Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

道祖神の獅子舞②

2018-03-26 23:27:43 | 民俗学

 道祖神の獅子舞①より

  前回も記した通り、わたしの「道祖神の獅子舞い 其の1 南相木・北相木村を中心とした道祖神の祭り」に呼応するように、平出一治氏は原村菖蒲沢の道祖神祭りの採訪録を報告してくださった。あらためて当時の「遙北通信」(遙北石造文化同好会)を振り返ると、平出氏が毎号のように「昭和の道祖神」を報告してくださり、また、わたしの報告記事に対して同例の事例を報告してくださったりと、平出氏の記事だけ集めても相当数あったことに気がつく。

 

どんど焼道祖神祭りと獅子頭 (『遙北通信』46号 昭和62年10月18日発行) 平出一冶

 昭和58年1月14日に諏訪那原村菖蒲沢のどんど焼を見に行ったとき、石枠の上に獅子頭が置いてあった。どんど焼道祖神祭りと獅子頭の組み合わせについて興味を持ったが、深く考えることもなく帰ってきた。22日に菖蒲沢の知人宅で、その事を聞き野帳に次のように書いてある。

 菖蒲沢 藤原節子さんの話

 昔は1月17日。現在は15日に悪魔払いの意味で、菖蒲沢全戸を獅子舞いをしてまわる(現在は祝儀は区で出している)。タイコとカネを鳴らしてあるく。獅子に悪魔を食べさせたり、追い出したりするため悪い病気にならない。最後は、お鍬め森に祀られている「お犬様」に悪魔を食べさせて終わる。

 昔は青年団。現在は小学校5・6年を中心(獅子頭をかぶる)に小学生全員とPTA役員。昔は女の子は汚れるといって除かれたが、子供が少なくなったこともあり、現在は女の子も一緒に行なっている。

 興味を持ちながら、詳しく謝べることはないままであったが『遥北』第74号の三石稔さんの「道祖神の獅子舞い 其の1 南相木・北相木村を中心とした道祖神の祭り」を読み教えられたことが多かった。佐久と諏訪に似通った習俗が今なお残っていることは、以前は広範囲の地域で行なわれていたのであろう。来年は、菖蒲沢の惑魔払いの調査をしてみたい。

 

 この「どんど焼道祖神祭りと獅子頭」を報告されて1年半、平成元年4月1日に発行した『遙北』76号へあらためて菖蒲沢の獅子舞について報告されている(残念ながら原稿がどこかへいってしまったため、実際の『遙北』76号には写真が掲載されているが、コピー版のためここへ掲載できるようなものではなく、写真が見せられない。)。これらもすでに30年前の報告であり、現状がどういう状況なのかは定かではない。

 

原村菖蒲沢の悪魔払い (『遙北』76号 平成元年4月1日発行) 平出一冶

 諏訪郡原村菖蒲沢で悪魔払いが小正月に行なわれていることを知ったのは『遙北通信』第46号に書いたように昭和58年1月14日のどんど焼きを見学したとき、たまたま石枠の上に獅子頭が置いてあったことにはじまる。どんど焼きと獅子頭の組み合わせに興味を持ったが、調査することがないままであった。

 三石稔さんの「獅子舞い」に関する一連の報告を読み、教えられたことは多く、昭和63年1月14日に菖蒲沢の悪魔払いを飼査した。しかし、仕事の関係でその全てを調査することはできなかった。調査を続けていきたいと考えているので、ここでは中間報告をしておきたい。

 悪魔払いは7時30分に始まったが、10時から終りまでの1時間程を調査しただけである。すでにその時は、三分の二の家を回った後であった。カネとタイコを鳴らしながら歩いていたが、一定のリズムや唄はない。タイコは一輪車に付けられPTAの役員が押していた。

 悪魔払いの獅子は、菖蒲沢区の下から上に(西外れから東はずれ)全戸の悪魔を追い払い、追い上げながらお犬様の所まで行く。小学校の5・6年生が交替で獅子頭をかぶっていたが、男女の区別はみられなかった。悪魔払いの獅子は、玄関から家に上がり、大きな口をばくばくさせながら部屋の悪魔を食べ、追い払い座敷から出てくる。獅子は口をばくばくさせるだけで舞いはなかった。中には玄関から入り玄関から出てくる家もあった。

 最後に、お犬様に悪魔を食べさせると言われているが、それは、獅子頭をかぶった子供たちが交替でお犬様に悪魔を食べさせたが、お犬様に悪魔を食べさせると言うよりも、獅子がお犬様を食べると言った方がよい動作であった。

 獅子とお犬様との関係は、お犬様が狼で、三峯信仰とも無緑とは考えられないし、菖蒲沢の悪魔払いでは獅子舞を見ることはできなかった。しかし、獅子頭がその中心になっていることは、以前は、はやし唄があり、獅子舞が行なわれていたことは容易に考えられることである。今後、聞き取り綱査をする中でその意義を明確にしていきたいと考えている。

 

「道祖神の獅子舞③」

 ※「遙北石造文化同好会」のこと 後編に触れた通り、「平出一治氏のこと」について回想録として掲載している。

  関連記事

 

 


コメント    この記事についてブログを書く
« 道祖神の獅子舞① | トップ | わがままな人たち »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

民俗学」カテゴリの最新記事