってどういうサービスなのかマジでまったくわかんねえなあ」と思ったし、その後の細田作品を通して「この人、結局ケモホモショタを描きたいだけだよね?」という印象になってしまっているせいか、昔観たときよりもずいぶんと冷めた目で観てしまった。が、それでも作品としてちゃんと成立しているなあ、とは思った。
それがなにかと言えば、結局のところ、基本のストーリーラインと言うか感情の落とし所が、恋愛ものに収まっていたからだろう。数学だけが取り柄の陰キャがヒロインとくっついて終わるという普通の部分が普通にできていた。(ヒロインよりおっさんの方が数倍魅力的であったりディテールが細かったり、カズマがヒロインの100倍くらいエロかったりするという問題はあったが)
『時をかける少女』もそうで、わかりやすい青春恋愛ものとして描いていたためにストーリーラインがわかりやすくしっかりとしていた。

今作でストーリー的に一番良かったシーンは、学校のマドンナ的な美少女が、主人公の好きな幼なじみに恋している……と思いきや、その友人である頭の悪い体育会系が好きで、駅で期せずして告白する感じになって互いにもじもじする、というシーンだった。定型的で古臭くてストーリー的に寄与するところのない場面だが、このシーンだけは登場人物の感情も、作劇的に視聴者にどういう感情を与えたいのかも、ちゃんと理解できた。

つまり、細田守は恋愛ものしか作れないのに余計なことをやろうとするのが悪い。
社会問題の認識が甘く古く浅いのに余計なことを語ろうとするから意味不明な作品になってしまうんだ。

なので今作の最大の問題点は、「竜」と「そばかすの姫」の恋愛ストーリーにしなかったことだろう。
ネットで出会った暴れものの「竜」。みんなが「竜」を嫌っているけれど、時折見せるさみしげで子供のように純真な目にドキドキしてしまうの……あのひとは一体なにものなの……? というそれだけをやってりゃいいんですよ。
なのになんで現実世界ではちょっといい感じになりつつある幼なじみのイケメンがいて~、みたいな話にするんですか。いらねえよ、その要素。二時間しか尺がねえんだからお前は「竜」にだけドキドキしてりゃいいんだよ。幼なじみのイケメンがいるせいでこの話がなにしたい話なのか終始わかんねえんだよ。シンプルな恋愛ものにしておけば脚本の粗なんてある程度はごまかせるってのに、なにやってんだよ守は。いやちょっとこの作品の粗は多すぎてごまかせないかもしれないけど。

お前は、アレだろ。『バケモノの子』のときも、結局やりたかったのは「熊徹のなか、あったかいナリぃ……」だったのにわけわからん要素たくさん入れたせいで「え、ケモホモエンド?ケモホモエンドってことだよね、これ?え、そういうこと?ちがうの?」と混乱させてたじゃないか。いつになったら学ぶんだよ。お前がショタコンでもケモ専でもなんでもいいけど、そういう乙女チックな恋愛しか書けないんだから、余計なことしようとするんじゃないよ。

というわけでね、守くんは恋愛しか描けないんだから、余計なことをするのはやめるように。
映像とか演出はいいんだから、普通の恋愛ものを作ればみんな満足するんだよ? わかった?
以上。


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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2023-02-27 15:32:13
映画を見ていたとき感じた、もやもやして言葉にならない感想を、的確にズバズバ書かれていて感動。うなずきながら読んでいたら、「熊徹のなか、あったかいナリぃ……」で噴き出してしまった
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