出逢い

知らなかった存在を、
知るようになる。

その不思議に、今もなお、感動してしまう。

一ヶ月前までは、全く知る由もなかったのに。
偶然に、同じ頃合に、同じ場所に生きて、
それだけで、知り合う人たちがいる。

客室課で研修を初めて、
まだ十日ばかりしか経っていないのに。
それでも、今日、僕は客室課を卒業した。
夜10時に、仕事を終え、荷物を片付け、
簡単なお礼と挨拶を伝え、事務所を後にした。

僕が社会人になる前から、ずっと、
この事務所では、同じような毎日が繰り返されていたのだろう。
その中で、少しづつ微妙に、毎日に変化があり、
そこで働く人たちは、毎日を築き上げてきたのだ。
そして、四月に、新入社員の僕が事務所でお世話になることになり、
僕は彼らの存在を知り、彼らは僕の存在を知った。

うまく言葉にできないが、
たった十日ばかりの日々の前と後で、
大きな差異があるとしたら、
知らなかった存在を、
知るようになったことだろう。

それは、あまりに些細で、あまりに大きい。

出逢いに感謝する。
そこから全てが新しく始まる。