夢のもつれ

なんとなく考えたことを生の全般ともつれさせながら、書いていこうと思います。

2/16読売日響定期演奏会:燕雀いずくんぞ

2009-02-18 | music
2/16の読売日響定期演奏会について。
ヴァシリー・シナイスキー指揮で、1曲目がヴァイオリン独奏アナ・チュマチェンコによるハチャトリアンのヴァイオリン協奏曲。出だしからオケに乗ったソロがあるんだけど、ややテクが甘いんじゃないかと思った。音程とかじゃなく、音色やソノリティが揃っていないから。早いパッセージの最後のところがなんだか面倒くさそうで、余裕がないように聞こえてしまう。テンポが落ちるとよく唄うのはおばさんっぽい彼女の風貌から納得wしてしまう。でも、早いのと遅いののコントラストがきっちりしててこそでしょ。作曲家自身が書いたカデンツァはいいんだが、強さが足りない。眠りに誘うようなハチャトリアン独特の節回しがいい感じ。子守歌かな。「ガイーヌ」を思い出す。ハープがさらに誘い、コントラバスに渡す。瞑想の世界に深く沈んでいく。おや、馬が走る?草原を、ああ、丘を越えていくんだ。……情景描写はうまいな。

第2楽章を聴きながら思った。ハチャトリアンはおもしろいところがいろいろあるのに自己抑制している。なぜそんなにあちこちに気を遣うんだ?夜の曲が聞こえる。これもお得意の音楽。ヴェールをまとった女がゆるやかに踊る。ピアノの音を模したハープで終わった。

第3楽章でシナイスキーはやっぱり音が弱いと思った。技巧的な破綻を招かないよう安全運転をしてるみたい。じゃあ、別にこの曲を選ばなくてもいいじゃないか。20世紀のコンチェルトってほどのものでもないし。彼女の気分に感応して拍手をするのも面倒な気がした。

休憩後の2曲目はラフマニノフの交響曲第2番だけど、前から何度も言ってるようにこの作曲家をぼくは全く評価していないし、好きじゃない。だから出だしから「おやおや、ヴァーグナーの真似だと言われないように偽装したヴァーグナー的なフレーズだね」と思った。でも、曲の作りはシューマンっぽい、オケがフルに機能しない感じのもの。オーボエからさざ波のような弦にイントロの受け渡しがあって、おセンチなメロディが出て来るっていうのがいかにもラフマニノフ。工夫の跡が見えすぎるから寒い。はいはい、そこでティンパニが軽く出てくるのね。そういやサックスも入れてあるんだ。盛り上げて抑制気味に大太鼓とシンバル。なんか先が読めてきてイヤになった。チャイコっぽくもなってきた。いや、グラズノフか?なんでもいいけど、「ぼくはシンフォニストじゃないし」って言い訳が多いぞ。

第2楽章は前楽章の続きっぽいなって思った。意外性や飛躍がない。グロッケンシュピールで味付けですか。調味料を入れるのは早いんじゃない?と思ってたら、もう前楽章のメインテーマを木管が奏でる。大太鼓とシンバルを一発。やっぱり。弦によるフーガふうなフレーズ。あくまで「ふう」だから展開もない。この人ってわかりやすい音楽を書くんだけど、何が言いたいのかわかりにくい。学生時代に最初に聴いた時から映画音楽みたいだと思ったけど、それは当たっていたように思う。

第3楽章もいきなり第1楽章で聞こえていたまたかよ的なおセンチ・メロ。もうちょっと紆余曲折やごまかしをしてから出さないとつまらないでしょに。いや、その次のところがテーマを倍速にして裏返したものだってすぐにわかるよ。そんなんで玄人受けしようなんて、しょうがねえな。変奏曲的になった。でも、展開がうまくない。なんて言うか、絵の具を使いすぎている。デッサン力、線の引き方が弱く、自信なさげ。ゲネラル・パウゼで、おやと思ったら例のメロに戻った。コンマスのソロからクラへの受け渡しも安直で、ディズニー・アニメで森の動物たちが唄うような感じ。この楽章だけじゃなく演奏は集中力があってよかった。オケのメンバーにはそれぞれ聞かせどころがあって人気のある曲なのかもしれない。まかないものかよ。

第4楽章はタンホイザーみたいな出だし。次第にリムスキー・コルサコフっぽくなる。「シェヘラザード」聴いてる方がなんぼかいいけど。大太鼓とシンバルで曲調を変える。大阪落語の拍子木みたいだと思った。早く終われと念じてうちにようやく追い込みに入った。やっぱりヴァーグナー+チャイコ的。グロッケンシュピール、大太鼓、シンバルの大盤振る舞い。とほほ。この楽章は第1楽章のテーマはあまりなくて、第3楽章と似た感じだから2+2で作ったのかなと思っているうちに「序曲1812年」みたいに終わった。最後の2小節くらいは苦笑するほかなかった。あれで喜べるのがうらやましいほどだ。

ぼくは口が悪いと自認してるけど、ここまで作曲家のことを悪しざまに書いたことはなかったはずだ。それはラフマニノフがモーツァルトやヴァーグナーに比べると燕や雀のたぐいだからというだけでなく、やっぱり相性がよくないんだろう。ハチャトリアンもどっこいどっこいのレヴェルだけど、言いたいものを意外に持っていてそれは伝わってくる。元々あんまり期待できないプログラムだなと思って、聴覚を鈍らせて、場合によっては寝落ちしてもいいやと思って、チューハイを2杯ひっかけて臨んだが、後者は果たせなかった。眠りはどうも天邪鬼のようだ。


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
燕雀憎けりゃ… (ぽけっと)
2009-02-19 00:18:28
鳴き声まで憎いって感じですが、それ自覚してるならメモまでして悪口書かなくても…そういう性分なんでしょうけど。
返信する
そう言われると (夢のもつれ)
2009-02-23 11:35:45
思ってましたけど、素直に聴いて、マジメに書くとこうなっちゃうんだからしょうがないですよ♪

これがいちばん無理しないやり方みたいですし。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。