Landscape diary ランスケ・ ダイアリー

ランドスケープ ・ダイアリー。
山の風景、野の風景、街の風景そして心象風景…
視線の先にあるの風景の記憶を綴ります。

生命の灯を慈しむ時間

2010-11-21 | 家族

 「胃ろう」(経皮内視鏡的胃ろう造設術 Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)
 頭文字をとってPEGの年間施行数は30万人から40万人くらいだと云われいる。

 手術が簡単であることや、その後の管理がしやすいことから急速に増えている。
 しかし医療者は、そのメリットばかりを強調して、あまりデメリットに触れない。

 さて前回の「胃ろうは本当に必要か?」の続きです。
 機会があって特養(特別養護老人ホーム)に勤務する人の話を聞けた。

 ちょっと生理的に嫌悪感をもよおす部分もあるかもしれません。ご容赦ください。
 まず特養の慢性的な人手不足と夜間勤務は一人で30人くらいを看る実態に驚く。
 それも要介護4から5の重篤な症状の高齢者ばかり。

 そして「胃ろう」患者の実態は、本人の空腹感とはおかまいなく
 与え続けられる栄養剤のためカエルのように膨張した腹部と浮腫んだ皮膚。
 一番たいへんなのは排便。
 ずっと寝たきり状態なので便通が非常に悪い。
 定期的に浣腸を用いての排便の凄惨な有様…
 それは人間の尊厳を奪われた不幸な延命行為であることを強調する。

 確かに、この姿が「胃ろう」患者の全てではないだろう。
 艶やかなピンク色の肌を保ち90歳まで天寿を全うした幸せなご婦人もいるらしい。
 それでも、この話は私の心に深く衝撃を与えた。

 母は晩年、ある事情から心の病を患っていた。
 それは私や父や兄弟が、もっと普通に母を気遣っていれば防げたかもしれないことだ。
 事業に追われる父。
 自分のことばかりで親をかえりみない若く傲慢な私や兄弟。
 そんな時代に母は、誰にも相談できないまま深く心の傷を負うた。
 そして70歳を過ぎた頃から、心の奥深く仕舞われていた傷が表面に現れ、
 母の心を再び苛み始めた。

 私は帰郷してから、そのことを知り母を病院へ通わせた。
 (母は一人で外出できないので、必ず私が付き添った)
 母の逃げ場のない心の病を知れば知るほど、
 なぜあの時代、少しでも母の心を斟酌しなかったかと悔やまれるばかりだ。

 だからこそ、もう母を辛い目に合わせたくない。
 延命行為のために、醜い姿を晒す母を見たくない。
 生命の最後の灯火が消えようとする時ぐらい、
 穏やかなで安らかな時間を過ごさせてあげたいと切実に願う。

 11/14、主治医と面談して正式に「胃ろう」手術を断り、
 その他の選択肢を相談した。

掲載した画像は黄金色の夕映えを映す川面と佇む翡翠(かわせみ)


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3 コメント

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Unknown (鬼城)
2010-11-21 20:03:38
 勇気ある決断だと思います。
ランスケさんが思い、悩んだ過程をたどると
この決断は誰もが納得することだと思います。

 人間ですから後悔することはありますが、
私はお母さんも喜んでくださると思います。

 ランスケさん、自分を責めず、
これから続く介護のため、
体力は蓄えておいてください。
返信する
外は雷雨に。。。 (misa)
2010-11-21 20:43:44
大きな決断を託され心が痛まれましたね
そう遠くでなく私にも起こりうる事
父が退院し二人分の介護をしながらの仕事は以前にも増して大変ですが、
小さくなった二人を見ると
「今しなくていつするの?」と自分に言い聞かせてます

私だったら・・・・
同じ選択をすると思います

返信する
退院後のバックアップ (ランスケ)
2010-11-21 22:59:54
鬼城さん、misaさん、ありがとうございます。

今日は新しいケアマネさんと契約しました。
今までのケアマネさんは大手の介護施設の職員で
どうしても所属する介護施設を優先的に利用します。
父母の介護度の低い時は、それでも良かったのですが、
(横断的に色んなサービスを受けられるメリット)
母の最期を看取るという事態では、とても不安でした。

在宅介護における24時間対応の医師や訪問看護の
きめ細かいバックアップ体制が必要になって来ます。
より専門性の高い知識や経験とネットワークが
母の介護を支えるケアマネさんに求められます。
その経緯についても、後日ブログで報告します。

心情だけでは母を支えられないので、色んな物的支援を準備中。
方向性が決まれば事態は、どんどん流れてゆきますね(笑)
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