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Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

昭和61年小正月の“箕作”

2018-06-12 23:06:45 | 民俗学

 

 「フイルムスキャナー」において、30年以上前のブローニー判フイルムのことについて触れた。35mm判でも、試しにスキャニングしてみたいと思っていたものがこの写真である。これもまた、過去の印象深いイメージのひとつだ。当時の子どもたちもすでに40代になっているはず。考えてみれば、この子どもたちと、わたしとはそれほど歳が離れていないということになる。昭和61年1月15日未明、栄村を目指して前日の夜中に家を出る、路程200キロ近い走り。実はこの翌年も同じ箕作に夜中に向かったが、この年は伊那谷から雪が降っていて、車がいないことを良いことに、スピードを上げすぎて箕輪町あたりで“スピン”、車に支障が出て、ゆっくり自宅まで帰った記憶がある。したがって、いまもって昭和61年に箕作を訪れたのが唯一である。

 この箕作のことは昭和61年3月9日に発行した『遙北』第68号へ、「下水内郡栄村箕作の道祖神まつり」と題して報告している。一部引用して箕作の道祖神まつりに触れてみる。

 

 14日午後8時ころ、飯島を出発。箕作に着いたのは15日午前1時ころだった。

 ちょうど子どもたちが宿の家から出てくるところであった。参加するのは15歳以下の男の子で、頭は15歳以下の男の子が担当する。午前零時第1回目、午前1時2回目、午前2時3回目、以上3回、内を「ドウロクジンノ カンジン ヨーイ」と囃して回る。この時はせいぜい10歳から15歳ぐらいまでの子どもが主で、それ以下の者は加わらない。

 所要時間は15から20分ほどで、第3回目に回る時は「ドウロクジンノ カンジン ヨーイ」のあとに「オキロ オキロー」とつけ加える。雪の降りしきるなか、子どもたちの声が闇の中に響き、時には騒々しささえ感じるほど元気である。

 午前4時ころになると、さらに小さい男の子たちが加わり、手に手に「オンベ」を持ち、各戸をまわり始める。やはり「ドウロクジンノ カンジン ヨーイ」を親方の「はじめー」のかけ声で囃し始め、オンベを各戸の庭に打ちつけるので騒々しい。そして「おわり」の掛け声でこの騒ぎもおさまり、次の家へ向かって出て行く。あとから役の者が祝儀、サンゴ(米)、切り餅をもらい次へ回っていく。

 この囃しのとき、初嫁はオンベで背中をつつかれ、婿の場合はつれあいの嫁がつつかれ婿は胴上げされる。また初孫が生まれた家ではマゴバサ(祖母)がオンベで背中をつつかれる。

 オンベはくるみの木にハチンジョの紙をつけたもので頭には墨で顔が描かれ、そり下に「道祖神」「七五三」などの文字が書かれている。

 30軒ほどの家々をまわり、最後に親方の家へ行き終わる。午前6時ころである。

 終了後オンベは14日につくられたドウロクジン(松で作られたやぐら)に持って行き、15日午前中に行われるドウロクジンヤキで焼かれる。箕作では「道祖神」の文字碑があるが、今は雪の下で見ることはできない。呼び方は「ドウロクジン」で、神社境内に祀られている。石碑が雪の下のため雪洞をつくり、そこに男女の木像を祀るが、これをドウロクジンサマと呼び、2体を縄で縛って奉納するという。私は今回15日午前中行われるドウロクジンヤキは拝見せずに帰った。

 1月14日の夜、千曲川の源流、南佐久郡川上村で行われる「オカタブチ」の行事も、初嫁の家へ子どもたちが行き、お祝いをするが、これも昔は御幣で初嫁の尻を叩いたという。嫁祝いの行事は各地で行われるが、箕作の近くでは上越市西横山で15日昼過ぎ、子どもたちが各家をまわり、松や注連縄を集める際に、初嫁初婿の家に嫁祝いといって「祝いましょう 祝いましょう」と唱えてヌルデの木で作った刀で、初嫁初婿を「オトコマケコマケ ダイノオトロ 十三人」と唱える行事があるという。また、長岡市濁沢では、14日夕食後子どもたちが栗の木で作ったホウダシ棒を持って初嫁の家をまわり、座敷にいる嫁の肩をホウダシ棒で叩き、「男もウケコモウケ来年の春 男っ子十三人生み出せ 生み出せ」とはやし、交替で嫁の肩を叩く行事があるという。

 さまざまな行事があるが、道祖神の行事として同様の行事が飯山市小境など、近在にあるという。嫁祝いのみではなく、出産、結婚、新築など祝い事すべての想いが、道祖神の祭りには込められているようだ。

 

 さて、フィルムスキャナーを新調したところだが、思うのは、デジタルより写真に趣があるように思うが、印象だけだろうか。


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