懲罰を受けている連宋の元に行こうとしている成玉。
その前に現れた陵魚族の阿郁・・・
阿郁は 成玉が ただの人間でしかないくせに
連宋の妻である事実を知り 強烈に湧き上がる
嫉妬心を抑える事が出来なかった。
ただ純粋に 連宋の元へ向かおうとする成玉。
阿郁に手助けを求めるが 阿郁は見返りに
連宋が成玉に送ったアクセサリーを要求した。
勿論 相手が応じない事は計算済み。
アクセサリーを奪おうと手を出すが 弾き返され
それならば、と 手をかえる。
成玉がよじ登る岩を、積もる雪ごと崩していき
谷に無数の刃を出現させて 成玉をそこへ
落としてゆくのだった。
死にゆく成玉の心に 連宋との一連の思い出が
走馬燈のように展開していく。
平安城の小さな港、 白衣の青年は
玄色の扇を手に 雨に打たれて やって来た。
親友の為に美少年を探す一計を案じ 亭の中
傘を用意してボーっとしていた成玉の前に
立ち止まって、 傘を売って欲しいと言った。
男の子の格好を 一目で見破り 成玉に言う。
「貴方は 女の子です」と。
手芸店で再び会った時 連宋は 成玉の兄になる事
を提案する。成玉が欲しかったからくり人形を
「理由なく人から物を貰えない」と固辞する成玉に
プレゼントする為に。
それから それから・・・
連宋からの告白 。
成玉は人間、しかし 彼は天神。
彼女は最初から二人の間には 越えられない壁が
ある事を知っていた。
連宋は二人の将来が末永くあるよう謀ると言った
が、彼女は信じていなかった。
彼女が求めていたのは この一世だけだったのに
こんなに短く終わるなんて・・・
彼女は 自分を死に至らしめた少女を 天を 運命を
恨んだ。
強烈な恨みが 成玉に 断末魔の悲鳴をあげさせた。
しかし、阿郁が施した静音の術のせいで 八荒の
神獣の耳に届くことはなかった。
しかし その悲鳴に宿る激しい怨念は 天地の霊息を
揺さぶり 快晴の空は掻き曇り狂風が巻き起こった。
厚い雲が空の果てから怒涛のごとく集まり、七つの
峰を覆った。そして 山が崩れるかのごとき雷が
轟きわたった。
「これは・・・」昭儀は天上の異変に驚き 耳を
立てた が、朱とうは表情を暗くしたまま無言だった。