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【七四】音玉じゃくし

 音玉杓子とも書かれる。音が旋律へと移行した拍子に組成される、黒い玉に尻尾のついたシンプルなデザインの言生動物。表皮はぬらぬらとして手づかみできないが、尻尾を硝子化した杓子という捕獲器具なら、音玉の部位のどこにでもぴたりと吸い付く。杓子に刻印された譜面は計測に最適なため、杓子定規としても重宝されている。
 全身をくねらせながら耳の中に押し入る音玉じゃくしは、脳内を巡りに巡ってもう一方の耳から這いだしてくる。それが快感となるか悪寒を伴うかは人それぞれである。喋っているだけでも声が旋律を帯びるとぽろっと現れて耳孔をよぎることがある。両耳を素通りしたあとは空気の波間にかき消えてしまうが、なかには海馬【七三】のあたりに居座ったまま転生を繰り返すもの【八四】もいる。

リンク元【六四】
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