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伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

栗林神社獅子舞

2019-10-05 23:10:25 | 民俗学

会所前へのオネリ

 

会所前での獅子舞

 

獅子舞を迎える神社

 

神社に入るお囃子の行列

 

神社階段下での獅子舞

 

神社でのオネリ

 

拝殿前での獅子舞

 

 以前伊那森神社獅子舞について触れた。同社は駒ヶ根市の天竜川左岸にある神社であるが、この地域は昭和の合併で、天竜川左岸にある中沢村と伊那村、そして右岸にあった当時の赤穂町と宮田村と合併して現在の駒ヶ根市になった地域。大きく中沢と東伊那(旧伊那村)に地域は分けられる。中沢では9月の最終土日に秋祭りを行うところが多く、いっぽう東伊那では10月第1土日に秋祭りを行うところがほとんどである。伊那森神社は東伊那ではあるが、唯一9月最終土日に祭りが行われ、あとは今日明日が祭日。ということで東伊那地域に入ると、あちこちの神社に幟旗が立っている姿が見える。

 この地域では獅子舞を昼間に行うところも多いようで、事実、大久保の筥石神社に夕方立ち寄ってみると、今年は神主さんが宵祭りの早い時間に来るということだったので、午前中のうちに獅子舞は奉納してしまったという。午後6時から公民館の舞台で舞うが、余興だというのでお宮を後にした。ということで、あまり期待していなかったのだか、栗林の県道交差点を通ると、獅子舞の練り行列が見えた。その先には栗林神社があることから、これから神社まで練っていくのだろうと思い拝見することに。

 獅子の練りは、集落の南端にある栗林集落センターから始まるという。ここから主要地方道伊那生田飯田線に沿って、北上する。途中県道栗林・宮田停車場線との交差点と、駒ヶ根市東伊那支所の北にある会所前で獅子舞が舞われ、栗林神社に練り込む。冒頭で伊那森神社のことを記したが、実は同社と同じように、ここのお囃子には三味線が加わる。県内でも、三味線がおはやしに加わる例はほとんどなく、とくに獅子舞に三味線の囃子が入る例を他に聞かない。東伊那の獅子舞での特徴的なものと言える。お囃子には三味線4人のほか、ヒラ太鼓、大鼓、小鼓、笛がそれぞれ数人づつ加わる構成。その中に女性が3人ほど加わっていた。三味線をされていた女性に聞くと、父親の勧めで民謡三味線を始めたという。まだ最近のことかと聞くと、20代の時に始められたということで、「お祭りにも出ろ」と言われ、もう20年以上栗林神社の秋祭りで三味線をされていると聞き驚いた。もうベテランである。

 さて、その三味線が加わるのは「オネリ」という囃子で、集落センターを出発する時と、途中の会所前、そして神社に入って階段下で獅子舞を行ったあと、拝殿前までの階段を練り上がる際に囃される。このほか、「アゲハ」「カゾエウタ」「ダルマ」「カッポレ」「カエリバヤシ」「オカザキ」の7種類が奏されるが、他に三味線の本調子の囃子が3曲あるというが、練りでは使われていない。

 集落センターから神社まで、途中囃さない時もあるが、道中のほとんどを囃して進む。笛は大変だということで、間に「カエリバヤシ」(笛が入らない)を入れて笛の人たちは一休みとなる。獅子頭は、今は軽トラックで舞を行うところまで運ばれているという。したがって練りの行列に獅子の姿はなく、「オネリ」の際だけ獅子が加わる。現在頭をできる人は3人、後ろにつく「アトマエ」と言われる役も2人だけという。保存会はなく、獅子と三味線はグループとして祭りを支えていてくれる。太鼓や笛は5日間の練習で秋祭りを支える。「オネリ」では後ろで幌を高く持ち上げる役が2人入り、頭を1人が扱う。そして舞の場では、頭は幌を両手で横に広げ、アトマエが右手にオンベと鈴、左では素手で大きく腕を広げ、相撲の土俵入りのような大きな仕草で舞が始まる。次いで頭がオンベを右手、鈴を左手に持つと、アトマエが幌をぐるぐると捻ってその先を首に巻くと、アトマエは右手に日の丸のついた扇を持ち、やはり左では素手を広げ、大きく見せるように舞う。最後は、オネリのように幌を高く上げる者3人が後ろについて、舞をして終わる。とくにこの獅子舞に呼び名はないという。

 練りの行列は、先頭に子どもたちの引く神輿があり、その後に囃子方の行列が、三味線、笛、ヒラ太鼓、大鼓、小鼓といった具合に列をなして行く。神輿は30年ほど前に付加したものという。しかし、そのおかげで子どもたちが祭りに加わる。よそでは子どもの姿が少なく、神社での獅子舞でも観客がほとんどいないという例も珍しくないが、ここのお祭りは賑わいがある。拝殿前の獅子舞が奉納され、行列に加わった方たちによる参拝が行われ終わるが、その後に神輿に加わった子どもや、その親も一緒になって参拝される。最後まで賑わいのある姿が見られた。


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