星空☆Casting

釣れるものはみんな釣りたい。
夜の海で一人
ひたすら同じ事を繰り返す快感。
さあ、ご一緒に。

幽霊テトラ及び奇跡の海水浴場テトラに8時間立て篭もりっ Part1

2009-01-29 13:56:01 | メバル
2009/1/27。
釣友江崎さんと共に「岩壁の向こうのそのまた向かい側」1stアタックを敢行した。

しかしそこに至るルートが見出せず、無謀な事に側面の岩壁をクライミングし
揚げ句、降りられるであろうと踏んでいた先端部の防波堤にはどうしても降りられず
寒風がひゅ~と吹く中、10m以上の絶壁の上からの釣りを余儀なくされ、そのまた揚げ句に釣果0を食らった。
そこから引き返してみると、実はきちんと整備されたコンクリの道やはしごなどがちゃんとあり
苦もなくそこにたどり着ける事を発見し、ひざかっくんと力が抜けたのであった。

その後岩壁の向こう側に入ったが20cm3本という極貧に打ちのめされ我々はぼろぼろになったのだった。

しかし星空は壮絶なまでに美しかった。
あまりの星の数にオリオン座が紛れ込んで見つけられない程の星空だ。
釣りをする江崎さんを見ているとルアーが沈むのを待つ間じっと星を見上げている。
帰り際、空を指さし
「あのオレンジ色の星をアルデバランというんだよ」
と教えてくれた。

江崎さんとは能登の版画家兼陶芸家である。
数年前より釣りを始め、今では釣りができないと手がふるえ出すほどのジャンキーになっている。
ラインの結び方からキャスティングのいろはまで僕が教えたので
世間的には僕の弟子という事になっているが
その釣果は既に僕など遥かに凌駕し先シーズンは尺メバルだけで10本以上獲っている。
持ち前の集中力と粘りで何がなんでも海から獲物を引きはがして来てしまうのだ。

その釣りを見ていると、いちいちのやる事の意図がはっきりと見て取れる。
上手くて繊細で理論的な釣り師である。
このブログにもちょくちょく登場してくるであろうと思う。覚えておいてね。


そして2009/1/28。

昼過ぎに重い体を引きずって布団から這い出してみると江崎さんは既に能登に帰った後で
テーブルの上の置き手紙には
「今夜はでかいのが釣れそうだな、がんばれ」
などと書かれていた。
「うんそうだね、がんばろう」
からからの心に、少し力が湧いてきた。

18:00。
ポイントに入る。
凪ぎ。無風。
細い細い上弦の月が仰角20度あたりに浮かび沈みかけている。影の部分も丸くはっきりと見える。
その光と影を見ると月は球体である事が実感できる。
大昔の人は、あれをなんだと思ったのだろう。
不可思議な事に、この星の横には、巨大な球体が浮かんでいるんである。あんな近くに。



ここは大きな漁港の外テトラ。
いわゆる「幽霊テトラ」に入りたかったが既にヤリイカ師が入っていた。
そこから100m程横の岩周辺のテトラだ。足場が高く約3m。
3lbのナイロンラインでメバルを始めた頃、この3mでどれだけのデカメバルを落とした事か。

今日は何があってもひたすらテトラに立て篭もる覚悟である。
母や嫁が涙ながらに拡声器で昔話をして説得したとしても決して負けない。
断然立て篭もるんである。
やり抜くんである。

テトラ帯での釣りはラインの消耗が激しい。
渋いとなるとテトラ際を狙わざるを得ないので尚更である。

今日はラインをいつものPE0.4号+6lbフロロからPE0.5号+7lbフロロに上げた。
たった0.1号+1lbのupであるがまるで違う強度となる。
PE0.4号+6lbフロロには純粋にフィネスの香りが漂うが
PE0.5号+7lbフロロは完全なパワーフィネスである。
何が来ても心配なしにゴリ巻きが可能。テトラに潜られて獲れなかったスーパーBIGも何匹か記憶にあるのだ。

この辺りのテトラは「ある条件」が来れば例外なく爆発する。しかし今日はその「ある条件」は来ていない。
先シーズンは知る限り1度も来なかった。
来ないとなれば渋い釣りとなる。今日もそうなる。しょうがない。その中でやるしかない。

ん?ある条件?

ないしょ。


まずは強気にIMAKATSU RIPRIZER 60フローティングを流すが反応はない。

しばらくブルースコードC60をロングクルージングさせ続けるがこれもだめ。

ロスト覚悟でテトラ際をこするようにピンテール6で探るがあたりすらない。

ヤリイカ師の電気浮きを観察するが投下点から全く流れない。潮は止まっている。

「はー」

つらい一日となりそうだ。

だが潮は今から差してくるはず。回遊待ちとなる。
しかしただ漫然と回遊を待ってルアーを投げ続けるのは非常につらい。

こんな時いつも僕はボトムをジグヘッドでひたすらシェイクする。
ボトムに落として根がかりがない事を確認し、そこでそのまま1点シェイクを続けるのである。
釣れてくるのはほぼカサゴであるが1キャストで5~10分を消費でき良い時間潰しとなる。
明確なあたりはほとんど出ず、集中力と反射神経を養う良い練習にもなる。

そして数投ごとに水面を流し回遊の確認をするのだ。

2gのジグヘッドを5mのボトムで1点シェイクし続けるのはなかなか難しい。
張りのあるロッドと無風の条件、それにある工夫が必要である。

ある工夫。簡単である。

ジグヘッドは直結にせずスナップを付けるのだ。
ジグヘッドのアイとスナップの隙間が遊びとなって微細なシェイクなら吸収してくれる。
吸収はするがワームは震える。そしてジグヘッドは位置を変えない。
この震えはかなり広い範囲の魚を寄せる力がある。シェイクし始めて10分たってあたりが出たりする。
あたりは渋い。コンッとくる事はほとんどない。
つんつんつんつんというジグヘッドの感触を感じながらシェイクし続けるとある瞬間そのリズムが乱れる。
それがあたりだ。

ジグヘッドにスナップは何もこの釣りだけに効果をもたらすのではない。
キャスティングとリトリーブの通常の釣りでも卓効を発揮する。
まず食い込みが良い。それにテールを震わせるタイプのワームならジグヘッド全体でアクションしてくれる。
そして何より飛距離が伸びる。
硬いフロロをリーダーにして直結するとアイの部分で角度を変えられないリーダーが空気抵抗となって飛距離が落ちる。
スナップであればワームに沿うかたちでリーダがたたまれ空気抵抗を受け流してくれるのだ。

バスからこの釣りに来た人には抵抗があろうと思う。素人の所業だ。僕もそう思っていた。
しかし今ではジグヘッドにスナップは絶対になっている。まだの方。どうぞお試しを。


何匹かカサゴを釣る。ワームはGULPベビーサーディンだ。
Jの字に体を硬直させてカサゴは無抵抗に上がってくる。
ジグヘッドはバーブレスである。魚体に触れずリリースする。楽しい。

そして。

何投目か。

つんつんつんの感触がなくなりジグヘッドがぬるりと横に動いた。
手首で軽くぴんとあわせた。カサゴのつもりで。

ごんごんごんごん!!

!!!なんだ?でかいっ!

がんっと本あわせを入れる。

ごんごんごんごん!!

何かとんでもなく大きい。シーバスか?いや違う。引きが全く違う。

まさか…メバル…か?

これがメバルであれば大変な事である。尺どころではない。
やってしまったか…。胸がドキドキしてくる。
それほど走らない。しっぽ一振りの移動距離は40cm程。魚体もそれぐらいのはずだ。
メバルの引きとも違う気がする。
それにやはり大き過ぎる。メバルでは…おそらく…無い。

じゃあ何なんだ?思い浮かばない。早く知りたい。
重量をロッドのバットにしっかりと乗せラインを信じてゴリ巻きした。
水面がゴボリと渦を巻いた。
ライトで照らす。

!?。チヌ?。チヌか~。そうであったか~。

水面に横たわった魚体がアルミホイルのようにぎらりと輝いた。

40…5ぐらいあるな。てことは…2kg近いな。3mのテトラ。抜き上げは不可能だ。
相変わらず網は持っていない。僕はまた途方に暮れた。同じ事を何度も繰り返すのが僕だ。

ハンドランディング…。
水面までは無理をすれば降りられそうだ。しかし一旦水際から離れて後ろに回る必要がある。
ラインは確実にテトラにこすられる。しかし仕方ない。それより他に手が無い。
ラインが緩まぬよう気をつけながらテトラを滑り降りた。
降りられるけど、上がれないかも…。
一瞬頭をよぎるがかまわない。何とかなる。
海水が薄く洗うテトラに乗った。間近にチヌが横たわる。ぱんぱんに張りつめた白銀のベリー。美しいな~。
口から出たラインが胸びれに引っ掛かり裏返りかかっている。
そのあたりのリーダーがソフトイカのようにささくれ立っている。まずい。

しかしチヌのハンドランディングってどおやるんだ?
口は小さい。えらはぴったりと閉じている。持つところが無い。

悩みながらリーダーを持ち、考えもなく何となく魚体に触れた。チヌが頭を小さく振った。

ぷつん。

あっ。

ささくれたリーダーが…切れた。毛穴がぞわっと開いた。チヌは体勢を立て直しゆっくりと海中に帰って行った。
僕は、固まったまま、それを眺めていた。なす術無く。
これは…持って帰りたかった…。

やっぱ、網、必要だな。何度も思った事を、また思った。



まだまだ続く。
この日は8時間釣りをしたがここで、まだ、3時間だ。
このあとはそんな大したもの釣れないんだが、ひとつ、また、事件があった。ひっぱるね。w

TACKLE DATA
ROD/Glamour Rock Fish TR83deep
REEL/EXIST2004
LINE/Daiwa Emeraldas SENSOR 0.5号+7lbフロロ

Moon DATA
コメント (8)
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