梅原猛氏がこういう。「マスメディアの主流が新聞や雑誌からテレビに変わったこともそのような(日本の民主主義が愚民政治に墜した傾向)風潮に拍車をかけている。テレビの視聴者にとっては、その政治家がいかなる思想をもつかというより、その政治家がいかに格好良く見えるかが問題となる」(信濃毎日新聞9/2朝刊「西の都から」)。考えてみれば、映像のない時代は、耳から、あるいは目(読む)から人々の主張を捉えていた。ところが、映像情報が常に身の回りにあるようになってからは、耳や目(読む)を使うよりも目(映像)によって、その主張をとらえるようになった。立派に見える人間は、人前で堂々とした発言をし、まず目立つことである。そんな流れは、教育の世界でも当たり前になっていないか。なによりも、発言をどうするか、どうイメージアップさせるか。そして、それは社会に入っても同じである。このような流れは、明らかに映像(テレビ)の普及であることはまちがいない。政治家が、あるいは政治家控え組みが、いかにテレビで格好良く見せるかによって、支持は異なってくる。地道な訴えなどどうでもよいのである。長野県の田中知事が、1年後には任期となり、選挙戦がある。来期も出るとは言っていないが、テレビで街頭の人々に質問すると、若い世代ほど、ぜひまたやってほしいという。中には、里帰りしていた人に質問していたら、「よそにいて目立っているからいい」と若い女性が答えていた。情けないとしかいいようがないのはわたしだけだろうか。梅原氏のいうように、とくに若い世代は、格好だけで人を選ぶ傾向がある。しかたのないことだろうが、このごろは、こどものころからいかに主張するかを教えてきた。そんな時代の子どもたちが世に出て、まさしく日本は本質よりも見た目の表層だけにとらわれはじめている。昔の主張と同じことを繰り返しているような政党は消えてしまうだろう。このごろは、テレビばっかり見ている年寄り世代も、若者世代に似た雰囲気がある。梅原氏は、こういう民主主義には独裁者が生まれるという。確かにそんな雰囲気のオピニオンリーダーが増えている。どうなってしまうだろう。
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