日伊相互文化普及協会

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ミラノ 治外法権? 神の家

2007-02-03 15:42:51 | Weblog
ミラノやローマなどの都会には、さまよう人々を庇護する施設があって、そこはカトリックのサン・フランチェスコ派が運営してます。
運営費は国内や世界中の企業や個人からの寄付金だけど、日本の企業や個人からの寄付は今も昔もありません。
小額でかまわないので寄付を募ってくれといわれて、何社かの日本の大企業に口をきいたことがありましたねえ。最初にコンタクトを持った担当者は以後訪ねても、永久に「多忙のため不在」の人となりました。



この施設には、出稼ぎ先を求めて来て見つかる前にお金が底を尽きた人、旅行中にパスポートやお金を盗まれた人、アパートを追い出されて行くあてのない人、仕事を失ってどん底生活にいる人、貧しくて治療を受けられない人、仕事をクビになってお金のない人、働く意欲を無くして社会からリタイアした人、社会復帰のために心の安らぎを求める人、リタイアを何度も繰り返す人など様々。国籍は問わない。もちろん日本人だってOKです。

ここは二週間がワンサイクルの受け入れ期間なので、その間に仕事や寝るところ見つけたり、送金を待ったりします。事情で期間が過ぎたら再申請も可。
ここのコトレッタ・ミラネーゼがあまりにもおいしくて、もうちょっと食べたいなあ、と思ったときも再申請をしてもいい、らしいですが、分かりません。



例えば、ある男がニセのパスポートで入国、就労ビザもなしに土木作業をやっていて首になったとする。祖国へ送金したあとだったので、一文無しになって、アパートも追い出されたりします。ニセのパスポートと就労ビザ無しなので、めったなところに仕事を求めて頼るわけにはいきません。彼はうなだれてここへやってきます。

ここはとても清潔で温まる雰囲気を持っています。ここの人たちは彼の身なりを見て、さぞ下着がボロで汚れているのだろうと、彼に新品の下着を渡します。靴もセーターもコートもくたびれて見る影も無い。「シニョール、今日は遅いので明日の朝にしましょうね、シニョールのサイズは?」と彼は言われて、自分のサイズを告げます。
彼は何日ぶりかのシャワーを浴びて、清潔な寝具でぐっすり眠りにつきます。


*人物撮影厳禁の為、この写真はイメージです

朝起きると、「昨夜のサイズものたち」が彼を待っていました。
彼はゆっくりと典型的なイタリアの朝食を食べます。
彼は「髪、伸びたなあ、くがみらくづめ、苦髪楽爪、」と2階の床屋さんへ。そのあと歯の治療室で、穴のあいた歯に詰め物をしてもらいます。
昼食の時間。彼は「30分間は食べてはいけませんよ」という歯科医の忠告を忘れて豊富なメニューの中から、サフラン入りのリゾットとリングイーネのアラビアータ、鶉のギオッタソース煮、モッツアレッラ・カッロッッア、茹でたブロッコリーとミックス焼き野菜、デザートには人参のチーズケーキとプディーノ、最後にコーヒーをいただきます。いただきながら「やっぱ、赤ワインの方が良かったかなあ」と迷いの眼でつぶやくのです。



食後に彼がゴロンとするとお腹がパンパンに張っていました。不安に思った彼は2階の診療所へ。食べすぎと分かって彼は安心しながら、去年、盲腸の手術をしたここの手術室を思い出して顔をしかめます。

「今日はゆっくりするか」と彼は図書室へ。イタリア語があまり読めない彼は自国語の漫画を見つけました。彼は自国語を読むのもあんまり得意じゃなけど、漫画は好きです。
夕食時、「昼、食い過ぎたからなあ、ちょっとにしとこ」と言いながらピッツァとラザーニャ、鶏のロースト、ポテトのロースト、ティラミスをダブルでチョイス。「ワインは身体にいいもんな」とつぶやいてグイッ。

これらは全部、完璧タダ。寝泊り、飲み食い、散髪や診察、治療、手術もタダ。
衣料品や帽子、靴は新品に近いお古ですが、ボランティア企業から新品をもらえることも多いのです。





ここにはいろんな事情の人が来ます。秘密を持ってる人たち、警官の前で顔を伏せる人たち、絶対に警察署の前を歩かない人・・・。
そんな人たちに配慮して、この施設には一般の市民は入れてもらえません。ここの施設が「見学してほしい」という人は入れてもらえるのですが「見学してほしい人」であったって絶対に、絶対に写真を撮ってはいけないんです。

警察の人は嫌われます。どんなに立派な理由があってもシャットアウト。ここにいるみんなのプライバシーはガッチリ守られていて、質問にもNO。もっともここでは個人のプライバシーに踏み込んでいませんが。

ここは神の家なんだそうですよ。神の家では不法入国者も指名手配者も他の人たちと平等なんですと。
しかし、断っておきますが、ここは警察に追われる人を警察から守るところではないんです。
ここに来る人たちの、心の平和と尊厳を守る「神の家」なんだそうです。

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                                 Emi