夢のもつれ

なんとなく考えたことを生の全般ともつれさせながら、書いていこうと思います。

惑星ソラリスまたは首都高のフーガ

2006-05-17 | art

 仕事の必要上、首都高をよく通るんですが、あの皇居周辺や赤坂辺りのうねうねとカーヴが続き、地下にも潜ったりするところをあまり混んでないときに通るとタルコフスキー監督の「惑星ソラリス」というSF映画を思い出します。

 大阪万博を未来都市として撮ろうと思っていたのが当時のソ連政府のお役所仕事のせいで閉幕してしまっていて、代わりに首都高を撮ったんだそうです。でも、知らないで見るとなかなか印象的で、むずかしそうなSF映画が始まりますよって感じがします。
 例によって、あらすじを安易に貼り付けちゃいます。

 惑星ソラリス、それは宇宙のかなたの謎の星で、生物は存在は確認されないが、理性を持った有機体と推測されるプラズマ状の“海”によって被われていた。世界中の科学者達の注目が集まり、"海"と接触しようとする試みが幾度か繰り返されたが、いずれも失敗に終った。そして、ソラリスの軌道上にある観測ステーションは原因不明の混乱に陥ってしまっていた。
 心理学者クリスが原因究明と打開のために送られることになった。美しい緑に囲まれた我が家を後に宇宙ステーションヘと飛び立つクリス…。
 しかし彼を待っていたのは異常な静寂と恐しい程の荒廃だった。物理学者ギバリャンは謎の自殺を遂げ、残った二人の科学者も何者かに怯えている。そんなある日、突然クリスの前に、すでに10年前に自殺した妻ハリーが現われた。
 彼女はソラリスの"海"が送ってよこした幻だった。"海"は人間の潜在意識を探り出してそれを実体化していたのである。妻の自殺に悔恨の思いを抱いていたクリスは、遂には幻のハリーを愛するようになるが、科学者としての使命感と個人的な良心との相剋に悩まされる……

 この映画は、キューブリックの「2001年宇宙の旅」と並ぶSF映画の名作ってことになっていますが、原作のスタニスラフ・レムの「ソラリスの陽のもとに」を先に読んで感動していただけに映画はあんまりおもしろくなくて、正直退屈でした。「2001年宇宙の旅」はCG全盛の今見ても(実際に数年前にDVDで見ましたが)その特撮技術の見事さ、作り込みの丁寧さには感心しますし、リヒャルト&ヨハン・シュトラウスの音楽の使い方とか、宇宙船の内部の無重力の見せ方とか娯楽的要素があって楽しめますが、こちらの方はセットがベニヤ板でできてるのかなって感じがしてシラけちゃいましたから。……ソダーバーグがリメイクしたのもわかんないではないです。そっちは見てないんで何にも言えませんが、タルコフスキーって信者が多いらしくて散々な評価みたいでした。

 いちばん気に入らなかったのはラストが原作と違うことで、あれれって思っていたら、よりにもよってバッハのオルゲル・ビュッヒライン(オルガン小曲集)の中のBWV639「Ich ruf' zu dir, Herr Jesu Christ わたしはあなたに呼びかけます、主イエス・キリストよ」が鳴るんですね。「ハンニバル」もそうだったんですが、私はバッハが好きなだけに映画であんまり使ってほしくないんです。それは神聖なバッハ様を汚すとかそういうことじゃなくて、彼の曲を聴くと意識が映画から音楽の方に行っちゃって、落ち着かないんですよ。だいいち原作では「愛する人間を亡くす」という個人に属する問題と記憶という一般的な問題を極めて緊密に結びつけた結末だったのが、映画では意表は突いているかもしれないけれど、肩透かしのようなラストになってて、「あとはバッハ先生よろしくね」なんて感じがして不愉快でした。……私に言わせればバッハが徹頭徹尾音楽でものを考えているのに対して、タルコフスキーは映像でものを考えてないってことになりますね。



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2 コメント

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不思議映画 (いちご)
2006-05-19 04:11:39
ラストが違うと焦りますよね。

でも、なんだか興味がむくっとわいたあらすじでしたの。

自分の使命と自分の気持ち

どちらを選ぶでしょう私ならば。



お話は変わりますが

ゾンビ映画で「サンゲリア」というのがありまして、

まさにゾンビの王道といっても過言ではないぐらいシンプルなのですが、音楽がとても頭に残ります。

怖くないので是非一度どうぞ。。。。

(見ないでしょうねw)
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むくっとですかw (夢のもつれ)
2006-05-19 08:45:46
原作の小説はホントおもしろいとおもいますよ。テーマが私好みなんでしょうけど。

使命よりは気持ちでしょう。やっぱしw。



サンゲリアって。。関西のサングリアっていうマイナーな飲料メーカーの話。。

ではないですね。やっぱしww。

TSUTAYAでふと見かけるとレンタルしちゃいそうで、怖いですw。
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