real me inside

結局、仮面を外せずにいたのは、
自分の手が意思を伝えずにいたから。
厭だ厭だ、と叫びながら、
心の指はあくまでも冷静にシナリオをそっと辿った。

真実の姿なんて、もったいぶったところで、
本当は僕のどこにも存在などしなくて、
ただただ、全てを見透かされることに、怯えていただけ。

自分が誰よりも優れていたかったり、
自分が誰よりも深くいたかったり、
自分が誰よりも愛されていたかったり、
人間の欲望は行く先を知らない。

人が哀れで悲しい、その訳は、
自分で拡げる、その無限の闇に、
いつしか自分も呑まれてしまう――
そのことに薄薄気付いているから。

結局、仮面を外せずにいたのは、
自分の手が意思を伝えずにいたから。
本当の素顔を見せたい、と叫びながら、
最後まで仮面で隠し続けたのは、
自分を甘やかした微量の麻薬のせいだろう。

痛みなど幻想に過ぎない、と、
仮面が感覚を鈍らせる。

真実の姿なんて、本当はどこにも存在などしなくて、
ただただ隠した振りをして、
精一杯に自分を守っていただけ。