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馬見塚蚕玉様の祭り

2023-05-03 23:13:33 | 民俗学

5月3日午前8時半前からおよそ11分の舞

 

 駒ヶ根市にある馬見塚公園は、ため池の周囲が整備されていて旅館もある。現在の知名度は低いが、かつては周辺ではよく知られていた場所。ため池に導水されている水は中田切川の水で、明治5年から7年にかけて開削された中田切井によって導水されている。ため池そのものは元治元年(1864)に築堤されたというから、中田切井開削を目論んでいた中で先行されてため池は完成した。明治16年に辻沢にあった蚕霊大明神を遷し中田切井の関係者が祀ったといわれている社が現在もあり、後の昭和41年に勧請した成田山とともに5月3日は祭日となっている。「蚕玉様の祭り」として近在に知られた祭りで、かつてはかなりの賑わいがあったということは知っていた。その蚕玉様の祭りを訪れてみた。

 近年はコロナ禍のせいで祭りが通常開催されるかどうか、その情報も定かでなく無駄な足を運ぶことも多かったわけであるが、今春の春祭りあたりもまだまだ通常とまではいかない様子がうかがえた。こうした中で最近の祭りの様子をうかがうのに都合が良いのが、議員さんたちのブログである。昨年の祭りについて記載されたものも、県会議員さんのブログから情報を得た。コロナ禍にあって、通常ではなかったものの、神事の前に獅子舞が行われたことが議員さんのブログに記されていた。まったく時間的情報もないなか、とりあえず議員さんの昨年の様子から朝方に実施されるであろう獅子舞を目的に足を運んだ。ちょうど長春寺住職による祈祷が行われていたが、聞くところによると祭事の冒頭に獅子舞を行うというから、もしかしたら祈祷前に獅子舞は行われたのかもしれないが、たまたま今年は獅子舞が祭事のあとになったというので、タイミングよく獅子舞を拝見することができた。

 祈祷が終わると社殿前で祭典委員長の挨拶があり、鏡開きとなった。鏡開きされたお神酒で乾杯がされたあと、獅子舞奉納となった。ここでは「獅子舞」とは言わず、「お神楽」という。中信から北信にかけてこう呼ばれることは多いが、南信で「お神楽」は珍しい。実はここで獅子舞を行う福岡祭保存会のみなさんは、秋の大御食神社の獅子練りにも多くの方が参加される。その際は練り用の獅子頭があるといい、捉え方としては獅子練りは獅子舞であって、この日行われるものは「お神楽」と言う。どちらも大神楽系の獅子舞であることに変わりないが、神前で行われる祓いを意識した奉納舞は「神楽」なのである。いわゆる「悪魔祓い」であり舞は3部構成となっている。最初は幌の中に頭を持つ一人と幌を高だかあげる5人が入りゆっくりとした所作で舞う。次は頭とひょっとこのまさに二人立ちとなり、獅子は鈴を右手、御幣を左手に持ち、後ろにつくひょっとこが幌をぐるぐると巻いて尻尾を首に巻くようにして舞う。ひょっとこは獅子を真似るような所作をしながら獅子と相対するように道化る。最後は「蚤取り」である。頭を自らの身体についた蚤を取るようにカタカタと小刻みに噛むような所作をするもので、最初と同じように幌の中に幌持ち5人が入って幌を高く掲げる。蚤取りの後頭を大きく左右に振って舞納めとなる。

 秋の秋葉神社の祭典では保存会が中心となって祭典が行われ、その際にもお神楽は舞われるようで、ほかに区や公民館分館から要請があって舞うことがあり、年に2回ほどそうした行事に呼ばれて舞うようである。いずれの場合も冒頭にお神楽が舞われるといい、区内の安全を願って舞うという。行事が安全に行えるようにという意図もあるのだろう。一時途絶えてしまったといい、昭和56年に復活した。その際には他の土地の人に教わったというが、教えてもらった地ははっきりしないという。

 現在は馬見塚祭典と呼ばれているこの祭り、「通常開催をやっていいものか」と年明けから疑心暗鬼だったという。それでも準備はしないと間に合わなくなるということで通常開催を念頭に進めてきたよう。4年ぶりと開催という祭りは、3日の1日かけてさまざまな催しが企画されていた。ちなみに馬見塚については馬見塚旅館の「馬見塚公園の歴史と由来」が詳しい。

 

蚕玉様のお札

 


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