星空☆Casting

釣れるものはみんな釣りたい。
夜の海で一人
ひたすら同じ事を繰り返す快感。
さあ、ご一緒に。

FRIENDS part1

2009-03-19 04:18:38 | メバル
「やすや尺メバルトーナメント」が終了し僕のモチベーションは下がり気味だった。

「メバルは6月まで続く、何もトーナメントのために釣りをしていたんじゃない」

コメントにそうは書いてはみたが、やはりあのテンションを続ける事は難しかった。

僕は何も人と競う事が好きなわけではない。釣りはいつやっても、一人でも、楽しいものである。当然。

しかし人には「これだけは負けたくない、これだけは誇れる」というものが何か必ずあって
その分野に関しては人と競い蹴落としてでも一番になりたいのである。
それが行動するモチベーションになり得るのである。

僕にとってのそれはメバル釣りなのだった。

終わって始めて思い知った。こんなに気が抜けるものだとは思わなかった。
その後何度か一人で釣りには出掛けたが、釣れる魚のもつ意味が微妙に変わってしまっていた。

そんなある日。

悪あがき日記のコメントに舌”くんからメバル釣りのお誘いが届く。心が沸き立った。

舌”くんとは「尺メバルトーナメント2008-2009」のチャンプである。「大兄」の名で出ている。
おそらく、ショアからのライト系の釣りに関して、この人より上手い人はそういないと僕は思っている。
その釣りを是が非にも見てみたいとずっと思っていた。

最終的なスコアの差は4匹でわずか2cm。
しかしその2cmはどうしても手の届かない遥かな高みだったのである。

わずか2cmを越える為に払った犠牲。無理。無茶。心も、体も、財布も。
その蓄積のずんっとした重さは、僕をして彼を尊敬させるのに充分なものだったのだ。

その彼からのお誘いである。嬉しくないわけが無い。

ところが今どき携帯を持たない僕には彼と待ち合わせの連絡をとる手段が無い。
コメント欄ではタイムリーに連絡がとれない。彼が釣りに行ける日は日曜だけだという。
それはもうその日、当日だった。

僕は二人の唯一の接点である「やすや」に向かう。
そこから連絡をとって貰おうと思った。そして思惑通りそれに成功する。
彼はその日大阪にいたのであるが夜の待ち合わせには間に合うという。
良かった。繋がった。

3/8/22:00。

僕達は「岩壁の向こう」に立った。

僕には馴染みの場所である。彼もここには良く来るようだ。
この僕が知り尽くした場所で彼はどんな釣りをするんであろう?何を見せてくれるんであろう?

なのであったが…。

その日の状況は激渋で僕がこんなやつ。

15cm程度のを2匹ほど釣ったのみ。

舌”くんはヤリイカの仕掛けなど投入しもう既にその状況にあきらめが入っているようだった。

丸く膨らんだお月様がほぼ天頂にある。夜空は澄み切っている。

だが照明が照らす明るいこの場所では月明かりは良い意味を持たない。
暗い夜にこそ魚は明かりに集まるが
こんなに煌々と月が照らす夜にはこの場所に集結する意味を失わせてしまうのである。

しばらくしてそこを引き上げる。一人の釣りならもっとなにか答えがあるはずとあがいたかもしれない。
しかしこの人が釣れないんである。尊敬するチャンプが。
なら誰も釣れない。簡単にあきらめることができる。


場所を変える。今度は舌”くんのポイントである。
その場所は知っていた。秋の下見の時に日中に入った事がある。

びっしりと小さめのテトラが数百メートルに渡って入り、岸沿いにも関わらず足もとからdeepである。
しかし夜は真っ暗なその馴染みの無い場所に今シーズン僕は入ってみようとは思わなかったのだ。

ここか…。ここであったか…。

だがこの場所も渋い。岩海苔が多く移動もままならない。
やや西に傾いた月明かりがテトラの影を全て失わせていた。「白月」の元に晒されたテトラ。

僕にはあたりすらなく、彼はさすがに24cmを1本あげたようだ。


舌”くん。

ひとつ驚く。

僕はテトラ歩きが得意である。相当速く歩ける。忍者のようだと言う人もいるくらいだ。
だが舌”くんのその超速移動に僕は全く付いて行く事が出来なかった。
音もなく歩道を歩くように移動する。えいっと飛ばない。すっと飛ぶ。道筋を迷わない。止まらない。
飄々と軽々と彼は歩いて行く。はぁはぁとどたどたと僕は後を追う。しんどい。

あっ。歳の差かw

散々投げ倒し、有らん限りのテクを使い、なんとか「いいところ」を見せたかったのだがだめだった。


その場所もあきらめる。車に戻る。

その後どこにいこうかと考えるが今日はもうどこもこんな感じであろう事は明白だった。
彼もそう思っているようだった。

道具を仕舞い、一息つき、僕達は横に並んだお互いの車のハッチバックを開け、座り込み、話をした。

聞きたい事が山ほどあるのだ。
舌”くんは惜しげも無く、やさしく、答えてくれる。にこにこと。目から鱗が落ちる事もあった。為になる。

何より僕の飛ばし浮きスタイルに対する「偏見」を取り払ってくれた。
そのリグを僕はそれまでひたすら敬遠していた。

ルアーとロッドの間に異物が介在することにどうしても馴染めないのである。
近距離の一対一のシンプルな勝負こそがメバル釣りであると考えていた。醍醐味だと。

彼はその使い方を詳細に経験を込めて語ってくれた。聞き入る。

つまり、ひと言で言えば、どうしてもそのリグでしか獲れない魚がいるのだと言うのである。
そして、それが彼が求める魚なのだった。

彼が求める魚。

「僕はね、その魚種の中でとにかく一番大きなやつが釣りたいんですよ。とにかく。ほんと」

当たり前の事ではある。
誰でもそう思う。
だが彼の口から出るとその言葉には異様な迫力があった。
決意と言おうか、宣言と言おうか、退路を断った覚悟と言おうか。
それが彼の生きている意味なのだと素直に僕の耳は聞いた。すぅっと染み込んだ。
その為の武器なのであれば飛ばし浮きは是とするべきものなのだ。偏見が消えた。

(その後、僕はたわいもなくあっさりと楕円形のスーパーボールを買う事となるw。やってみよーっと。)

1時間も話し込んで僕達は別れた。

「このあとどうするの?」僕は聞いた。

「うーん、帰りの海を見ながら考えますよ」舌”くんは笑って答えた。

その笑顔を見た瞬間、彼に漂う一種独特の雰囲気に言葉が見つかった。

なんなのだろうと考えていた。そうだ。これだ。

「自由」

そうなのだ。彼の釣りもそれなのだ。





帰って、寝て、目覚めると、1本の電話が掛かる。能登の江崎さんである。

江崎さんの紹介は以前のブログに書いた。
彼は芸術家である。芸術家の紹介は言葉や顔写真ではなくやはり作品だ。その方が分かる。人となりが。




江崎さんは版画家である。鬼ダルマオコゼとナマズの屏風。




江崎さんは陶芸家でもある。ナマコの掛け花。


こんな感じの人物である。作品のままだ。分かった?


電話の続き。
話していると今夜釣りに行くのだと言う。能登の友人二人も一緒だと。
そのうちの一人とは面識があった。釣りをした事は無いが我が家で一緒に飲んだ事がある。
彼も魅力的な人物だった。

名前を「ハッサク」と言う。

そう。あの「尺八ミノー」の作者。ハッサク工房の「社長」だ。
トーナメント中は封印していた能登の釣りに出掛ける格好の動機がみつかる。

「僕も行きます」

電話を切り、特急で支度を整え、車に乗った。

ぬるりと暖かい無目的の昼下がりに、突如として明確な方向が出来た。

その方向に向かってひた走る。制限速度を大きく越えてw




part2に続かせて下さい。

バーブレスくんのところから来てしまった方々。まだ、もう少し、先なんである。ごめんね。

⇒バーブレスくん。丸投げ禁止w。

TACKLE DATA
ROD/Glamour Rock Fish TR83deep
REEL/EXIST2004
LINE/VARIVAS light game MEBARU PE0,4+6lbフロロ

Moon DATA

コメント (24)
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