うな風呂

やる気のない非モテの備忘録

ジャイロスコープ  伊坂幸太郎  うな

2015年12月03日 | 読書感想
いろんなところに発表していた短編をまとめて書きおろし一本を加えた短編集


浜田青年ホントスカ
浜田青年は訪れた街で「相談屋」なる人のお手伝いをすることになるが……という話。
面白い。現実にちょっとだけありそうな設定。巧妙な展開。小気味の良い会話劇。初期伊坂の良い部分が素直にでている一作。
この短編集の白眉でこれだけでも読んでおきたい。

ギア
バスみたいなものに乗ってる乗客がスパムメールの会話からセミンゴという怪生物の生態を話すだす。
春樹チルドレンが、おもわせぶりな会話とディティールの細かさはあるけどストーリーはない、という春樹チルドレンらしい作品を書いたという感じ。
セミンゴは好きだけどストーリーはある方がいいです。

二月下旬から三月上旬
あらすじ説明がめんどくさいからパス。
小説新潮とかにも載るようになったのでエンタメじゃなく文学的な方向もがんばってみているよ、という感じ。

if
ある普通のバス通勤の日、バスジャックが起きて……という話。
普通にまあまあよくできた掌編。それ以上でも以下でもない。


一人では無理がある
組織としてサンタクロースをやっている会社の話。
サンタという組織を日本の会社員がまじめにやっている部分のディティールが面白おかしい、女性読者がほっこりしそうな話。

彗星さんたち
新幹線清掃スタッフの日常。
一応、通しての話らしきものもないでもないが、基本的には実在の仕事を取材してそれを紹介している感じの話。
お仕事紹介ものとしてはよくできているが、それ以上でも以下でもない。


後ろの声がうるさい
上記六作に関する小ネタにちりばめたちょっといい話。
短編集のシメとして用意するには悪くない構成だが、あとづけのためそんなにすべてがつながった感じはしない。


短編集としてはあっちこっちから寄せ集めただけあってまとまりが薄い。
その分、伊坂作品のいろんな側面が楽しめるともいえるか。
巻末インタビューで「長編は自分のために、短編は読者に楽しんでもらうために書いている。だから短編のほうが評判がよい」というようなことをいっていて、確かに、と思った。確かにぼくも短編のほうが伊坂は好きですね。多分長編で表現したかったり主張したかったりする伊坂マインドがぼくにはどうでもいいものだからですね。とにかくこの人はテクニックが凄いな、と思ってるだけで、精神性に共感する部分がないからね。

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