母が二ヵ月ぶりに覚醒した。
否、あのリセットしたような意思的な反応は四ヵ月ぶりかもしれない。
「胃ろう」手術の中止を受けて、退院のためのリハーサル?を
兼ねて病棟を移動した。
長期療養病棟は、本来透析患者が対象らしい。
清潔で広々とした空間の取りかたには安心感を覚える。
しかし母は病棟を移って、また下痢をした。
腸が栄養物を受け付けず、そのまま下してしまう。
肝臓も機能障害を起こしているそうだ。
結果論ではあるが、栄養物を消化できない母の状態では、
いずれにしろ「胃ろう」の手術は不可能だった…
病棟を移り、新しい主治医T 先生は「しばらく絶食して内臓を休めましょう」
と再び入院が長引くことを示唆する。
母は嚥下障害を起こして以来、まともに栄養を体内に取り込めない状態が
ずっと続いている…少し状態が落ち着き、高カロリー栄養に切り替わると
下痢と高熱を発症する…また内蔵を休めるために絶食…
そんなことの繰り返しだ。
こんな状態にいつまで耐えられるのだろう?…母の生命力は…
本気で心配になって来た。
病棟を移ってから毎日病室へ通っている。
昨夜、仕事帰りに病室を訪れると、
母は酸素吸入を受けていた。
「お母さん大丈夫?としあきだよ判るかい?」
と問うと瞼を開けて瞳に意志的な光をうかべ肯く。
一瞬、我が目を疑った。
母が、こんな意志的な反応を示すのは、本当に久しい。
指折り数えると、ほぼ二ヵ月ぶりだ。
久し振りの酸素吸入が脳に酸素を送り、覚醒したのだろうか?
嬉しさの余り目頭が熱くなり、こみ上がる感情を抑えることが出来なかった。
涙と鼻水にまみれ幾度も中断しながら、
私は母に入院から現在に至る長いエピソードを語り続けた。
母の瞳も心なしか紅く潤み、溢れる感情の蠕動(ぜんどう)が伺える。
「母さん、あなたが眠るまで、ずっと側にいるから…安心して」
握った手のひらから、かすかな力が返って来たような気がする。
帰宅してから深夜のコールは、不思議な符牒だった。
母の過去を語る関西弁のテンションの高い声が、奇妙に快かった。
「えつこさんは2歳のころから親元を離れ預けられたんよぉ~」
「あほやねぇ~ハマノは苗字やなくて名前よ。どいはまの。
ぎさく爺ちゃんの妹なんよぉ~」
あぁ~錯綜した歪なピースが次々埋まってゆくような奇妙な幸福感…
母が呼び寄せたような遠い親戚からの深夜の電話には心底驚かされた。
否、あのリセットしたような意思的な反応は四ヵ月ぶりかもしれない。
「胃ろう」手術の中止を受けて、退院のためのリハーサル?を
兼ねて病棟を移動した。
長期療養病棟は、本来透析患者が対象らしい。
清潔で広々とした空間の取りかたには安心感を覚える。
しかし母は病棟を移って、また下痢をした。
腸が栄養物を受け付けず、そのまま下してしまう。
肝臓も機能障害を起こしているそうだ。
結果論ではあるが、栄養物を消化できない母の状態では、
いずれにしろ「胃ろう」の手術は不可能だった…
病棟を移り、新しい主治医T 先生は「しばらく絶食して内臓を休めましょう」
と再び入院が長引くことを示唆する。
母は嚥下障害を起こして以来、まともに栄養を体内に取り込めない状態が
ずっと続いている…少し状態が落ち着き、高カロリー栄養に切り替わると
下痢と高熱を発症する…また内蔵を休めるために絶食…
そんなことの繰り返しだ。
こんな状態にいつまで耐えられるのだろう?…母の生命力は…
本気で心配になって来た。
病棟を移ってから毎日病室へ通っている。
昨夜、仕事帰りに病室を訪れると、
母は酸素吸入を受けていた。
「お母さん大丈夫?としあきだよ判るかい?」
と問うと瞼を開けて瞳に意志的な光をうかべ肯く。
一瞬、我が目を疑った。
母が、こんな意志的な反応を示すのは、本当に久しい。
指折り数えると、ほぼ二ヵ月ぶりだ。
久し振りの酸素吸入が脳に酸素を送り、覚醒したのだろうか?
嬉しさの余り目頭が熱くなり、こみ上がる感情を抑えることが出来なかった。
涙と鼻水にまみれ幾度も中断しながら、
私は母に入院から現在に至る長いエピソードを語り続けた。
母の瞳も心なしか紅く潤み、溢れる感情の蠕動(ぜんどう)が伺える。
「母さん、あなたが眠るまで、ずっと側にいるから…安心して」
握った手のひらから、かすかな力が返って来たような気がする。
帰宅してから深夜のコールは、不思議な符牒だった。
母の過去を語る関西弁のテンションの高い声が、奇妙に快かった。
「えつこさんは2歳のころから親元を離れ預けられたんよぉ~」
「あほやねぇ~ハマノは苗字やなくて名前よ。どいはまの。
ぎさく爺ちゃんの妹なんよぉ~」
あぁ~錯綜した歪なピースが次々埋まってゆくような奇妙な幸福感…
母が呼び寄せたような遠い親戚からの深夜の電話には心底驚かされた。
小生も嬉しいです。
貴兄の喜びが伝わってきます。
この写真に憧れる、小生の心も転送されるようです。
点が線になり
更に広い面になることを切望します。
毎日そして一日でも長く、この感動が繰り返し起こり、続くことを願います。
その瞳に映る光は変わりません。
意志的な強い眼差しの母の美少女写真を
あえて今回の「眠り姫目覚める」に使いました。
そしてkyoichさんと探した母の懐かしい場所。
あの温かいスウィートホームの主である
浜野おばあさんは、実は苗字ではなく名前でした。
土居はまの。
そして、はまのおばあさんは、母を愛してくれた
実家のお祖父さんの妹だったことが判りました。
お祖父さんが幼い母を不憫に思い宇和島の借家の管理を
任せている妹のはまのさんに預けたということです。
それもわずか2歳です。
はまのさんは独身だったといいますから、
我家の仏壇に、その位牌があるのも納得できます。
母の育ての親、土居はまのさん。
大事に供養させてもらいます。
その夜に鳴った大阪の親戚からの電話は、
本当に不思議な符牒に溢れていました(笑)
喋れない母が親戚の伯母さんの口を借りて、
私に知らせているようでした…
ランスケさんもお母さんの繋がりで新しい発見が生まれているようですね。家族の個人の繋がりをすべて把握することはできません。ページを捲るがごとく、探し求めていくのでしょう。これが楽しみでもありますし、悲しみも生まれます。眠り姫も目覚めたようですから、元気を出して行きましょう。
と励まされた人間が宇和島の彼方よりエールを送っています。(笑い)
さて今日の御機嫌は?
う~ん、まだじっと私を見つめてくれます。
大阪の親戚の話やハマノおばあさんの話にも
耳を傾けます。
それではと、ホワイトボードを持ち出し筆談に挑戦。
興味深そうに見ますが、まったく手が動きません(苦笑)
その間にも看護師さんたちが入れ替わり立ち代り、
体温と血圧測定、痰の吸引、じょくそう防止の体位変更…
昼間の母は、ゆっくり安眠とは行きません。
少し疲れたのか、私の相手も次第におざなりに…
私も母の側で静かに読書。
梨木香歩「水辺にて」やっと読了。