Landscape diary ランスケ・ ダイアリー

ランドスケープ ・ダイアリー。
山の風景、野の風景、街の風景そして心象風景…
視線の先にあるの風景の記憶を綴ります。

夏至、長い一日の終わりに

2020-06-27 | 風景

 

今年の夏至は日曜日だった。

一年で一番昼の時間の長い一日。

そして、この日、太陽が一番北に傾く。

それは霊峰石鎚では、主峰(御神体)天狗岳の真横に阿弥陀如来の御来迎(ブロッケン現象)が顕現するということ。

山岳信仰における宗教体験の聖なる日なのだ。

冬至は天狗岳の真横から太陽が昇り、気象条件が重なれば太陽を縁取る大きな虹の光輪が出現(光環現象)。

夏至と冬至は、気象条件が重なれば、霊峰石鎚の神話的風景と出会えるチャンス。

 

 

6月上旬からPCが故障して修理に出した。

3週間後、やっと手元に戻ってきた。

コロナ禍同様、私も長い自粛期間を過ごし、インターネット環境が復活。

復活第一弾は、半年ぶりの石鎚一泊山行へmasaさんと。

もちろん夏至のブロッケンが目的。

そして、この日は新月なので夏の天の川も期待できそう。

自粛解除明けの週末、石鎚方面もたくさんの登山者が訪れていた。

ちょっと驚いたのが、誰もマスクを着用していないということ。

街では解除明けも当たり前のように誰もがマスク着用の習慣を続けている。

新鮮な空気の大自然の中、他者との距離さえ保てば大丈夫という判断だろうか?

私たちもマスクを携帯していたが、同様に着けることはなかった。

登山口の土小屋到着から瀬戸内海方面は一面の雲海に覆われていた。

これはブロッケン出現の可能性大である。

私は二の鎖避難小屋泊、masaさんは三の鎖下でテン泊とした。

長い一日である。

天狗尾根や夏の花々を撮影して時間を過ごした。

ハクサンイチゲの四国固有種であるシコクイチゲも咲き始めていた。

本州の2000m級の高山に咲くミヤマダイコンソウも四国では石鎚だけ。

今日の日没は19:23。

16時過ぎ、南から高い雲が次々押し寄せてきた視界が悪くなってきた。

なんと17時頃にはガスに覆われ真っ白。

時々雲間から太陽が覗くが、360度真っ白の世界。

なんとも間の悪いことである。

石鎚では、よくある気象現象の変化だ。

極寒の真冬なら辛いが、夏の暖かさなら日没まで待っても大丈夫。

岩場に寝転んで時間を過ごした。

masaさんは体調を崩したようで17時過ぎにはテン場に戻った。

弥山の岩場に私と広島から来た人の二人だけ。

18時過ぎ、劇的に世界は急変した。

空がすき始め、みるみる青空が広がる。

雲が湧きあがり天狗岳を呑み込む。

太陽が輝き大きなブロッケンが天狗岳の真横に出現。

「来た~」快哉を叫ぶ。

ぞくぞくするようなドラマチックな風景の出現である。

これがあるから山岳風景はやめられない(笑)

特に、この西日本最高峰石鎚山は、気象現象の変化が劇的である。

石鎚の山影も天狗岳の真横に長く延びる。

ブロッケンが収まった後も、一面の雲海がピンクに染まり主峰天狗岳は茜色に。

夏至の長い一日を締めくくる心がシンと鎮まるような、穏やかな美しい夕映えの風景だった。

(冒頭の写真が、今回一番の収穫)

夜の星空も薄く雲が覆う空模様だったが、

北壁に立ち上がる蠍座と白鳥座の十字がくっきり夜空に。

現像してみると思いの外、天の川と薄く流れ星が2個が映し出されていた。

やっぱり神の山、石鎚は通い続けた者に特別の風景を垣間見させてくれる。

 


コメント (6)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 蛍の光、夜の川面を舞う | トップ | 梟のいる公園 »

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
素晴らしいです!! (Masa)
2020-06-27 16:48:19
すごいです!!あんな真横まで行くとは しかも白い虹が弧を描くところまでくっきり見えてます!!ほんと逃したものは大きかったです!!多分体調ではなく
薬のんで偏頭痛回避なんてしたため調子悪くなったん
ですね。気をつけますーーーそしてなんとかリベンジ!!ですーーー
返信する
心洗われる風景 (ランスケ)
2020-06-27 17:20:31
天狗岳横のブロッケンは、まだ一カ月くらいチャンスがあります。
私も、急激な天候の変化に落ち着いて対処できずブロッケン写真に関しては失敗です。
特にレンズ交換を頻繁にしたのでミラーに染みが付着したのが残念。
シミ抜き機能のあるPhotoshopを購入しなければ。
梅雨明けの夕暮れは、入道雲も湧き上がるので面白いブロッケンが狙えます。
また挑戦してみましょう。

でも今回一番の収穫は冒頭の夕映えの風景です。
なかなか、こういう穏やかで美しい一面の雲海風景とは出会えません。
不穏なコロナ禍の世界を生きる私たちには、一服の清涼剤、心洗われる風景だと思います。
返信する
まだ鼓動が止まらない (misa)
2020-06-27 19:43:36
久々の息をのむ感動です
この長い自宅療養を神からのチャンスと思い、40年分の軌跡を追うように日記と並行しながらフィルム写真の整理を始めました
写コン時代は特に半端ない量で三日に一度は「やれ写真だ、山だ、PTAだ」と手を抜くことなく複数の仕事をこなし入院も何度か経験
自分でも恐ろしいくらいのパワーでした
日本の四季が少しずつ形を変えていくのも写真から読み取れます

心に響く一枚を今後も期待して
感動をありがとう
返信する
お山からのもらったモチベーション (ランスケ)
2020-06-27 22:29:22
misaさん、やっぱり、この場所は特別な大気の流れが発生する神々の宿る場所なのだと思います。
だからこそ、ここは古来から四国を代表する聖地なのです。
神仏分離以前、山に籠り修行する修験者たちによって、そんな神々しい人智を超えた風景が目撃され、語り継がれて来たのでしょう。
今現在、そんな修行をする修験者もなく、伝説の風景を伝えるのは、我々山岳写真カメラマンの役割です。
年々体力が衰えて思うに任せない身体です。
それでも、偶にこんな風景をお山は垣間見させて私たちを鼓舞します(笑)
またしばらく、お山へ通うモチベーションをお山からもらった気分。
次はささゆり咲く山でしょうか?
返信する
凄い! (鬼城)
2020-06-28 07:23:26
まるで石鎚の神々が乗り移ったような瞬間に出会えましたね。
夏至の頃は登ったことが無いなあ・・・
ランスケさんが今の現代を憂えている後押しをしてくれているんだと思います。
自然は嘘をつかない。
しかし、その場と出会える人は数少ない。
いい山入りとなりましたね。
私にとって今年の夏至21日は特別な日、後期高齢者となりました。
秋には弥山に泊まりご来光を仰ぐつもりです。
やはり、ランスケさんと言えば石鎚ですね。(^_^)
返信する
堂ヶ森山越えへ向けて (ランスケ)
2020-06-28 08:07:21
鬼城さん、、笹蔵の画像、PC故障で間に合わなかったようですね。ごめんなさい。
雨の中、あの原生林の中を歩かれましたか。
この体力を維持されていれば秋の石鎚登山は大丈夫ですよ。
山頂小屋で一泊されると素晴らしい風景が見られます。お楽しみに。
山小屋の営業は7月1日のお山開きから徐々に開始するようです。
特に10月紅葉シーズンの山小屋は人気が高いので早めに予約を入れておいてください。

やっぱり一泊山行をすると、素晴らしい風景と巡り合うチャンスは増えます。
ささゆり咲く堂ヶ森の夏、なんとか自転車山越えの体力を回復しないと。
返信する

コメントを投稿

風景」カテゴリの最新記事