夢のもつれ

なんとなく考えたことを生の全般ともつれさせながら、書いていこうと思います。

「飢餓海峡」を見ました

2008-06-13 | art
この映画にはありし日の伴淳三郎や若かりし日の三国連太郎、高倉健が出ていますが、中でも純情一途な娼婦役を演じて映画の中間部分の主役的な左幸子が印象的でした。私の彼女についてのイメージとはかなり違った感じの妖艶な演技もあったりします。ただ大金をくれた男の爪を大事に保管し、取り出していとおしむ場面があるんですが、演技がいいだけに女性のフェティシズムってあるのかなって思いました。

ラストでは三国連太郎演じる被疑者の犬飼太吉が青函連絡船から飛び込み自殺をするんですが、その狙いは10年前の津軽海峡の事故が殺人事件だったのかどうかを謎として残し、彼が大量殺人者なのか、運命に翻弄された犠牲者なのかを観客に考えさせるといったところなんでしょう。でも、その仕掛けはラストにリアリティがなさすぎて空振りだと思います。被疑者に手錠も捕縄もなしにデッキに立たせる警察もないだろうと思いますし、それ以前に自供をうながすためにはるばる舞鶴から連れて行く必然性も感じられないからです。

10年前の事件の真相を明らかにしないと直近の舞鶴の事件(こっちで娼婦と書生を殺していることは観客には明白)について何も供述しないと被疑者が言うのを唯々諾々と受け入れる警察はたとえ戦争直後だろうが、明治時代だろうがありえません。直接に責任のある事件の解決を図ろうと物証や証言が得やすいところから攻め立て、その上で余罪を追及するのが常識でしょう。

別に捜査方法の議論をしているのではなく、ちょっと高倉健らが演じる警官の立場に立って考えればわかることです。私のようにぼんやり見てる人間でも変だなとひっかかるところがあるようでは感情移入を誘うことはできないでしょう。いくら名演技やいいカットがあっても白々しく見えるだけで、「果たして主人公はこの海峡で殺人を犯したのであろうか?」なんて訊かれたとしても「どっちが真相かそっちでは考えてないんでしょ?」としか答えようがありません。絵に描いた餅の中身は粒あんかこしあんかと訊かれても「それって心理テストですか?」と返したくなるような。

やたら長い映画で内容的にもタッチ的にも何本かの映画を繋いだような感じです。それ自体は悪くないんですが、それだけに最後のプロットはしっかりしておいてほしかったですね。


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なんかいろんなものがあるサイトです。


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